「こどもはおとなのミニチュアではない」これは日本小児外科学会が大切にしている文言です。小児外科では、主に中学生以下の手術を必要とするお子さんの治療を担当しています。小児外科で扱う疾患はほとんどが先天性の原因によるものであり、成人外科の延長ではその特殊性ゆえに対応が難しいため、それを専門にする医師が担当すべきだと考えられています。そのため日本小児外科学会では、他科と比較しても厳しい認定制度を設けています。
当科では、日本小児外科学会から認定された専門医が診療を担当しています。また、当科では日常診療でよくみられる鼠径ヘルニア、陰嚢水腫、停留精巣のような病気は日帰り手術を行っております。お子さんが手術によって入院となった際、まだ小さなお子さんの兄弟姉妹がおられますとご家族には多大な負担がかかります。私達はそうした状況を解決すべく外来、病棟、手術室、麻酔科と密に連携し日帰り手術を実現しました。また、当科では和歌山県で唯一の小児泌尿器科認定医がお子さんの泌尿器科診療にあたります。地域中核病院の小児外科(小児泌尿器科)として幅広い病気の診療をいたしますので、気になることがあれば一度ご相談ください。
役職 | 部長(兼) |
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卒業年 | 1993(平成5)年 |
専門分野 | 肝胆膵外科・肝移植 |
資格 | 医学博士 日本外科学会外科専門医・指導医 日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本肝胆膵外科学会評議員 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医 日本肝臓学会肝臓専門医 近畿外科学会評議員 |
関連するページ | 日赤和歌山情報局Hot"Medical Information すこやかな毎日のために” 肝胆膵がんの診断と治療① 肝がん(2022年6月9日公開) 肝胆膵がんの診断と治療② 胆道がん(2022年7月14日公開) 肝胆膵がんの診断と治療③ 膵がん(2022年8月11日公開) |
役職 | 副部長(兼) |
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卒業年 | 2000(平成12)年 |
専門分野 | 小児外科全般、小児肝移植 |
資格 | 日本外科学会外科専門医・指導医 日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医 日本小児外科学会小児外科専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本移植学会移植認定医 日本プライマリケア連合学会専門医・指導医 近畿小児外科学会評議員 ロボット(da Vinci)手術資格 |
役職 | 医長 |
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卒業年 | 2012(平成24)年 |
専門分野 | 小児外科全般 消化器一般外科 呼吸器外科全般 |
資格 | 日本小児外科学会小児外科専門医 日本外科学会外科専門医 日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会呼吸器外科専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 |
場所 |
本館3階 |
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受付時間 |
新患:8時〜15時まで |
区分
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月曜日
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火曜日
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水曜日
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木曜日
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金曜日 |
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AB
CD |
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金井
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横山
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(2023年2月1日~)
※区分
(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。
手術日:月曜日 ・ 金曜日
※赤字の名前は女性医師です。
お子さんが病気になられたとき、ご両親は不安をかかえながら病院や診療所の門をたたかれると思います。その病気が手術を要するものと判明すれば、そこに強い不安やとまどいで心がおれそうになることも少なくないのではないでしょうか。私たち小児外科医はそうしたお子さんとご家族のお気持ちに寄り添いながら、お薬では治せない病気に対して質の高い手術と情熱をもって病気を克服するお手伝いをしています。
幸いにして小児外科診療で対象となる疾患は標準治療が確立されており、ほとんどのお子さんは完全に治ります。また、全身麻酔や鎮痛の技術も進歩しており、手術後の傷の痛みなどはかなり軽減できます。もちろん疾患によっては手術後も何らかの症状が残ったり、定期的に検診を受けなければなりませんが、その時にも私達はずっと見守り続けます。
より安全に、より痛みが少なく、より傷をきれいに、より入院を短く、私達は今度も精一杯精進してまいります。
成書にみられる小児外科疾患といえば、先天性横隔膜ヘルニアや先天性食道閉鎖症、神経芽腫やヒルシュスプルング病、あるいは胆道閉鎖症などでしょうか。これらの疾患は発生頻度が圧倒的に少なく、また、多くが出生直後に発症するため、日常診療で遭遇することは滅多にありません。それは、実は我々小児外科医にとっても同様で、小児外科手術の対象疾患として最も多いのは鼠径ヘルニアであり、急性虫垂炎、腸重積症、臍ヘルニア、停留精巣などが続きます。これらの疾患は最初、腹痛や不機嫌など非特異的な症状を主訴に受診されます。そして初期段階で診断を正確につけることは多くの場合困難です。鼠径ヘルニアでも脱出が明瞭に観察されないことは多々あります。ですので、日常診療の中で、もしかしたら外科疾患かもしれないと疑うような症例に出会ったときには、確信を持てなくても結構ですので、気軽にご相談ください。
また、当科では鼠径ヘルニアや急性虫垂炎、また漏斗胸や重症心身障害児の胃食道逆流症などに対し、より侵襲の少なく、整容性に優れた腹腔鏡、胸腔鏡手術を積極的に取り入れています。その他のやや複雑な手術を要する疾患については、まず安全性を優先した医療を行っています。
小児外科医は小児科医が育てるという言葉があります。向上のための努力を惜しまない所存ですので、先生方からのご連絡をお待ちしています。
鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、腸重積症、急性虫垂炎など
先天性食道閉鎖症、先天性十二指腸閉鎖症、先天性小腸閉鎖症、先天性横隔膜ヘルニア、直腸肛門奇形、腸回転異常症、胎便性腹膜炎、胎便病、低出生体重児の消化管穿孔
正中頚嚢胞、側頚嚢胞、下咽頭梨状窩瘻など
漏斗胸、横隔膜挙上症、先天性嚢胞肺、肺分画症など
胃食道逆流症、肥厚性幽門狭窄症、先天性胆道拡張症、胆道閉鎖症、消化管重複症、メッケル憩室、ヒルシュスプルング病など
停留精巣、膀胱尿管逆流症、先天性水腎症、包茎など
神経芽腫、腎芽腫、肝芽腫、横紋筋肉腫、奇形腫、リンパ管腫、血管腫など
※ 日本小児外科学会のホームページには、小児外科で治療する疾患について、詳細な説明がありますので、興味のある方、悩んでおられる方にはぜひご覧になっていただきたいと思います。
病気そのものについては日本小児外科学会のホームページに詳しく説明されていますので、ここでは少し具体的なお話をしましょう。
脱腸があっても、痛みがなく簡単に戻るのであれば、その時点では無害です。
ヘルニアの出入り口(ヘルニア門)が狭くなって、脱出した臓器(多くは小腸)が戻らず、さらに血流が悪くなってくることを嵌頓(読み:かんとん)と呼びます。これを放置しておくと、腸閉塞や小腸の壊死を引き起こし、場合によっては命の危険があります。また、精巣は虚血に弱いため、嵌頓をすんでのところで戻して小腸の壊死を免れても、同側の精巣がダメージを受けて萎縮してしまうことがあります。
ただし、嵌頓を起こした時には相当な痛みがあるため、物心がつく年齢になれば、はっきり症状を訴えてくれることでしょう。また乳児であっても、とても不機嫌でぐずついているときオムツを開けると、脱腸が固く膨らんでいて触ると嫌がる、といった症状で気がつくことができます。この場合、交通手段がなければ救急車を呼んででも速やかに受診していただく必要があります。熟練した小児外科医の手に掛かれば、ほとんどの場合、還納させることが可能ですが、戻らない場合は緊急手術が必要です。
普段、痛みを訴えることがなくても、鼠径ヘルニアがある限り、いつなんどき嵌頓を引き起こすかわかりません。「手術が嫌でずっと放置していたら、そのうち出なくなった」という方も時にはおられますが、現在では全身麻酔下の手術はかなり安全で合併症も少なくなっているため、嵌頓の危険を抱えながら、手術を忌避して過ごす理由はないと考えます。手術をしてしまえば、その後はずっと安心できるのですから、なるべく早期に手術することをお勧めしています。
小児の外鼠径ヘルニアに対する手術術式の原型は20世紀の初めには確立されており、道具やアプローチの仕方に変化はみられるものの、根本的には100年以上ほとんど変わらず、世界中で行われています。つまり、それだけ安全で成功率が高い手術であると考えられています。腹腔鏡下手術が普及し始めたのは21世紀に入ってからですが、従来法とはアプローチの仕方が違うだけで、手術の内容(ヘルニア嚢の高位結紮)は同じです。ですので、治療成績も同じくらい優れています。そのなかで違う点を挙げてみます。
1)創の大きさと場所が違う
施設によって多少の違いはありますが、従来法では患側の下腹部に1㎝~2㎝程度横に切開します。小児外科ではほとんどの場合、抜糸を必要とせず、傷痕が目立たない真皮縫合を行っています。傷痕が全く見えなくなることはありませんが、通常はあまり気にならない程度(ひっかき傷程度)になります。また、下着で隠れる場所であり、整容性が問題になることはあまりありません。
腹腔鏡下手術では、傷は臍の中と側腹部に作ることが多いです。これ以外に、ヘルニア嚢を縛るための糸を先端に付けた針を下腹部に刺しますが、この針痕は全く分からなくなります。臍の中の傷も治ってしまえばほぼわかりません。側腹部の傷は施設によって違いますが、2㎜~4㎜程度のことが多く、治ってしまえば手術を受けたとはわからない程度になります。側腹部の傷を使わず、臍の傷だけで手術をしている施設もあります。
簡単に言うと、従来法では下着を脱がない限り、腹腔鏡下手術では教えてもらわない限り、手術をしたことは傍目にはわかりません。
2)腹腔鏡下手術では反対側の予防手術ができる
腹腔鏡下手術では臍からカメラをおなかの中に入れ、ヘルニア嚢を内側から観ながら手術を行います。この際、反対側の鼠径部を容易に観察することができます。小児鼠径ヘルニアは腹膜鞘状突起が生まれつき開存していることが原因で起こりますから、もし、その時点で反対側の腹膜鞘状突起が開存していれば、その場で手術を行うことによって、将来のヘルニア発生を予防することができるはずです。
実際に、反対側の予防的手術を行わない従来法の場合、手術後の反対側発生率は5~10%程度ですが、腹腔鏡下手術で予防的手術を行えば、この可能性はほとんど0になります。
3)腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の問題点
いいことばかりのように見える腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術ですが、何か問題はないのでしょうか?
以前におなかの大きな手術を受けたことのある患者さんでは、癒着によって腹腔鏡手術そのものが行えない場合があり、この時は従来法を選択せざるを得ません。
もうひとつ挙げられるのは歴史の浅さがあります。従来法では、手術後成人になってから、男性不妊などの合併症が出てくることが、まれにあることが知られています。腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を受けた子どもたちの中で、成年に達した人はまだ少なく、手術後青年期、老年期にどのような合併症がどのくらい出てくるのかはまだ分かっていません。
また、腹腔鏡を使用するので、腸管の癒着(これは従来法では起こりません)による腸閉塞の危険性がかつて指摘されました。現実にはこれまで腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術後の癒着性腸閉塞の報告はありませんが、あと何十年かすれば、そういう合併症が報告されるようになっているかもしれません。
結論を言えば、どっちでもいいと考えています。どちらの術式でも一般に成績はとても良好で、合併症はほとんどありません。
私たちはどちらの手術もたくさん行ってきましたが、特に腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を実際に行った者の印象として、将来思いもよらない合併症が頻繁に起こるとは思えません。これは腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を実際に行っている小児外科医の共通の認識だと思います。それため、この術式は歴史が浅く長期成績がよく分かっていないにもかかわらず、日本中でどんどん広まっているのだと思います。
前胸部、心臓のある所を中心に内側に凹んでいる胸の形を漏斗胸と言います。頻度は1,000人に1人から数名程度と言われ、凹みの程度も様々です。
見た目による本人の精神面への影響を考えない場合、漏斗胸を放置すると何か問題があるのでしょうか?
程度の強い漏斗胸の場合、心臓や肺を見るからに圧迫しているので、健康に良くないように思えます。そのため、以前から漏斗胸患者の呼吸機能や心機能、手術による影響や手術後の経過について様々な観点で研究が行われてきました。その結果いくつかわかっていることがあります。
1)漏斗胸患者を集めて体力測定すると、その平均値は健常者よりも劣っている。
注意していただきたいのは、あくまで平均値ということです。全員体力が劣っているわけではありません。また劣っているといっても、その程度は健常者の中での個人差の範囲内です。つまり病的とは言えません。陥凹の程度は様々であり、程度の軽い方であれば、当然心肺機能への影響は少ないと思われます。
2)術前と比較すると手術の数年後(プレート抜去後)には、運動負荷時の心機能が向上する。
ナス手術以前の術式(胸骨挙上法)では効果はないといわれていましたが、最近、このように報告され、ナス手術の健康面での有効性を示すとされています。ただし上記①にあるように、手術をしなくても体力が病的に劣っていることはあまりありません。また、違いが出るのは運動負荷時であり、安静時には差がないようです。
実際には、漏斗胸の手術後に体力が増強した、食欲が増した、体重が増えた、と効果を実感される方もおられますが、全員というわけではありません。
3)漏斗胸患者は胸痛や呼吸苦などの症状を訴えることがあり、手術によって高い確率で治癒する。
これは一般によく言われており、現場でも実際に経験します。胸痛の原因はわかっていません。なので、なぜ治るのかもわかりません。手術を行う際には、「効果は無いかもしれません」と、必ず申し添えるのですが、実際にはほとんどの方が改善するようです。「見た目は気にしないが、痛い(苦しい)ので手術してほしい」という患者さんが、実は結構おられます。
4)幼児期に手術をすると、成長期にまた陥凹することがある。
そもそも漏斗胸は成長期に陥凹が進行することが多いということが、以前から分かっていました。ナス手術では、初回手術の2年から3年後にプレートを抜去しますから、初回手術を5歳で行った場合、8歳の時点ではプレートは抜去されていることになります。このあと成長するにしたがって、また陥凹してくる症例が、時々見られるということです。
最近の報告によると、10歳未満でプレート抜去をした患児では、抜去後数年してから漏斗胸が再発する例がしばしばあるようです。①幼児期には手術をしない、②幼児期に手術をした場合は10歳を過ぎるまでプレートを抜去せず置いておく、といった対策が考えられます。
当初の漏斗胸は有害か?という質問に戻りますと、自覚症状がなければ健康には無害とご説明しています。ただし、なぜかわからないのですが、思春期を過ぎるころから自覚症状を訴える患者さんが現れるようです。あるいは本人が外見をとても気にするかもしれません。
漏斗胸治療用の器具が市販されています。相当根気よく続けないといけませんが、外見に関しては一定の効果はあるようです。ただし、ナス手術ほどの挙上効果はありません。また、器具の購入は保険適用ではありません。
漏斗胸は放置していても死に至るものではありませんし、ナス手術は比較的安全に行えるとはいうものの、痛みを伴い、合併症の可能性もゼロではありません。
手術を行うかどうかは、手術によって得られる効果(健康面、心理面双方)と手術のリスクを比較して決定することになります。
漏斗胸に対する手術治療は1940年ころから始まり、最初は変形した肋軟骨を切除し、器具を用いて胸骨を持ち上げるという手法(胸骨挙上法)を用いていました。胸骨と肋軟骨を一緒に取り外して裏返す術式(胸骨翻転法)も考案されましたが、基本的には胸骨挙上法とその変法が多く行われてきました。そして、3~5歳の幼児期に手術を行うのがよいとされていました。この時期であれば肋軟骨の切除が容易で、また就学前に行った方が精神発達の上でもよいと考えられていました。
しかし、この手術は肋軟骨を切除するため、後になって胸郭の成長障害や再陥凹をきたすことがあり、矯正力もあまり優れたものではありませんでした。また、凹んだ前胸部を持ち上げることで心肺機能も改善すると信じられていたのですが、測定の結果、術後はかえって呼吸機能が悪化するということも判明しました。現在でもこの手術を行っている施設はありますが、適応は限定されています。
1998年にアメリカの小児外科医、Donald Nuss博士が、独自に考案した手術を初めて発表しました。この手術は、側胸部から胸腔内に金属製のプレートを挿入して、直に胸骨を持ち上げるという方法で、肋軟骨の切除を必要とせず、なによりも傷跡が目立たず、矯正力が優れている点で注目され、全世界で爆発的に普及しました。日本でもいち早くとりいれられ、漏斗胸の手術としては現在最も主流となっています。
手術のことに限らず、不安なことや疑問に思われることがあれば、お気軽にご相談ください。
なお当医療センターでは、思春期以上の患者さんに対しては、呼吸器外科と共同で治療にあたっています。