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心臓血管外科


特色

当科は、1987(昭和62)年に名誉院長小西により開設され、現在、循環器疾患の外科治療において、和歌山県で中心的役割を担っています。高度救命救急センターとして緊急手術にも対応しています。

チーム医療
循環器内科と密に連携をとりながら、最新のガイドラインに基づいて治療方針を決定し、それぞれの患者さんに最適な治療法を提供するように心がけています。手術後は、看護師・理学療法士・作業療法士などと共に、患者さんの回復に努めています。
インフォームドコンセント
患者さん・ご家族が、病気・手術をしっかりと理解し、納得した治療を受けていただけるように、十分な説明をするように努めています。
高度医療・先進的医療
最新のガイドラインに基づいて治療方針を決定し、先進的な手術も行うように努めています。
緊急手術
当医療センターの高度救命救急センターと連携を取りながら、緊急手術にも対応しています。
リハビリテーション
病気を治すだけでなく、元に生活に戻っていただくことが重要と考えています。心臓の手術を含めて、多くの症例で翌日からリハビリを開始しています。集中治療室では看護師と、一般病棟では理学療法士・作業療法士とともにリハビリを行います。

スタッフ紹介

医師

阪口 仁寿 (さかぐち ひさし)

役職 部長
卒業年 1995(平成7)年
専門分野 成人心臓・血管の外科
資格 日本外科学会外科専門医
心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医・修練指導者
経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)実施医・指導医
その他 医学博士
京都大学医学部臨床教授
臨床研修指導医
関連するページ 日赤和歌山情報局Hot "すこやかな毎日のために"
心臓治療の最前線① 増えている心臓弁膜症(2022年02月10日公開)
心臓治療の最前線② 大動脈弁狭窄症の最新治療(2022年02月24日公開)
心臓治療の最前線③ TAVI治療(2022年3月10日公開)

堀 裕貴 (ほり ゆうき)

役職 副部長
卒業年 2009(平成21)年
専門分野 成人心臓・血管の外科
資格 心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医
日本外科学会外科専門医
日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステントグラフト実施医
浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会浅大腿動脈ステントグラフト実施医
下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
その他  

矢野 啓太 (やの けいた)

 
役職 副部長
卒業年 2011(平成23)年
専門分野  
資格 心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医
日本外科学会外科専門医
日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステントグラフト実施医
下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
その他 医学博士

杉田 洋介 (すぎた ようすけ)

役職 医師
卒業年 2015(平成27)年
専門分野  
資格 下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医

外来担当医表

場所

本館3階(3C)

受付時間

新患:8時〜11時30分
再来:8時〜11時30分

 

区分 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
AB
CD
阪口 - 阪口 - -
CD - - -
矢野 - 矢野 - -

杉田

 - 杉田 - -

(2024年7月1日~)

※区分
(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。

 

外来担当医表(専門外来)

 専門外来 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
下肢静脈瘤外来
(予約制)
- - 交替制
(午後)
- -

(2022年10月1日~)

手術

予定手術は、火曜日・水曜日・木曜日・金曜日に行っています。緊急手術は、休日を含め曜日を問わず行っています。

施設認定

日本心臓血管外科専門医認定機構認定 修練基幹施設


診療実績

2023年手術件数

 心臓・
胸部大動脈手術
冠動脈バイパス術 30件
弁膜症手術 41件
大動脈手術(開胸) 28件
胸部ステントグラフト内挿術 11件
その他心臓手術  2件 
末梢血管手術  腹部大動脈瘤人工血管置換術(開腹) 32件
 腹部ステントグラフト内挿術 22件
末梢動脈手術 42件
下肢静脈瘤手術 11件
合計 219件

患者さんへ

心臓血管外科は、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞、弁膜症など)や、大動脈の病気(大動脈瘤、大動脈解離など)、手足の動脈の病気(閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞など)、静脈の病気(下肢静脈瘤など)を外科的に治療する診療科です。循環器内科と連携をとりながら、薬物治療・カテーテル治療・外科手術の中から、それぞれの患者さんにとって最善の治療法を選択しています。身体への負担ができるだけ少ない治療法、合併症の危険性ができるだけ少ない治療法であるとともに、長期にわたり患者さんに安心してすごしていただける治療法を提供できるように心がけています。

80歳以上の高齢の患者さんも含めて、心臓や大動脈などの手術において、各臓器に障害が起きないように細心の注意を払いながら、安全な手術を心がけています。また、合併症の予防目的、および、元の生活にできるだけ早く戻れるように、早期離床を勧めています。高齢の患者さんも含めて、リハビリを積極的に行っています。


地域の先生方へ

平素より地域医療連携にご協力いただきまして、誠にありがとうございます。循環器疾患で手術が必要と思われる患者さんや、手術の必要性について判断がつきかねる患者さんがいらっしゃいましたら、気軽にご相談ください。当医療センター循環器内科と連携をとりながら、それぞれの患者さんに適した治療法を提供します。
当科では、僧帽弁閉鎖不全症に対して、90%以上の症例で僧帽弁形成術を行い、心機能の改善、長期予後の改善につながるように心がけています。胸部大動脈瘤・腹部大動脈瘤に対して、低侵襲なステントグラフト内挿術と、従来通りの開胸・開腹下での人工血管置換術より、大動脈瘤の部位・形態、全身状態などを踏まえて、より安全でより確実な術式を選択しています。また、冠動脈バイパス術においては、動脈グラフトを多用し、長期に開存するバイパスを心がけています。患者さんの状況に応じて、侵襲を減らすためにオフポンプ冠動脈バイパス術を施行しています。心臓手術、胸部大動脈手術において、80歳以上の患者さんでも合併症を少なくなるよう、できるだけ安全な手術を心がけています。
急を要さない場合、予約センターを通じて、外来日の月曜日、または水曜日にご紹介ください。緊急の治療を要する場合は、当医療センターの高度救命救急センターで対応します。


取り扱い疾患・術式

虚血性心疾患
(狭心症、心筋梗塞)
冠動脈バイパス術、心室中隔穿孔閉鎖術、左室自由壁破裂修復術、左心室瘤切除術
 弁膜症 大動脈弁置換術、僧帽弁形成術、僧帽弁置換術、三尖弁形成術、三尖弁置換術、肺動脈弁置換術
 不整脈 メイズ手術、肺静脈隔離術、左心耳閉鎖術、ペースメーカー植込術・交換術
 心臓腫瘍 心臓腫瘍摘出術
 その他 心臓疾患 心膜切開術、収縮性心膜炎手術、肥大型心筋症手術、肺動脈血栓内膜摘除術 など
 成人先天性心疾患 心房中隔欠損閉鎖術、心室中隔欠損閉鎖術 など
 胸部大動脈瘤、大動脈解離 胸部大動脈人工血管置換術(開胸)、胸部大動脈ステントグラフト内挿術
 腹部大動脈瘤 腹部大動脈人工血管置換術(開腹)、腹部大動脈ステントグラフト内挿術
 閉塞性動脈硬化症 下肢動脈バイパス術、内膜摘除術、血管形成術
 急性動脈閉塞 血栓除去術
 下肢静脈瘤 ストリッピング手術、高位結紮術、静脈瘤摘除術、血管内焼灼術
慢性腎不全 透析用ブラッドアクセス作成術(自家静脈、人工血管)


各疾患や手術の詳細は、
疾患・治療


弁膜症(大動脈弁狭窄症,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症,僧帽弁狭窄症,三尖弁閉鎖不全症など)

心臓には4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があり、それぞれの部屋の出口には弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)がついており、血液が逆流しないように働いています。弁膜症とは、それらの弁が硬くなって十分開かなくなり血液が流れにくくなった病気(狭窄症)や、弁がしっかり閉じないために血液が逆流した病気(閉鎖不全症)のことです。弁膜症が悪化すると、心臓に負担がかかり、心臓の機能が低下していきます。息がしんどくなったり、体がむくんだりするようになります。軽度の弁膜症は薬物治療の対象ですが、高度の弁膜症となると手術が必要となります。手術により、心不全となる危険性をかなり減らすことができ、息切れやむくみが改善し、より良い生活をおくることができます。
手術には、①弁を人工弁に取り替える「弁置換術」と、②弁を修復する「弁形成術」があります。
「大動脈弁狭窄症」・「大動脈弁閉鎖不全症」に対しては、「大動脈弁置換術」を行います。
「僧帽弁閉鎖不全症」に対しては、弁置換術より「僧帽弁形成術」が、手術後の心臓の機能に優れ、感染の危険性が少なく、手術がより安全で、長生きしやすいと言われ、弁置換術より弁形成術が望ましいとされています。当科では90%以上の患者さんに弁形成術を行っています。弁形成術の欠点は、逆流が残る可能性や、将来的に逆流が再発する可能性があることです。僧帽弁の変化が強い場合や僧帽弁の破壊が強い場合、弁形成術が困難なことがあり、「僧帽弁置換術」を行います。
「僧帽弁狭窄症」に対しては、弁形成術は困難で、「僧帽弁置換術」を行います。
「三尖弁閉鎖不全症」に対しては、ほとんどの場合、「三尖弁形成術」を行います。
弁置換術の場合、人工弁は、「機械弁」または「生体弁」を用います。
「機械弁」は、カーボンでできており、耐久性が高く、一生涯使用できることが多いです。しかし、機械弁に血栓(血の塊)ができることがあり、人工弁機能不全や脳梗塞などの原因となるため、血をさらさらにする薬を一生涯内服する必要があります。脳出血や消化管出血(胃腸からの出血)などの出血が問題になることがあります。
「生体弁」は、ウシの心臓の膜やブタの弁を加工し、人工弁にしたものです。血をさらさらにする薬は、手術後3ヵ月で中止できます(心房細動など他の病気で必要な場合は、その後も内服していただきます)。欠点は、10〜15年で人工弁が劣化し、人工弁に逆流や狭窄がおきる可能性があり、再手術が必要になる可能性があることです。
一般的に、若い方には「機械弁」を、高齢の方には「生体弁」をお勧めしています。
80歳以上の高齢の患者さんに対しても弁膜症の手術を行っており、安全性の向上を心がけています。

  • 機械弁

  • 生体弁


2021(令和3)年より経カテーテル大動脈弁置換術を循環器内科と共同で導入しました。高齢や開胸手術のリスクが高くこれまで治療できなかった方にも治療できるようになりました。また、小さな創で弁膜症手術を行う内視鏡補助下手術のシステムを導入しました。早期の社会復帰を希望される方に有用な方法です。

提供:エドワーズライフサイエンス(株)

狭心症・心筋梗塞

狭心症とは、主に動脈硬化により心臓の血管である冠動脈が細くなり、心臓への血流が低下した状態です。心筋梗塞とは、主に動脈硬化により冠動脈が詰まり(閉塞し)、心臓の筋肉が死んでいく状態です。狭心症や心筋梗塞に対して、それぞれの患者さんに最適な治療法を、循環器内科と検討の上、薬物治療、カテーテル治療(ステント治療)、冠動脈バイパス術より選択しています。
冠動脈の性状や心臓の機能、患者さんの病状により、人工心肺を使用せず心臓が動いたまま手術を行うオフポンプ冠動脈バイパス術を行ったり、人工心肺を使用して冠動脈バイパス術を行ったりしています。バイパスに用いる血管は、胸の動脈(内胸動脈)、手の動脈(橈骨動脈)、胃の動脈(胃大網動脈)、足の静脈(大伏在静脈)を用いますが、冠動脈の病変や患者さんの状態により、できるだけ長持ちする血管を使用します。


胸部大動脈瘤、大動脈解離

「胸部大動脈瘤」とは、胸部の大動脈が大きくなって瘤となった状態です。大きくなった瘤は破裂する危険性があり、破裂すると大量出血により突然死する可能性が高いです。また、破裂後に救急車で病院に運ばれても状態が悪くなっていることが多く、手術をしても救命率が低いため、破裂前に手術をする必要があります。
「大動脈解離」とは、大動脈の壁が裂けた状態で、破裂する危険性や、さまざまな臓器の血流不足をきたす危険性があります。上行大動脈に解離が起きた場合(スタンフォードA型大動脈解離)は、多くの場合緊急手術が必要になります。上行大動脈以外の部位に大動脈解離が起きた場合(スタンフォードB型大動脈解離)は、多くの場合、薬で血圧をコントロールし経過をみることが多いです。ただし、腸や足などに血流障害をきたした場合や、大動脈が破裂した場合は、手術が必要になります。
胸部大動脈瘤や大動脈解離に対する手術方法には、①「胸部大動脈人工血管置換術」と、②「胸部大動脈ステントグラフト内挿術」があります。
①「胸部大動脈人工血管置換術」は、胸を開き、人工心肺を使用して、胸部大動脈を人工血管に取りかえる手術です。
②「胸部大動脈ステントグラフト内挿術」は、足の付け根を小さく切開し、カテーテル的にステント付き人工血管を挿入する手術です。
一般的に、「胸部大動脈ステントグラフト内挿術」のほうが体への負担が少ないですが、瘤の部位や形態によっては、開胸による「胸部大動脈人工血管置換術」のほうが、より安全かつ確実に治療できることも多く、瘤の部位・形態や、患者さんの状態により、それぞれの患者さんにとって最適な手術方法を選択しています。上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、スタンフォードA型急性大動脈解離に対しては、主に開胸して人工心肺を用いて「胸部大動脈人工血管置換術」を施行しています。また、下行大動脈瘤に対しては、主に「胸部大動脈ステントグラフト内挿術」を施行しています。人工心肺を使用した開胸による「胸部大動脈人工血管置換術」においても、脳を含めた臓器保護の方法が確立し、80歳以上の高齢の患者さんに対して手術を行っており、安全性の向上を心がけています。

①胸部大動脈人工血管置換術

(1)皮膚切開


②胸部大動脈ステントグラフト内挿術

(1)皮膚切開

(2)カテーテル的に胸部大動脈瘤内に人工血管を挿入


腹部大動脈瘤

「腹部大動脈瘤」は、腹部の大動脈が大きくなって瘤となった状態です。大きくなった瘤は破裂する危険性があり、破裂すると大量出血により突然死する可能性が高いです。また、破裂後に救急車で病院に運ばれても状態が悪くなっていることが多く、手術をしても救命率が低いため、破裂前に手術をする必要があります。
手術方法には、①「腹部大動脈人工血管置換術」と、②「腹部大動脈ステントグラフト内挿術」があります。
①「腹部大動脈人工血管置換術」は、腹部を切開し、腹部大動脈を人工血管に取りかえる手術です。手術後長期にわたり問題が起きる危険性が少なく、長期的に安心してすごしていただける、より確実な治療法です。
②「腹部大動脈ステントグラフト内挿術」は、足の付け根を小さく切開し、カテーテル的にステント付き人工血管を挿入する手術です。身体への負担が少ないですが、長期的にみると約10%の確率で治療後に大動脈瘤が拡大することがあり、定期的なCTの検査が必要であり、また、将来的に追加の処置・手術が必要になる可能性があります。また、瘤の部位や形態により不可能なことがあります。
瘤の部位・形態や、患者さんの状態により、それぞれの患者さんに最適な手術方法を選択しています。

①腹部大動脈人工血管置換術

(1)皮膚切開

(2)腹部大動脈瘤を切開し、人工血管に取りかえる


②腹部大動脈ステントグラフト内挿術

(1)皮膚切開

(2)カテーテル的に腹部大動脈瘤内に人工血管を挿入


閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、主に動脈硬化により足の血管が細くなったり詰まったりして、足への血流が悪くなった状態です。長い距離を歩くと、足が痛くなったりだるくなったりし、休むと良くなるような症状がでます。病状が進行した場合、足の皮膚に潰瘍ができたり、足が壊死(腐る)したりして、足の切断が必要になることがあります。循環器内科と連携しながら、それぞれの患者さんに対して最適な治療法を、薬物治療、カテーテル治療、バイパス手術より選択しています。

下肢静脈瘤

足先からかえってくる血液は、足の表面の静脈(表在静脈)から、足の奥の静脈(深部静脈)に流れ、心臓にかえっていきます。表在静脈と深部静脈の間には、血液が逆流しないように弁が付いていますが、長時間の立ち仕事や、妊娠・出産、肥満などの原因により、弁が壊れ、深部静脈より表在静脈に血液が逆流するようになり、表在静脈が太くなり、下肢静脈瘤となります。