特色

救急外来では、開業医の先生方や患者さんからの「救急で診てほしい」の声に応えられるよう、院内各診療科の協力を得て、内因性・外因性、重症度、救急車の利用か自家用車での来院かなどに関係なく、原則として断らずに受け入れています。

多くのスタッフや高度な医療機器を必要とする重症患者さんにしっかり対応できる設備や体制を提供できるよう、ICUの改装工事を行い、2023(令和5)年4月から「スーパーICU」として運用を開始しています。
患者さん一人あたりのスペースを広げ、最新設備に入れ替え、様々な専門スタッフが治療に関わりやすくすることで、これまで以上に手厚い医療の提供に努めています。

対象疾患

救急外来（ER）

胸痛・腹痛、構語障害や麻痺など内因性疾患、交通事故や労働災害など外因性疾患のみならず、中毒などあらゆる傷病を対象としています。

ICU

重症敗血症、多発外傷、重症急性膵炎、広範囲熱傷、心肺停止蘇生後など

HCU

大手術または高リスクな手術症例、院内発症の重症敗血症や心肺停止蘇生後、急性薬物中毒、薬剤過量服用など

救急科専門研修プログラムの５つの特色

• ・1次から3次までの救急医療と集中治療が研修できる
• ・内科系疾患を中心に重症外傷も研修できる
• ・入院患者さんのマネジメントを研修できる
• ・ドクターカーでの診療を研修できる
• ・研修連携施設の組み合わせにより、内科系・外科系から災害医療を研修できる

高度救命救急センターの概要

断らない救急医療の実践

救急外来はER型救急で、「断らない救急」をモットーに、20,000人/年（うち救急車8,000台/年）の救急患者さんの診療を行っています。
内科的救急疾患、心肺停止蘇生後、脳卒中・重症頭部外傷、多発外傷の超急性期医療を専門スタッフからの指導を受けながら実施しています。
ICUの特色として、semi-closed ICU形式で各科と協力しながら診療を行っています。 救命救急センターに搬送されてくる3次救急患者を対象とした集中治療室(ICU，12床)と、院内手術後・院内急変患者を対象とした高度治療室(HCU，12床)から構成され、内科的救急疾患、心肺停止蘇生後、外傷などさまざまな疾患の集中治療を研修することができます。

充実の教育・指導体制

災害医療・国際救援への取り組み

和歌山県災害拠点病院として、被災時に最善として医療を提供し続けるための設備があり、人員の教育を実施しており、常備救護班、日本DMAT隊員も有しています。入職後、救護班やDMAT隊員資格取得の上で災害医療に従事することも可能です（日赤災害医療コーディネータ、日本DMAT統括DMAT2名在籍）。
国際医療救援も積極的に行っています。日本赤十字社の国際医療救援拠点病院であり、指定の研修を修了して派遣職員に登録されることで、国際医療救援に参加可能です。

災害医療救援センター

救急医としての能力を広げる豊富な専門研修連携施設群

専門研修連携・協力施設で、ER型救急だけでなく、外傷や災害医療を中心とした研修も受けられます。
日本赤十字社和歌山医療センター救急科研修プログラムの専門研修施設群は、和歌山県と京都府、大阪府、兵庫県、東京都、千葉県、沖縄県、鹿児島県にあります。京都大学医学部附属病院のほか、中核市の救急医療(日本赤十字社和歌山医療センター、和歌山県立医科大学附属病院、福井県立病院、大阪赤十字病院)、地方都市の救急医療(東京ベイ・ 浦安市川医療センター、東京都立多摩総合医療センター、国立病院機構南和歌山医療センター、沖縄県立中部病院、和歌山労災病院、公立那賀病院、橋本市民病院、紀南病院、新宮市立医療センター、野崎徳洲会病院)、外傷を中心とした救急医療(兵庫県災害医療センター、りんくう総合医療センター、公立豊岡病院)、離島医療（鹿児島県立大島病院）まで、広範囲にわたる医療を経験できます。

週間スケジュール

①抄読会
初期研修医がスタッフの指導を受けながら、救急集中治療領域の最新文献について、背景となる基礎知識と文献の内容をまとめ、発表を行います。

②ミニレクチャー
スタッフが初期研修医向けに行うレクチャーです。テーマは、一般的な診療知識（抗菌薬の使い方、検査値の読み方等）、救急集中治療領域のジャーナルクラブ、災害医療、公衆衛生等、多岐にわたります。

③ICUリハビリカンファレンス
ICUスタッフ、理学療法士、看護師で回診を行い、ICU入室患者さんのリハビリの方針を決定します。

④救命救急センターカンファレンス
ICU入室患者さんについて、入室後経過を共有し、主科担当医と治療方針の検討を行います。研修医にとっては、受け持ち患者さんの症例プレゼンテーションを行い、上級医からフィードバックを受ける等、教育の場にもなっています。

⑤救急症例検討会
ER患者さんについて、重要症例を中心に振り返りを行います。

⑥救急疾患検討会
初期研修医がスタッフの指導を受けながら、ERにおける重要疾患について、知見をまとめ、発表を行います。

これらの他にも、ERでのシミュレーション研修、関連診療科との合同カンファレンスやICUスタッフが参加するRST・NSTラウンド等が随時行われています。

専攻医の声

大西 勇翔 先生 ［当医療センター救急科プログラム　2022(令和4)年4月～2025(令和7)年3月］

後期研修として「日本赤十字社和歌山医療センターの専攻医プログラム」を3年間終了しました。この病院で研修を志した理由は、ER型救急を学んでみたいという思いからでした。救急外来での1次から3次救急まで幅広く経験し、力をつけることができました。更に、救急外来だけではなくドクターカーのプレホスピタル活動も行っており、様々な救急診療にも携わらせていただきました。
また、救急科として切り離せないのが集中治療ですが、当医療センターでもsemi-closed型の集中治療を行っており、エビデンスに基づいた集中治療を学ぶことができました。上級医とともに初期研修医を交えた勉強会も定期的に開催されており、診療だけではなく座学も充実しています。学会発表や論文作成も、上級医がしっかりとback upしてくれます。
さらに、基幹施設だけではなく、様々な特徴のある病院にも行くことが選択できます。特に、救急診療や集中治療に関しては、地域や病院によって様々であり、色々な病院で研修したいと思っていた自分にとっては非常に有意義でした。
和歌山県には3次救急を担う病院が3つしか存在せず、当医療センターではwalk-inから救急車まで様々な症例を経験することができます。是非、一度当医療センターで救急診療を学びに来てはいかがでしょうか？

藥王 俊成 先生 ［当医療センター小児科プログラム修了後、2025(令和7)年4月から当医療センター救急科プログラム］

私は初期研修から日本赤十字社和歌山医療センターで勤務し、後期研修では小児科を専攻しました。現在は、小児科・NICUと救急・集中治療部を兼務しながら、救急科・集中治療専攻医として診療に携わっています。
初期研修では、重症度・緊急度の高い症例に初期対応から関わる機会に恵まれ、初療や手技などのスキルを早い段階で習得しました。後期研修では、新生児を含む幅広い年齢層の患者を対象に、急性期から長期経過にわたる診療に携わる中で、臨床力の土台を築くことができました。
こうした経験の積み重ねは、現在の診療にも確かに活きています。救急・集中治療領域を中心に、多様な年齢層・疾患の患者に対応する日々の中で、これまでに培った小児・新生児の視点を活かしながら、専門性を深め、視野を広げることができています。
当科には多様なバックグラウンドを持つ医師が在籍しており、日常的に多職種との連携を重視したチーム医療が行われています。異なる分野で培った経験が尊重される環境の中で、小児科出身である私自身も、自らの経験を強みとして発揮できる場面が多くあります。
当医療センターは、高度救命救急センターとして、全例応需の北米型ERを採用しています。1次から3次救急まで幅広く対応しており、ドクターカーによるプレホスピタル診療、ERでの初療、ICUでの全身管理に至るまで、急性期医療の一連の流れを一貫して経験できる点が大きな魅力です。
集中治療部にはEmergency ICUとSurgical/General ICUが併設されており、県内最多のICU病床を有しています。semi-closed型の運営体制のもと、重症病態の診断から治療、全身管理までをチームの中心として担うことで、総合的な集中治療の力を養うことができます。
また、当医療センターでの研修を通じて、救急専門医と集中治療専門医の両方を取得することが可能です。実際に、各領域で得られる症例の多さと学びの深さに、大きな手応えを感じています。
今後は、小児科専門医をはじめ、救急専門医、集中治療専門医、新生児専門医の取得を目指しています。複数領域を横断するダブルボード・トリプルボードの取得を目標に、小児医療を原点としながら、急性期医療を中心に専門性を広げていくことが、私の現在の研修の軸となっています。
当医療センターでは、キャリアビジョンに応じて研修内容を柔軟に設計することが可能です。段階的かつ実践的にスキルを積み上げながら、専門領域を越えて成長したいと考える方にとっては、非常に魅力的な環境だと感じています。
救急、小児、新生児、集中治療——
分野の垣根を越えて診療に携わりたいと考えている方。自らの専門性を活かしながら、さらなる挑戦を目指す方。
和歌山医療センターは、そうした思いに応えてくれる場所です。
ぜひ一緒に働ける日を楽しみにしています。

近藤 麻代 先生 ［兵庫県災害医療センターから、2024(令和6)年4月～2025(令和7)年3月］

救急科専門医の研修プログラムの一環(地域研修、ER研修)で、1年間お世話になりました。当医療センターでは、1次から3次まで幅広い患者を受け入れており、集中治療を要する重症患者さんだけでなく、独歩で来て独歩で帰るような患者さんに対応するなど、自施設とは異なる経験をすることができました。
当医療センターは、症例数が非常に多く、かつ、幅広いため、今後、救急医として必要となる症例を数多く経験することができます。また、ERでは他科との調整や他のスタッフとの連携も非常に重要であり、直接的な診療スキルだけでなく、マネージメント能力も学ぶことができると思います。プレホスピタルやメディカルラリーなどを通して、消防などの院外の方々と接する機会もあり、院内ではできない社会性を培うこともできると思います。和歌山という都市部とは異なる地域性から、今後の医療のあり方を考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。さらに、指導医の先生方は、ER型救急医や外科系救急医など、様々なバックグラウンドをもっており、自身の今後を考える上でも非常に参考になると思います。
当医療センターでの研修は、救急医・医師としてのキャリアを築く上で、非常に有意義な経験になると思います。