循環器疾患全般にわたり、最新の診療を提供できるよう心がけています。当医療センターは緊急症例が多く、年間入院患者さんは約2,000人に上ります。虚血性心疾患や末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患、不整脈疾患、心不全、心臓弁膜症、肺高血圧症など、幅広い分野の循環器疾患を診療しています。循環器内科では、チーム一丸となって良質・安全な医療を提供していきます。
ハートチーム
心臓血管外科と協力してハートチームを組織し、2021(令和3)年からは重症大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)を開始しました。また、2023(令和5)年からは僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(マイトラクリップ)も可能となりました。これにより、これまで手術加療が難しかった高齢の患者さんや重篤な併存症を持つ心臓弁膜症患者さんの治療が可能となりました。重症例に対しては、ハートチームカンファレンスを行い、個々の患者さんに最適な治療を提供できるよう努めています。胸部・腹部大動脈瘤に対するハイブリッド手術室を活用したステントグラフト内挿術や、下肢動脈疾患の内膜摘除+血管内治療のハイブリッド治療など、最新のカテーテル治療が提供できるようになっています。
診療の特色
当科では、昨今患者さんが急増している心不全診療に積極的に取り組んでいます。心不全は、多職種によるチーム医療が非常に重要な分野です。基礎心疾患(冠動脈・弁膜症・不整脈)に対して適切な介入を行い、適切かつ最新の薬物療法+リハビリテーションを行い、退院後も再入院を抑制できるよう、多職種で心不全患者さんの治療をサポートしています。令和5(2023)年度からはHCU病床が新設され、症状の重篤な急性期の心不全患者さんを、よりきめ細かく診療できるようになりました。心不全診療は退院後のケアも重要であり、地域の先生方や訪問看護師さんと連携を密にしています。
また、動脈硬化性疾患では、虚血性心疾患・末梢動脈疾患のカテーテルを用いた血管内治療を得意としています。救急科・集中治療部と連携し、年間800~900例の緊急性の高い患者さんが救急外来から入院し、多くの心筋梗塞の患者さんの緊急カテーテル治療を行っています。冠動脈や下肢動脈の閉塞病変へのカテーテル治療も積極的に施行しています。また、血管病の二次予防に、心臓リハビリテーションも行っています。
不整脈に対しては、心房細動や心室頻拍に積極的にカテーテルアブレーションを施行しています。特に、心房細動は高齢化とともに今後も増加が予測されており、3次元マッピングシステムを活用した、質の高い最先端の治療を提供しています。
教育・研究活動
当科では、科学的に明らかとなっていない臨床領域に関して、学術活動を通じて適切な診療を追求しています。また、京都大学循環器内科の関連施設として臨床研究にも積極的に参加しています。
また、当科では、後進の育成にも力を入れています。専攻医(後期臨床研修医)や初期研修医の先生方にも、充分な症例数と学びの機会を提供し、診療・カテーテル治療の指導を行うとともに、学会発表など学術活動をサポートしています。
役職 | 部長 |
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卒業年 | 1991(平成3)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 | 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会心血管カテーテル治療専門医 日本経カテーテル心臓弁治療学会経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)指導医 |
その他 | 医学博士 東京医療保健大学臨床教授 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士 |
関連するページ | 「公開講座(赤十字県民大学)」令和5年度動画 |
役職 | 副部長 |
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卒業年 | 2004(平成16)年 |
専門分野 | 心血管インターベンション、大動脈ステントグラフト、末梢血管疾患、心臓弁膜症 |
資格 | 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会心血管カテーテル治療専門医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会胸部大動脈瘤ステントグラフト指導医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステントグラフト指導医 日本経カテーテル心臓弁治療学会経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)SAPIEN EVOLUT実施医 |
その他 | 京都大学医学博士 京都大学医学部非常勤講師 日本内科学会JMECCインストラクター
日本救急医学会ICLSインストラクター
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役職 | 医長 |
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卒業年 | 2010(平成22)年 |
専門分野 | 虚血性心疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患、心臓弁膜症 |
資格 | 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステント瘤グラフト実施医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
役職 | 医長 |
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卒業年 | 2012(平成24)年 |
専門分野 | 循環器一般、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心不全 |
資格 | 日本内科学会認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心エコー図学会SHD心エコー図認証医 |
その他 | 京都大学医学博士 日本心不全学会HEPT心不全緩和ケアトレーニングコース修了
京都大学大学院医学研究科循環器内科学客員研究員
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役職 | 医長 |
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卒業年 | 2012(平成24)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 | 日本内科学会認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
役職 | 医長 |
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卒業年 | 2013(平成25)年 |
専門分野 | 循環器一般、不整脈 |
資格 | 日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2017(平成29)年 |
専門分野 | 循環器一般、虚血性心疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患 |
資格 | 日本内科学会内科専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステントグラフト実施医 |
役職 | 医師 |
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卒業年 |
2017(平成29)年 |
専門分野 | 循環器一般、虚血性心疾患、末梢動脈疾患 |
資格 | 日本内科学会内科専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
役職 | 医師 |
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卒業年 |
2017(平成29)年 |
専門分野 | 虚血性心疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患 |
資格 | 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部大動脈瘤ステントグラフト実施医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
その他 | 日本救急医学会ICLSディレクター |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2016(平成28)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2019(平成31)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2019(平成31)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 | |
その他 | 日本救急医学会ICLSインストラクター |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2019(平成31)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2020(令和2)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 |
役職 | 医師 |
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卒業年 | 2022(令和4)年 |
専門分野 | 循環器一般 |
資格 |
役職 | 嘱託 |
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卒業年 | 1998(平成10)年 |
専門分野 | 不整脈 |
資格 | 日本内科学会認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会不整脈専門医 ICD/CRT研修修了証取得者 |
場所 |
本館3階(3C) |
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受付時間 |
新患:8時〜11時30分 |
区分 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
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AB
CD |
豊福 | 田﨑 | 辻 | 辰島 | 藤田 |
★1 伊勢田 |
辻 | ★1 伊勢田 |
田﨑 | 柴森 | |
藤田 | 辰島 | - | 木村 | - | |
- | 野村 |
- | - | - | |
CD | 一柳 | 松井 | 豊福 | 上田 | 坂本 |
- | - | 吉田 | - | - |
(2024年5月1日~)
※区分
(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
★1:専門外来
※ 都合により変更する場合もありますのでご了承ください。
※ 新患優先
専門外来 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
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ペースメーカー外来 (予約制) |
交替制 | - | - | - | - |
不整脈外来 (予約制) |
伊勢田 | - | 伊勢田 | - | - |
末梢血管外来 (血管内治療) (予約制) |
- | 田﨑 | - | 田﨑 | 柴森 |
心不全外来 (完全予約制) 13時~16時 |
- | - | 辻 | - | - |
(2024年4月1日~)
※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。
入院患者数 | 1,840人 | |||||
緊急入院患者数 | 723人 | |||||
予定入院患者数 | 1,117人 | |||||
冠動脈形成術(PCI) | (合計)531 | |||||
(内)緊急/プライマリPCI | 194 | |||||
(内)待機的PCI | 337 | |||||
冠動脈石灰化カテーテル治療(ロータブレーター) | 31 | |||||
末梢動脈形成術(PTA) | 194 | |||||
心臓カテーテル検査(冠動脈造影) | 1,107 | |||||
FFR検査 | 67 | |||||
下大静脈フィルター挿入 | 3 | |||||
TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術) | 45 | |||||
経皮的僧帽弁クリップ術 | 6 | |||||
カテーテルアブレーション | 200 | |||||
ペースメーカー(PM) | 97 | |||||
植込み型除細動器(ICD) | 20 | |||||
両室ペーシング(CRT/D) | 13 | |||||
負荷心電図 | 667 | |||||
心筋血流シンチ | 109 | |||||
冠動脈CT | 648 | |||||
経胸壁心エコー | 9,365 | |||||
経食道心エコー | 201 | |||||
心臓MRI | 34 | |||||
心臓リハビリテーション(延べ件数) | 8,907 |
日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科では、安全で最新の診療を提供できるよう心がけています。
胸が苦しい、動悸がする、息が苦しい、足が腫れるなどは、心臓病を示す兆候です。これらの症状に対して、地域を守る急性期病院として適切に診断し必要な治療を行います。心臓・血管の病気でお困りのことがありましたら、ご相談ください。
循環器疾患は、急な病態の変化もめずらしくありません。その際には、救急科・集中治療部と連携して24時間365日対応しています。急な症状の変化時にも安心して当医療センターを受診ください。
外来受診をするための手続き
かかりつけ医から紹介状をお持ちの患者さんは、予約センターで診察の予約を取ることができます。
予約センターの利用方法は、こちらをご覧ください。
強い胸の痛みなどで緊急を要する場合は、直ちに救急外来を受診してください。
再診の方で、症状が急に悪化した場合などは、予約日以外でも受診いただけます。
(受付時間8:00~11:30)
外来受診の流れ
① 循環器内科初診外来を予約・受診してください。
(不整脈専門外来や末梢血管疾患専門外来の予約も受け付けています)
かかりつけ医をお持ちの方は、紹介状とお薬手帳の提示をお願いします。
② 外来にて、診察ならびに血液検査、心電図、エコー検査を行います。
医師の判断で、診察の前に先に検査を受けていただく場合があります。
③ 受診日当日に検査結果を説明し、患者さんの希望や都合に応じて治療方針を相談・提示しています。
さらに詳しい検査が必要な場合、外来にて追加検査を行ったり、カテーテル検査ならびに治療が必要な場合は、入院を案内することもあります。安静時の心電図にて異常がある場合等、重症な循環器疾患が疑われる場合は、早期に入院をお願いする場合があります。
*初診で来院される場合は、外来での検査や診察に時間がかかる場合があります。時間に余裕をもって来院ください。時間に余裕がない場合は、予め外来受付に伝えていただければ、別の日に時間のかかる検査を予定することもできます。
急性期の病態が落ち着いて、定期的な薬物療法で病状が安定した状態となりましたら、地域のかかりつけ医の先生方に投薬や病状の観察など、診療の分担をお願いしています。もちろん、必要な時には随時当医療センターで診療を行い、病院と診療所の二人主治医制で皆様を支えていきます。6~12ヵ月に1回程度、当医療センターにも通院いただき、血液検査や心電図検査、心臓超音波検査にて病状の経過観察を行います。
急に症状が増悪した場合や、検査で異常が見つかった場合は、速やかに再度詳しい検査や治療を行いますので、かかりつけ医の先生にご相談のうえ、当医療センターに来院ください。
循環器内科では、様々な症例登録事業や合同臨床研究に参加しています。
当科では、救急科・集中治療部、心臓血管外科と協力し、心臓血管疾患に対する緊急治療を24時間365日提供しています。また、循環器内科はチーム一丸となって、心臓血管疾患の患者さんへの良質・安全な医療を提供してまいります。心臓救急疾患でお困りの患者さんがおられましたら、いつでもご相談ください。
また、循環器疾患というのは、急性期を過ぎてもほとんどの疾患は永続的な管理が必要となります。特に動脈硬化性疾患は、血行再建や急性期の手術が無事終了しても、再発予防のため、抗血栓薬や脂質低下療法、降圧治療、糖尿病診療といった内科的な二次予防が永続的に必要となります。また、心不全は根治する病態ではなく、継続的な管理が必要です。当医療センターでは厚生労働省の指導で、病院完結型診療から地域完結型診療への転換を進めています。急性期の病態が落ち着いて、病状が安定したと判断される患者さんにつきましては、地域の先生方に診療の分担をお願いしています。ご多忙のところ申し訳ありませんが、引き続きご加療何卒よろしくお願い申し上げます。病状悪化時には、直ちに当医療センターにて対応いたします。
現在、心不全診療につきまして、地域の先生方とのネットワークの構築を準備中です。また、診療ガイドラインを基にした、地域の先生方と共有できる病態別の循環器疾患標準診療プロトコルも準備中です。今後、患者さんにも安心して継続的な診療が受けていただけるよう、地域の病院・診療所の先生方との連携の一層の推進を目指しています。
心臓を構成する筋肉を心筋といいますが、その心筋に酸素と栄養を送る冠動脈に障害が起きる病気を虚血性心疾患と言います。
心臓は、肺で酸素を取り込んだ新鮮な血液を全身に送り出しています。心臓は収縮と拡張という規則正しい運動を繰り返して、1分間に60から80回、1日に約10万回拍動しています。虚血性心疾患とは、心筋に栄養を送る冠動脈の内腔が狭窄あるいは閉塞することで、心臓の筋肉に十分な血液が送られなくなる状態です。
狭心症では、動脈硬化プラークにより冠動脈の狭窄あるいは閉塞により、心筋に必要な酸素と栄養が不足することで、患者さんは胸が締め付けられるような痛みを感じます。これが狭心症の発作です。狭心症は労作性狭心症と異型狭心症に大別されます。
労作性狭心症
労作性狭心症は、冠動脈の狭窄が原因で、坂道や階段を上がったり、走ったりして心臓に負担がかかった時に症状が起こるものです。静かに休んでいる時には発作は起こりません。
異型狭心症(冠れん縮性狭心症)
労作性狭心症が労作時に症状が起きるのに対して、逆に夜中に寝ているときや静かに休んでいるときに突然胸が苦しくなるものを異型狭心症と言います。冠動脈が一時的に痙攣(けいれん)を起こして一時的に狭くなることで発作が起こります。通常は冠血管拡張薬を投与することで軽快します。
急性心筋梗塞
冠動脈の動脈硬化プラークが破綻すると、そこに血栓が生じて急に閉塞することで、心筋に栄養と酸素が供給されなくなり、心筋が壊死することを急性心筋梗塞といいます。急性心筋梗塞では、胸が締め付けられるように痛くなり、吐き気や冷や汗を伴い、その症状が15分以上持続します。急性心筋梗塞はきわめて重篤な状態で生命の危険があり、一旦壊死が完成すると心臓には重篤な後遺症が残ります。発症時は、できるだけ早く心臓カテーテル治療ができる救急病院で直ちに血行再建術(血流を回復させる治療)が必要です。いままで感じたことのないような強い胸の痛みがあり、冷や汗を伴うようなら直ちに救急車を呼びましょう。
心筋が広い範囲で障害されると、血圧を維持できなくなり心原性ショックの状態となります。また、心筋梗塞になると、心室細動や心室頻拍といった、心臓が停止するような重篤な不整脈を起こしやすくなり、除細動(いわゆる電気ショック)が必要となる場合もあります。近年は公共施設や商業施設にAED(自動体外式除細動器)が配置されており、トレーニングを受けた方は医師で無くても除細動を行うことができます。
高血圧・糖尿病・脂質異常症(高コレステロール血症)・喫煙が虚血性心疾患の重要な危険因子であることが分かっています。また、運動不足・肥満・高尿酸血症(痛風)・家族歴・ストレスも、危険因子であることが報告されています。上記の危険因子をお持ちで、最近、坂道での息切れや胸の圧迫感がある人は、かかりつけ医に相談するか当科を受診ください。
また、ご両親やご兄弟が狭心症や心筋梗塞の治療を受けている人で、健康診断で高血圧や糖尿病、脂質異常症を指摘された場合は、早めにかかりつけ医に相談し適切な治療を開始しましょう。
血液検査
血液検査で貧血や、肝機能、腎機能の確認をします。また、糖尿病や中性脂肪・コレステロール値、心不全の合併を検査します。
心電図
安静時の心電図で不整脈の有無や、重篤な心臓の虚血がないか検査します。重症な狭心症の場合は、安静時の心電図でも変化が出ることがあります。
運動負荷心電図検査
労作性狭心症の診断のため、心電図を装着して患者さんの年齢や体力に応じた運動をしていただき、心臓に負荷をかけた状態で症状が出るか、心電図異常が出るか検査します。
胸部X線(レントゲン)
胸部X線検査では、心臓の大きさや胸水(胸に溜まった水)の有無を検査します。虚血性心疾患が重症で心臓の働きが悪くなると心臓が大きくなります。
心臓超音波検査(心エコー検査)
心臓超音波検査では、心臓の壁運動や心臓弁膜症の合併がないか検査します。冠動脈の狭窄が高度の場合、栄養する心筋の壁運動が低下することがあります。
心筋シンチグラフィ
心筋シンチグラフィでは、運動や薬剤などで心臓に負荷をかけ、心臓の筋肉に集まる放射性同位元素を注射し、心筋の血流やエネルギー代謝などを撮影します。
冠動脈CT
血管を描出できる造影剤を静脈から注射して、心臓のCT写真を撮影することで冠動脈の狭窄部位の同定や重症度を診断することができます。当医療センターでは320列のCTを使用しています。良質な画像を撮影するために心拍数が早い患者さんは、心拍数を一時的に低下させる薬を注射してから撮影を行います。
冠動脈造影
手首あるいはそけい部(足の付け根)からカテーテルを挿入し、冠動脈の入口部から造影剤を注入しX線装置で撮影して冠動脈の狭窄部や閉塞部を描出します。2~3日入院して検査が必要です。
冠血流予備能比( FFR: Fractional Flow Reserve)
心臓カテーテル検査に引き続いて、先端で血圧を測定できる特殊なワイヤー(プレッシャーワイヤー)を冠動脈に挿入して、狭窄病変の手前と奥の血圧を測定することで、冠動脈の狭窄部がどのくらい心臓の血流を妨げているかを算出します。狭窄の遠位部で一定程度以上血流が低下している場合、血行再建(血管を広げる治療)の適応となります。
FFR-CT
当医療センターでは、CT画像からコンピューターで解析し冠動脈の狭窄部位の重症度を判定するFFR-CT検査が可能です。これにより心臓カテーテル治療前に、狭窄部位がどのくらい心臓の虚血に関与しているか検査することができます。
1.薬物治療
抗血小板療法
狭窄した血管が閉塞しないように血液を固まりにくくする薬を使用します。ステント留置後やバイパス手術後も抗血小板薬内服が必要です。長期に多くの薬剤を内服すると出血リスクが高くなりますので、適切な時期に減量が必要です。
冠血管拡張薬
狭心症発作が起こった場合には、冠血管拡張薬を使用することで症状が緩和されます。冠れん縮性狭心症は冠血管拡張薬による治療が主体となります。
脂質低下薬
冠動脈が動脈硬化プラークで狭窄や閉塞するのを予防するためにコレステロールや中性脂肪を下げる薬を内服します。脂質低下療法により、動脈硬化の進行を予防し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げることができます。
※その他の併存症によって、糖尿病や高血圧についての薬物療法も再発予防のために重要です。主治医やかかりつけ医と相談して適切な薬物療法を継続することが、虚血性心疾患の診療では非常に重要です。
2.運動療法 心臓リハビリテーション
心筋梗塞や狭心症の患者さんは、心臓リハビリテーションプログラムに参加することができます。心臓リハビリとは、心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することを目指して行う総合的活動プログラムのことです。内容として、運動療法と学習活動・生活指導・相談などを含みます。心電図や血圧を観察しながら、適切な強度で運動を行うことで、運動耐用能を向上させることができます。当医療センターでも心臓リハビリテーションを行っており、入院中および外来で参加することができます。
3.血行再建手術
冠動脈バイパス手術(CABG)
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
冠動脈バイパス手術(CABG)
重症の冠動脈病変の患者さんや、弁膜症・大動脈瘤などを合併した患者さんは、心臓外科による「冠動脈バイパス手術」の方が適している場合があります。冠動脈バイパス術は狭窄している冠動脈に新しく血液が流れるように別経路で血管をつなぐ手術です。狭心症の再発率が少ない優れた治療法ですが、カテーテルによる治療に比べると体への負担は大きくなります。当医療センターでは、重症の冠動脈病変の患者さんはハートチームで治療方針を相談し、それぞれの患者さんに最適な治療法を検討しています。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
「カテーテルによる狭心症の治療」は「経皮的冠動脈インターベンション:(Percutaneous Coronary Intervention)」の頭文字を略して「PCI」と呼ばれることが多くなっています。
PCIでは、当初は単純に風船(バルーン)で拡げていましたが、再狭窄・急性閉塞などの問題点が残されていました。その後、血管の内側をステント(筒状の金網)で支える方法が有効性を示し、広く用いられるようになりました。現在は、再狭窄を抑えるためにステントに内膜の増殖を抑える薬剤を塗布したステントを使用しています。
ステントを用いた「PCI」は以前に比べれば飛躍的に安全な手技となり、適応は拡大しています。しかし、成功率が高まったとはいえ、実際の現場では命にかかわるリスクはゼロではありません。主治医とよく相談して、患者さんご自身とご家族が納得したうえで治療を受ける必要があります。
冠動脈石灰化病変に対する特殊カテーテル治療
・ロータブレーター
ロータブレーターは、カテーテルの先端に小さなダイヤモンドの粒を装着した丸い金属(burr)を高速に回転させることで、バルーンで拡張できないような非常に硬くなった冠動脈の石灰化プラークを切削することができます。また、ロータブレーターは、柔らかいものは削れにくいのが特徴で、柔らかい正常の血管は傷つけにくくなっています。通常は、ロータブレーターに引き続き、バルーン拡張、ステント留置術を行います。
・ショックウェーブ(IVL:Intravascular lithotripsyカテーテル)
ショックウェーブは、カテーテルから発生した音圧波パルスにより、固い石灰化病変を破砕します。同じ音圧波パルスは、軟組織に対しては無害です。表在性と深在性、求心性と偏心性、短い病変と長い病変など、様々な石灰化の分布に影響を受けない、安定した内腔の獲得やステント拡張を得ることを目指します。
急性心筋梗塞の治療
急性心筋梗塞の急性期の治療として、カテーテルによる再開通療法は広く普及し施行されています。閉塞した冠動脈の血流を再開させることより、閉塞したまま保存的に治療した場合に比べて、壊死する心臓の筋肉を減らし心機能を保持することができ、死亡のリスクが減少します。当科でも24時間、いつでも緊急心臓カテーテル検査、冠動脈造影、再灌流療法が施行できる体制を整えています。
虚血性心疾患の血行再建術後の経過観察
血行再建治療が安定し、薬物療法で症状が安定した患者さんは、お近くのかかりつけ医にて普段の診察ならびに薬剤の処方をお願いしています。6~12ヵ月に1回程度、当科にも通院いただき、血液検査や心電図検査、心臓超音波検査にて虚血性心疾患の経過観察を行います。急に症状が増悪した場合や、検査で異常が見つかった場合は、再度詳しい検査や治療を行います。
下肢閉塞性動脈硬化症とは、下肢を栄養する動脈が、動脈硬化によって狭窄したり閉塞したりすることで下肢が虚血(血液が足りない状態)となり起こる病気です。
軽症の患者さん(下肢動脈が狭窄・閉塞しても、症状が軽度で日常生活に支障のない方)は、血管を広げるカテーテル治療やバイパス手術は必要ありませんが、動脈硬化が進行しないようにするための薬物治療が必要です。
中等症の患者さんは、下肢動脈が狭窄ならびに閉塞して血液の流れが悪くなると、歩くと足が重たくなったり、だるくなったり痛みがでたりして、歩くのが困難になったりする等の症状(間欠性跛行)が現れます。薬物治療や運動療法で改善しない場合は、カテーテル治療で血管を広げたり、バイパス手術を行うことで血流の改善が必要です。
重症の患者さんは、高度に血流が低下することで、安静時でも足に痛みがでたり、足が壊死に陥り潰瘍(きず)を形成することがあります。下肢虚血,組織欠損,神経障害,感染といった下肢切断リスクを持ち、治療介入が必要な下肢の総称として包括的高度下肢虚血CLTI(chronic limb–threatening ischemia)という概念が提唱されています。傷が拡大し感染を起こした場合は、足の指を切断したり、最悪の場合下肢の切断(膝下での切断、大腿部での切断)という事態に至ってしまうこともあります。とくに糖尿病をお持ちの患者さんや透析を受けている患者さんでは注意が必要で、2週間以上治癒しない足の傷がある方は一度検査が必要です。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんは、狭心症や脳梗塞といった他の動脈硬化性疾患を合併することが多く、他の動脈の検査も一緒に行うことがあります。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんの検査は、主に外来で以下の検査を行います。
触診
下肢の動脈は体表面から触知することができます。血管が閉塞したり高度の狭窄があると、それより末梢の動脈は触知することが困難となります。
ABI:足関節上腕血圧比
上肢(腕)と下肢(足首)の血圧を比較します。正常値は0.9~1.1と上肢と下肢で差がありませんが、下肢の動脈が狭窄していると足首の血圧のほうが低くなります。
SPP(Skin perfusion pressure:皮膚還流圧)
レーザードプラにより皮膚の微小循環(表面から1~2㎜)を測定します。重症の下肢虚血の患者さんに、虚血の重症度の評価のために測定します。
超音波(エコー)検査
超音波検査にて下肢動脈狭窄部の血流評価をすることで、狭窄の有無・重症度を診断します。
造影CT検査
造影剤を注射して下肢のCT検査をすることで、下肢の動脈の状態を詳細に評価できます。
カテーテル検査(血管造影検査)
大腿動脈(足の付け根の血管)からカテーテルという細い管を動脈内にいれ、造影剤を注射しながX線透視装置で撮影することで、血管の形態、狭窄度を評価します。
運動療法
閉塞性動脈硬化症の患者さんは、運動療法を行うことで、下肢への血流が増加して、症状が改善することがあります。
薬物療法
抗血小板療法(アスピリン・クロピドグレル硫酸塩・シロスタゾール)
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんは、血管の閉塞を予防するため、抗血小板薬(血液が固まりにくくなる薬)を内服いただきます。また、併存する高血圧・高コレステロール血症・糖尿病の薬物療法を行うことで、動脈硬化の進行を抑えます。シロスタゾールには、間歇性跛行(歩くと足がだるくなること)の症状を軽減する効果があります。
1.血行再建術・カテーテル治療
動脈の狭窄部や閉塞部をバルーンカテーテルで拡張したり、ステント留置術を行うことで下肢動脈の血流を改善します。大腿膝窩動脈(太ももから膝の血管)領域では、近年薬剤コーティングバルーンでの治療が増えており、良好な成績が報告されています。
2.バイパス手術
自身の下肢静脈や人工血管を用いて、閉塞している動脈を迂回して末梢側の狭窄のない動脈に吻合(血管を縫うこと)することで、下肢動脈の血流を改善します。全身麻酔による手術が必要ですが、カテーテル治療と比較して多くの血流を供給できます。
当科では、下肢閉塞性動脈硬化症、また、大動脈分枝の狭窄病変(腎動脈や鎖骨下動脈)に対する経皮的血管形成術に豊富な治療経験があります。また、潰瘍をともなう重症下肢虚血(CLTI)へも、積極的に血管内治療を行っています。
バルーン形成術 薬剤コーティングバルーン
円筒形のバルーンカテーテルで狭窄部を拡張します。とくに限局性の病変であれば、通常のバルーンで長時間拡張することで、良好な拡張を得ることができます。大腿膝窩動脈(太ももから膝の血管)領域では、近年薬剤コーティングバルーンでの治療が増えており、良好な成績が報告されています。
ステント留置術
ステント(金属のメッシュ状の筒)を閉塞部や狭窄部に留置することで、下肢動脈を拡張し血流を改善します。病変の形態や長さによって、通常の金属ステント、薬剤溶出性ステントやステントグラフト(人工血管と金属ステントを接着したもの)を使い分けています。
クロッサー閉塞部貫通カテーテル
機械的振動をクロッサーカテーテルシステムの先端チップに伝搬させることで、血管内の石灰化した硬化病変を貫通させることができます。
下腿動脈領域における血管内治療
下腿動脈(膝より下の血管)が閉塞または狭窄している患者さんに対する血管内治療は、現状バルーン拡張術しか認可されていません。そのため、治療の適応となるのは、安静時に足趾に痛みがある患者さんや、足に潰瘍(きず)をお持ちの包括的高度下肢虚血CLTIの患者さんが対象となります。
ガイドワイヤー通過後に、バルーンで長時間拡張することで、血管の解離を最小限におさえて病変の拡張を行います。しかし、バルーン拡張のみでは再狭窄を生じることが多く、傷の治癒までの間に繰り返しカテーテル治療が必要となる場合があります。
当医療センターでは、整形外科・皮膚科・心臓血管外科・循環器内科・糖尿病・内分泌内科・看護師・理学療法士などの多職種でフットケアチームを組織し、下肢に傷がある患者さんの治療にあたっています。 足の指やかかとに傷ができている患者さんは、各診療科の外来に相談してください。
心臓から全身に向けて血液を送り出している太い血管を大動脈と言います。大動脈瘤とは、大動脈が部分的または全体的に拡張して瘤(こぶ)を形成する病気です。径が大きくなり破裂した場合、大出血を起こし死亡する恐れがあります。破裂してから救命することは難しく、ある程度の大きさになると破裂の予防のために治療が必要となります。
大動脈瘤が破裂する際には強い痛みを伴いますが、安定している大動脈瘤は基本的には無症状です。健康診断や他の病気のためのCTやエコー検査で発見されることがあります。胸部大動脈瘤の場合は、瘤が大きくなると反回神経という声帯を支配する神経を圧迫するため、嗄声(させい:声がかすれること)を生じることがあります。腹部大動脈瘤の場合は、お臍のまわりに拍動する瘤を触れることがあります。
大動脈瘤の診断方法
主にCT・MRI・エコーなどで診断できます。腎機能が低下している場合や造影剤にアレルギーのある場合でも、造影剤を使用しない単純CT検査で診断は可能です。
大動脈瘤の治療方法
動脈瘤が小さく症状のない時には、血圧を下げて動脈瘤が拡大を予防するとともに、半年から1年に1回、定期的な検査を行って、急速な動脈瘤径の拡大がないか観察します。大動脈瘤が大きくなり、破裂の危険性が高くなければ根治的な治療を行う必要があります。
治療が推奨される大きさの目安は胸部で5.5㎝以上、腹部では5㎝以上ですが、大きさだけではなく動脈瘤の形態や、拡大する速度等を考慮して治療時期を検討します。動脈瘤を治療するためには以下の2つの方法があり、それぞれの長所と短所があります。
1.外科手術による治療: 人工血管置換術
従来から行われている根治的な治療法です。全身麻酔を行い外科的に拡大した動脈瘤を切り取り、人工血管に置換する手術です。侵襲(体に対する負担)は伴いますが、確実に動脈瘤を除去できます。外科手術成績は年々向上しており、長期成績についてもよく知られています。全身麻酔下で胸部や腹部の切開が必要です。
2.カテーテルによる治療
そけい部(足の付け根)からカテーテル挿入して金網(ステント)と人工血管(グラフト)を合わせたステントグラフトを患者さんの大動脈に内挿する方法です。この方法は、そけい部を小さく切開したり、穿刺(針を刺すこと)することで治療出来るので身体への負担が少ないのが特徴です。
動脈瘤への血流が遮断されると、次第に瘤径は縮小してきます。大動脈瘤自体は体内に残るため、治療後に動脈瘤内への血液の流入(エンドリーク)を生じると動脈瘤が再拡大し再治療が必要となる場合があります。
ステントグラフト内挿術とは
ステントグラフト(人工血管に金網(ステント)を縫い合わせたもの)をカテーテルの中に収納し、そけい部(足の付け根)から血管の中に入れ、患部で広げて血管を補強するとともに動脈瘤の部分に血液が流れないようにする治療です。身体の負担が小さく、入院期間が短くなり、早く歩いたり食事を摂ったりすることができるようになります。他の病気が理由で外科手術のリスクが高い患者さんや、ご高齢の患者さんへの治療法として普及しています。しかし、大動脈瘤の形態によってはステントグラフト治療が困難な場合があります。
ステントグラフト内挿術を検討する際に、造影CTを撮影し大動脈瘤の形状がステントグラフトに適しているかどうかを検討します。経験豊富な専門医が、患者さんの動脈瘤の形態に合った適切な機種およびサイズのステントグラフトを選択します。
そけい部(足の付け根)を小さく切開したり、穿刺(針を刺すこと)して、ステントグラフトを挿入します。当科では多くのステントグラフト内挿術を身体の負担の少ない局所麻酔に鎮静薬を併用して実施しています。
実際の治療では、エックス線透視下でステントグラフトの位置を確認しながら、血管の正しい位置に運び留置します。ステントグラフトの両端が血管壁と密着すると、血液はステントグラフトの中を流れるので、大動脈瘤内への血流は遮断されます。
手術の最後に血管造影を行い、動脈瘤内への血液の流入(エンドリーク)がなく、血管の損傷がないことを確認します。最後にそけい部(足の付け根)の血管を縫合して終了します。 ステントグラフト内挿術は、CT画像と同期可能な血管造影装置を備えたハイブリッド手術室にて施行しています。
ステントグラフトを用いた治療では、この治療に特有な不具合・有害事象が起こる可能性があります。また、不具合が発生した場合、手術中や手術後に追加の治療が必要になり、緊急で開腹外科手術が必要となる場合もあります。
漏れ(エンドリーク)の残存
ステントグラフトの大動脈壁への密着不足などにより、動脈瘤内に血液の流入が残存することがあり、これをエンドリークと言います。この場合、動脈瘤壁に圧がかかり動脈瘤のさらなる拡大および破裂の危険性が残るため、再治療が必要になります。
<ステントグラフト内挿術の長期成績向上のための取り組み>
ステントグラフト内挿術の前に、大動脈の分枝から動脈瘤内に血流が流入することが予想される場合は、分枝に対してカテーテルを用いてコイル塞栓(針金で血管を詰める治療)を行うことで、エンドリークが減少し治療成績の向上が報告されています。
特に腹部大動脈瘤では、腹部の分枝(下腸間膜動脈や腰動脈)から血液が逆流することで動脈瘤が拡大するケース(II型エンドリーク)があり、太い分枝がある場合は、ステントグラフト内挿術前に積極的にコイル塞栓術を併用しています。
他にも、ステントグラフトの移動、塞栓症、血管合併症、創部の合併症、造影剤腎症などの合併症があり、治療前に担当医から詳しく説明させていただきます。
ステントグラフト内挿術を受けた後は定期的に検査を受け、瘤が大きくなっていないか、大動脈瘤内への血液の流入(エンドリーク)がないか、ステントグラフトの移動・閉塞・破損などが生じていないかを定期的にCTやエコーにより観察します。
ステントグラフト内挿術後のMRI撮影について
ステントグラフトには、ステント部に金属素材が使用されていますが、市販されているいずれのステントグラフトにおいても、3.0T(テスラ)までのMRIは安全に撮影できることが報告されています。
治療や合併症の詳細については、受診した際に担当医師にご確認ください。
心臓は規則正しく拍動し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。
このポンプは電気刺激で動いていて、この電気刺激の経路に異常が生じると、心臓全体に電気刺激がうまく伝わらずに心臓の動き(心拍)が乱れることを不整脈と呼んでいます。
不整脈の症状として、心拍が速くなると強い動悸や胸部不快感、胸痛などが出現する時があります。また、逆に心拍が遅くなると疲労感やめまいがあり、ひどい時には意識を失うこともあります。
不整脈にはいろいろな種類がありますが、心拍が遅いものを徐脈性不整脈と呼びます。この徐脈性不整脈の主な原因は、電気刺激の機能そのものが低下したためであり、人工的に心臓への電気刺激を補う心臓ペースメーカーの植え込みが必要となることがあります。
また、心拍が速いものを頻脈性不整脈と呼びます。この不整脈の主な原因は(1)電気刺激の経路に余分な電気刺激を発生する部位ができたり、(2)正常の伝導路とは別の伝導路が存在することで、そこで電気刺激が渦を巻いたりすることで心拍が速くなります。近年、この頻脈性不整脈の治療が目覚ましい進歩を遂げています。
徐脈性不整脈では、心臓の打つ回数(心拍)が少なくなるため、日常生活中に息切れや倦怠感を感じることがあります。このような自覚症状がない場合は経過観察できますが、脈拍が少なくなっている原因によってはペースメーカーが必要になることがあります。
ペースメーカーとは、電池とコンピューターが内蔵された金属製の本体(ジェネレーター)と電線(リード)からなります。このリードを心臓の中の右上の部屋(右心房)と右下の部屋(右心室)にそれぞれ留置してペースメーカーの本体に繋ぎます。ペースメーカー本体の留置場所は、通常左胸の鎖骨下付近に数㎝切開し、皮下にポケットを作成します。そのポケットの中に本体を収納します。
ペースメーカーは心臓に留置されたリードを用いて心臓の動きを感知し、もし、適切に動いていない場合は電気刺激を伝えます。ペースメーカー本体の重さはおおよそ20g程度で、電池の寿命はペースメーカーの作動率にもよりますが、おおよそ8〜10年程度です(電池が改良されていますので10年以上もつものもあります)。電池寿命がくれば交換が必要です。
2017(平成29)年9月より使用が可能になったペースメーカーです。従来のリードを用いて、皮下に植え込むペースメーカーと異なり、直接心臓に植え込みます。直接心臓に植え込むため、リードが必要ない(リードレス)のでリードの破損や脱落などがありません。
また、皮下にポケットを作成する必要もないため、ポケット作成に関係した感染症も起こりませんし、外から見ても全くペースメーカーが挿入されているかどうかもわからないので美容上の利点もあります。現在では心房(心臓の上の部屋)に同期して、心室(心臓の下の部屋)のペーシングを行うことができます。
ただ、心室にしか植え込めないこと、ペースメーカーの電池寿命がきても取り出せないため追加の挿入しかできないなどの課題もあります。現在は電池寿命が改善され10年前後の寿命が期待できます。
植込み型除細動機能付きペースメーカー(ICD)
心臓の機能が低下したり、心臓の筋肉にトラブルがあったりした場合に、心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)が起こることがあります。これらの不整脈は致死性不整脈と呼ばれ、できるだけ速く治療しないと生命の危険が伴うことがあります。心室性の不整脈が持続した場合は、直ちに停止する必要があります。
危険な心室性の不整脈をいち早く感知し、不整脈ととめるような特殊なペーシング(電気刺激)を行なったり、電気的除細動(電気ショック)を行う特殊なペースメーカーを植え込み型除細動器(ICD)といいます。ICDは、ペースメーカーの機能と電気ショックの両方の機能を持ったものですので、基本はペースメーカーと同じ金属製の本体とリードからなります。リードは、電気ショックを出すことのできる特殊なリードを使用します。また、ペースメーカーの本体は電気ショックを出すために大型の電池とコンデンサーが必要になるため、通常のペースメーカーと比較して大きくなります。
心筋梗塞後や心筋症など心臓の筋肉にトラブルが起こった場合、心臓のポンプとしての機能が低下してしまいます。心臓のポンプ機能が低下する原因の1つに、心臓の筋肉の収縮するタイミングがバラバラになって効率的に動けなくなっている状態があります(心室内伝導障害)。
ペースメーカーからの電気刺激を使って、バラバラになった心臓の動きをもう一度整えようとする治療法があり心臓再同期療法(CRT)と呼びます。心臓再同期療法を行う場合は、通常、心室に1本のリードを右心室に挿入しますが、もう1本を冠静脈洞という心臓の血管を通して左心室側に挿入します。この2本のリードから電気刺激を行うことでバラバラになった心臓の動きを再度整えることで、心機能の改善が期待できます。
以前の頻脈性不整脈の治療は、胸を開けて直接心臓の不整脈の原因となる部分に治療を行っていました。これは患者さんにとても大きな負担がかかる大変な治療でした。また、薬による治療もありますが、これは薬によって不整脈を起こりにくくするだけで、根本的に不整脈を治療することはできません。そのため、お薬を継続的に内服してもらう必要がありますが、長期間の内服は副作用も懸念されます。
そこで登場したのがカテーテルを使って治療する技術です(カテーテルアブレーション:カテーテル心筋焼灼術)。この治療法は、カテーテルと呼ばれる直径2㎜程度の管を心臓内に挿入して、不整脈の原因となる電気回路の部分を探しだし、その回路を遮断する治療法です。つまり、カテーテルという道具を用いて電気で動いている心臓の電気工事を行うのです。この治療がうまく行けば不整脈は治る可能性があり、内服薬の中止または減量できることもあります。つまり、薬物治療は不整脈の症状を緩和することを目的とした治療法ですが、カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す治療法です。
・発作性上室性頻拍(房室結節回帰性頻拍、房室回帰性頻拍、心房頻拍、上室性期外収縮)
・心房粗動
・心房細動
・心室頻拍/心室性期外収縮
・心室細動
心室細動以外は、カテーテルアブレーションで治療対象となる主な不整脈です。
この中で一番患者さんが多い不整脈は心房細動です。
心房細動とは、心房(心臓の上の部屋)の中で電気刺激が嵐のようにあちこちで起こり、まるで心房が痙攣したように細かく動く(細動)不整脈です。心房が不規則に興奮するため、左心房内に血の塊(血栓)ができやすく、この血栓が血流に乗って流れ、他の臓器で詰まってしまう(塞栓症:例 脳梗塞など)ことがある怖い不整脈です。この不整脈が起こってしまう原因は、高血圧や糖尿病の他に、年齢も関わっています。超高齢社会を迎える中で、心房細動の患者さんは年々増加しています。心房細動は、脳梗塞や心不全を引き起こす怖い不整脈ですが、近年カテーテルアブレーションの技術の進歩とともに、治すことのできる不整脈の1つとなってきました。
この不整脈が起こる原因は、心臓に繋がっている血管(主に左心房とつながっている肺静脈)と心臓との繋ぎ目からたくさん電気刺激が心臓内に入ってくることで起こります。つまり、この電気刺激が心臓内に入ってこないようにすること(電気的隔離術)で治療を行います。うまく遮断できれば、心房細動が起こらなくなります。
カテーテルアブレーションでは、不整脈の原因となる部分を明らかにし、その部位を確実に遮断することが必要になります。そのため、当医療センターでは、カテーテルで取得した不整脈の情報とカテーテルの正確な位置情報をコンピューター上に表示することができる最新のカテーテルのナビゲーションシステムを用いて、より安全でより確実に治療ができるよう努めています。
頻脈性不整脈は、突然始まる動悸から死に至らしめるものまで様々存在します。このカテーテルアブレーションの登場により、不整脈の種類によっては根治させることができます。また、最新のカテーテルのナビゲーションシステムを使用することで、より安全性や確実性の高い治療を行えるようになってきました。一人でも多くの患者さんが不整脈の苦しみから解放されるように努力していきたいと考えています。
なお、頻脈性不整脈は、様子をみていいもの、薬を使用した方がいいもの、カテーテルで根治が望めるものなど様々です。お心当たりの方はご相談ください。
心房細動をお持ちで、出血リスクの高い患者さんに対してWATCHMAN™というカテーテルをもちいて左心耳閉鎖を行っています。左心耳を閉鎖することで、抗凝固療法を中止することが可能となり、出血リスクの低減が期待出来ます。 |
心臓は、血液を全身に血液を循環させるポンプの働きをしています。心臓には4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があり、それぞれの部屋の出口には、弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)がついており、血液が逆流しないように働いています。
弁膜の病気としては、弁の開きが悪くなる狭窄症と弁の閉じ方が悪くなる閉鎖不全症(逆流症)があり、これらを総称して心臓弁膜症と呼びます。悪くなっている弁の名前に狭窄症、閉鎖不全症をつけると病名となります。弁の働きが悪くなると心臓のポンプとしての効率が落ち、心臓に負担がかかります。心臓がこの負担に耐えられなくなった状態を心不全と呼び、息切れ、呼吸困難、むくみ等の症状が出て、重症の場合は入院治療が必要となります。
弁膜症の症状が軽い場合には心臓の負担を軽減するため、薬物による内科的治療を行いますが、重症となった場合には手術で弁の修復または交換する必要があります。
治療法
●薬物治療
弁膜症の症状が軽い場合は、心臓の負担を取るために血管拡張薬や利尿剤等を用いて薬物治療を行います。薬物治療により病状が安定した後も、弁膜症の状態を観察するために定期的な通院や検査が必要となります。
●外科手術
1.弁置換術
狭窄したり逆流している弁の変性が高度の場合、あるいは細菌が付いた弁(感染性心内膜炎)の場合は、外科手術にて弁置換(弁を取り替える手術)が必要となります。
人工弁について
「機械弁」は、耐久性が高く、一生涯使用できることが特徴です。しかし、機械弁に血栓(血の塊)ができることがあり、人工弁機能不全や脳梗塞などの原因となるため、抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を一生涯内服する必要があります。高齢になると脳出血や消化管出血(胃腸からの出血)などの出血が問題になることがあります。
「生体弁」は、ウシの心臓の膜やブタの弁を加工し、人工弁にしたものです。抗凝固薬は、手術後3ヵ月で中止できます(心房細動など他の病気で必要な場合は、その後も内服していただきます)。手術後10〜15年で人工弁が劣化し、人工弁に逆流や狭窄がおきる可能性があり、再手術が必要になる可能性があります。
2.弁形成術
弁逆流症の場合、心臓の弁の形態によっては弁を取り替えずに、形成術にて修復することで治療できます。自己の弁を修復した場合は、細菌感染や弁の劣化が起こりにくく、人工弁と比べて長持ちします。しかし、弁形成術を行った場合、逆流が残ったり、将来的に逆流が再発した場合には再手術が必要になる可能性があります。
大動脈弁狭窄症とは、炎症性反応、癒着、硬化、石灰化などにより左心室から大動脈に血液を送り出す出口にある大動脈弁が十分に開かなくなる病気です。この病気の患者さんは、運動時の胸の痛み、息切れなどの症状がみられます。重症の大動脈弁狭窄症は、症状出現後、比較的急速に進行することがわかっています。一般的には狭心症状(労作時に胸が痛くなる)が出現すると余命5年、失神が出現すると余命3年、心不全症状が出現すると余命2年とされています。
大動脈弁狭窄症の治療方法
これまでの重症大動脈弁狭窄症に対する標準治療は外科的な大動脈弁置換術でした。薬物治療は大動脈弁狭窄症を根治的に治療することはできません。外科手術のリスクが高い高齢の患者さんを対象に、体への負担を減らして根治的な治療を行えるように開発された治療が、経カテーテル大動脈弁留置術 (TAVI)です。
使用する弁
TAVI弁は、金属でできたフレームの中に生体弁(動物の組織から作った弁)を縫い付けたものです。この生体弁は、カテーテル(細い管)を用いて大腿動脈(足の付け根の動脈)から挿入され、十分に開かなくなった大動脈弁の位置に留置されます。ほとんどの症例では大腿動脈アプローチが選択されますが、足の動脈が極端に小さかったり、動脈硬化が高度で大動脈の屈曲が強く、大腿動脈から挿入するのが困難な場合は、鎖骨下動脈や大動脈からカテーテルを挿入することもあります。
弁膜症の治療方法や、どこから手術をするのが適切なのかの選択は、心臓血管外科・循環器内科を中心としたハートチームで検討し、患者さんの意向も踏まえて決定されます。
ハイブリッド手術室
治療はハイブリッド手術室で施行されます。ハイブリッド手術室とは高性能なX線透視装置と手術寝台を組み合わせた手術室のことです。手術室と心臓カテーテル検査の双方の利点を取り入れておりTAVIを施行するためには必須の設備です。当医療センターでは、2020(令和2)年にハイブリッド手術室が完成し、治療を行っています。
検査から治療までの流れ
当医療センターにTAVI目的にて受診された患者さんは、まず、短期間の検査入院を行い、造影CT検査、超音波検査、心臓カテーテル検査などを行います。検査終了後にTAVIハートチームで方針を検討、患者さん・ご家族とも相談のうえで治療方針を決定します。状態の安定している患者さんは一旦退院となり、改めてTAVI治療の前に入院していただきます。重症で状態が不安定である患者さんは、検査入院に引き続いてTAVI治療を行うこともあります。
僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間に位置する弁で、左心室が大動脈に向けて血液を送り出す際に血液が左心房に逆戻りしないように開閉しています。僧帽弁がうまく閉じなくなり、左心房に血液が逆流する病気が僧帽弁閉鎖不全症です。進行すると息切れや動悸、倦怠感などの自覚症状が出現し、心不全を引き起こします。
僧帽弁閉鎖不全症は外科手術が第1選択ですが、心臓の働きが弱い、ご高齢、他の合併症が多いなどの理由により、手術の危険性が高い患者さんも少なくありません。マイトラクリップというカテーテルを用いた僧帽弁クリップ術は、体に対する負担が少ないため、手術の危険が高い患者さんでも治療可能です。
経皮的僧帽弁クリップ術はカテーテルを用いて僧帽弁の前尖と後尖をつなぎ合わせることにより、僧帽弁の逆流を減少させる治療法です。
治療は全身麻酔下に行われ、経食道心エコー検査で観察しながら手術を進めていきます。足の付け根からカテーテルを挿入し、右心房から心房中隔を通って左心房に進めて行きます。ガイドカテーテルからクリップのついたクリップデリバリーシステムを僧帽弁の適切な位置まで持っていき、クリップを留置します。
逆流が残存している場合は、クリップを置き直すことが可能で、追加のクリップを留置することもできます。クリップを留置し終えたら、足の付け根の止血を行い治療が終了します。通常は術後数日で退院することができます。
肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は、一連の病態であることから、静脈血栓塞栓症(VTE)と総称されます。通称エコノミークラス症候群とも言われ、下肢にできた血栓が遊離し、肺動脈を閉塞すると、状況によっては命に関わる状況にもなります。
肺動脈に血栓(血液のかたまり)が流れて塞栓してしまう病気が、「肺血栓塞栓症」です。急性肺血栓塞栓症は、重症例では死亡することもある循環器救急疾患です。症状は、突然の呼吸困難、胸痛、失神などで発症しますが、症状が軽い場合は、動いた時の息切れで発症することもあります。
血液検査でのDダイマーの上昇、心電図異常や心エコーにて肺塞栓症をうたがい、造影CT検査にて、肺塞栓症を診断することができます。
治療は、抗凝固療法(血液を固まりにくくする薬)に加えて、必要に応じて血栓溶解療法や、カテーテル的肺動脈血栓破砕療法、外科的肺動脈血栓摘除術を施行します。出血のリスクが高い患者さんで抗凝固療法が施行できない場合は、下肢から肺に血栓が飛ばないように下大静脈にフィルターを留置することもあります。
肺血栓塞栓症の原因のほとんどが、下肢の深部静脈に血栓が形成される「深部静脈血栓症」です。
足や腹部の静脈に血栓ができ、詰まってしまう病気です。ふくらはぎや足の表面にある静脈に血の塊ができても、症状は軽微で大きな問題とはなりにくいのですが、下腹部や太もも、膝の裏を走る深部静脈に血の塊ができた場合、下肢が腫れて、痛みがでることがあります。
深部静脈血栓症の原因は、血液の固まりやすい状態(過凝固状態)に加えて、血流が停滞することで血栓ができます。悪性腫瘍の患者さんや、妊婦さん、ステロイドやホルモン剤などの内服をされている患者さんが、長期の安静や臥床することで静脈血栓ができることがあります。特に近年、悪性疾患の増加とともに、がん関連の血栓症(CAT:Cancer Associated Thrombosis)が増加しています。
手術や入院治療での安静も発症の危険を高めます。当医療センターでは、入院時に予防器具やリハビリ、薬物療法など個々の症状に応じた対応で静脈血栓塞栓症の発症予防に努めています。
下肢静脈血栓症は、血液検査や身体所見に加えて、下肢静脈のエコーで診断することができます。
治療は抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を点滴したり、内服することで行います。症状が重篤な患者さんはカテーテルを用いて血栓溶解療法を施行することがあります。
心臓は、1日に約10万回動くことにより、全身の組織に酸素を送るポンプとしての役割を果たしています。心不全とは心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋症、不整脈などの心臓の様々な病気や高血圧などが原因となり、心臓のポンプ機能の調節がうまく行かなくなり、呼吸困難や、浮腫、倦怠感が出現し、患者さんが従来通り動けなくなる状態のことを言います。
心疾患は全体の死因の第2位を占め、心疾患の中で一番多くを占めているのが心不全になります。心不全は一度発症すると入退院を繰り返し、徐々に増悪し、最後には生命にかかわる怖い病気で、ときに突然死すら起こりえます。今後も高齢化社会の進行に伴い心不全患者さんの数は増加すると言われております。
心不全では、心臓が全身に血液を送り出せないことによる低心拍出の症状と、送り出せない血液がからだに溜まるうっ血の症状がみられます。これらの症状は昼夜を問わず急速に出現することがあります。このような<赤信号>と言われている症状が出現した際には直ちに救急対応ができる病院に受診してください。
また、最初は症状が軽くても徐々に悪化することで入院加療が必要となる場合があります。<黄信号>と言われているような症状が出現した場合はあまり我慢をせず早めにかかりつけ医に受診していただくことで入院を防ぐことができる可能性があります。
当医療センターでは救急科・集中治療部と協力して、心臓救急の患者さんに24時間365日対応できる体制を構築しています。
心不全を発症された場合は、急性期の薬物療法や呼吸管理、機械的補助循環療法を行い症状の改善を目標とします。それと同時に心臓の働きを低下させた原因をはっきりさせ、その原因となる病気を治療することが重要となります。
虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)が原因の場合はカテーテル治療やバイパス手術、弁膜症(大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症)が原因の場合は心臓弁膜症手術や経カテーテル大動脈弁置換術、僧帽弁接合不全修復システム、不整脈が原因の場合はカテーテルアブレーションやペースメーカー植え込み術、左脚ブロックなどの心臓同期障害が原因の時は心臓再同期療法(CRT)といった原因に対する治療をハートチームで提案させていただきます。
また、心筋症についても心筋生検、電子顕微鏡検査、心臓MRI検査などを用いて積極的に原因精査を行っています。
そして、全ての心不全患者さんの治療において重要なのが適切な薬物管理と多職種でのチーム医療になります。当医療センターでも心不全ケアチームを作成し、ガイドラインに則った標準的薬物治療を提供するのみならず、自宅での療養の注意点の指導、運動耐用能の評価、栄養指導、薬物指導などの集学的なアプローチを、多職種から行っています。心不全ケアチームは医師、慢性心不全認定看護師、心不全療養指導士、病棟看護師、外来看護師、心臓リハビリテーション指導士、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士など多職種で構成しています。
心不全ケアチームの活動としては週に1回の心不全ラウンド(入院中の患者さんをチームで回診)や月に2回の心不全ケアチームカンファレンスなどがあります。ラウンドやカンファレンスでは綿密な話し合いを行い、それぞれの患者さんに最適な治療方針を相談しています。
入院中や必要な患者さんには外来での心臓リハビリテーションをご提案しています。心臓リハビリテーションとは、心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することを目指して行う総合的活動プログラムのことです。内容として、運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)などを含みます。心不全の安定状態維持のために、心臓リハビリテーションは非常に重要です。現在は週に2日、外来心臓リハビリテーションの日を設けており、心臓リハビリテーション指導士を中心に外来でのリハビリやCPXでの運動耐用能の評価を行っています。また、自宅での疾患管理が難しい患者さんを対象として心不全外来を2024(令和6)年から開始しました。心不全外来では心不全認定看護師と自宅での生活について話し合っていただき、在宅で過ごす上での注意点を指導しています。
緩和ケアというとがんなどの悪性新生物を思い浮かべるかもしれませんが、心不全の領域でも緩和ケアが注目されております。日本心不全学会でもHEPT(Heart failure Palliative care Training program for comprehensive care provider)という緩和ケアについて学ぶプログラムがあります。
心不全では入院を繰り返すことで精神的に落ち込んでしまうこともありますし、治療抵抗性になることで息苦しさが続くことがあります。このような場合には、心不全を良くするための治療に追加して症状緩和のための緩和ケアを行っています。緩和ケアの研修を受けた循環器内科医師や慢性心不全認定看護師、心不全療養指導士で話し合い、また、必要時には当医療センター緩和ケアチームにも相談しながら症状緩和に努めています。
当医療センターに入院される心不全患者さんは半数以上の方が80歳を超えており、高齢夫婦で生活されている場合や一人で生活されている場合もあります。心不全を発症されると元気な時に比べて動くことがしんどくなり、今までのように生活することが難しくなることも多いです。必要に応じて介護申請の提案したり、訪問看護やケアマネージャーの導入をしています。また、<黄信号>の場合は、かかりつけ医の先生に受診いただくように説明させていただいており、急性期病院である当医療センターとかかりつけ医の先生、訪問看護師さん、ケアマネージャーさんで連携をとりながら診療を行っています。和歌山市では和歌山心不全連携の会を発足しており、当医療センターも一員として参加しています。連携の会では、開業医の先生や訪問看護師さん、ケアマネージャーさんと勉強会や意見交換会を行うことで、知識の共有や連携を行っています。
また、当医療センターでは入院を繰り返すような在宅での管理に難渋する患者さんにはバイタルリンクというシステムを導入し、在宅での患者さんの様子を密に連携することで心不全の増悪を防ぐための試みを行っています。
心不全相談窓口も2024(令和6)年から開設し、外来を予約外受診する必要があるかどうかも含めて、メールやバイタルリンクのシステムから連絡していただくことで医師だけでなく、看護師を含めて多職種で地域からの相談を受ける試みも行っています。
肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管である“肺動脈”の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなると、心臓に負担がかかり、息切れやだるさ、足のむくみ、失神、喀血といった症状が出るようになります。肺高血圧症は右心カテーテル検査を行い平均肺動脈圧が25㎜Hg以上と定義されています。
肺動脈圧の上昇が持続すると、肺動脈の壁自体に高い圧がかかり続けることで、肺動脈が傷み、さらに肺動脈が狭くなったり、硬くなったりして、肺動脈圧がさらに高くなるという悪循環に陥ります。
肺高血圧になると、動いたときに息切れがする、疲れやすい、胸痛や動悸がするなどの症状があらわれます。肺高血圧が進行し右心室が拡張して働きが悪くなると、右心不全、中心静脈圧が上昇して全身のうっ血が起こります。その結果、顔面や下肢のむくみが生じたり、肝臓機能が悪化したり、食欲低下になることもあります。
肺高血圧症の原因、病態は多岐にわたり、現在、大きく5群に分類されています。分類によって治療内容が異なります。
肺動脈性肺高血圧症
特発性(原因不明)、遺伝性、膠原病、先天性心疾患等に関連し発症する肺動脈の異常に伴い肺動脈圧が上昇します。早期発見が難しく、比較的若い人に発症し、重症例では十分な治療がなされないと予後不良の難病であり、厚生労働省の指定難病に指定されています。近年多くの経口薬剤の開発により、治療成績が大幅に向上しています。
左心疾患に伴う肺高血圧症
左心疾患に伴う肺高血圧症で左心疾患の原因となる弁膜症や心筋症などを特定し、原因疾患の治療を優先して行います。
肺疾患・低酸素血症に伴う肺高血圧症
呼吸器疾患に伴う肺高血圧症で慢性閉塞性肺疾患や間質性肺疾患などが原因となります。原則、肺疾患の治療が優先されます。
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH:chronic thromboembolic pulmonary hypertension)
慢性血栓塞栓性肺高血圧症とは、器質化した血栓により肺動脈が閉塞、または狭窄することで、肺高血圧症になる疾患です。CTEPHを発症しやすい疾患としては、急性肺塞栓症、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の既往、血液凝固異常、骨盤内手術、悪性腫瘍などがあります。
原因不明・多因子のよる肺高血圧症
血液疾患、全身性疾患、代謝性疾患、肝硬変などに伴う肺高血圧症になります。原則、基礎疾患の治療が優先されます。
肺高血圧症を疑った場合は、以下の検査を行います。
血液検査・血液ガス分析
血液検査で血液凝固能の状態や、心臓に対する負荷の程度を評価します。また、動脈血液ガスを採取することで低酸素血症の程度を検査します。
心臓超音波検査
心臓の機能の評価と、肺高血圧、右心室への負荷の程度を、心臓超音波検査(エコー検査)にて、評価します。
胸部X線、CT検査
胸部X線やCT検査で心拡大(心臓の大きさ)の程度や、合併する肺疾患がないか評価します。
上記検査で肺高血圧症が疑われれば、さらに以下の詳しい検査を行います。
肺血流シンチグラム
慢性血栓塞栓性肺高血圧症では、肺血流シンチグラムではくさび状の欠損を認めます。
造影CT検査
肺動脈の造影CT検査により、肺動脈内の血栓の有無を確認します。
右心カテーテル検査・肺動脈造影検査
肺動脈内に直接カテーテルを挿入して肺動脈圧を実測します。
また、選択的に肺動脈造影をすることで、末梢に存在する器質化血栓の有無を確認します。
在宅酸素療法
ご自宅や外出先などで酸素を吸入することで、血中の酸素不足を改善し、肺高血圧症を予防します。自宅では酸素濃縮器を使用し、外出時はボンベを使用して酸素投与を行うことで、呼吸困難の症状を緩和します。
薬物療法(肺血管拡張薬)
以前は重症の肺高血圧症に対しても酸素投与や肺血管拡張薬の持続静注療法など治療法が限られており、肺動脈圧が高いほど予後不良とされてきましたが、近年は多くの薬剤が使用可能となり、薬物療法の治療成績も向上しています。
エンドセリン受容体拮抗薬:
マシテンタン
アンブリセンタン
ボセンタン
血管で産生されるエンドセリンという物質は強力な血管収縮作用を示します。このお薬はエンドセリンの働きを妨げることで肺の血管を拡げます。
ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬:
タダラフィル
シルデナフィル
PDE5と呼ばれる酵素は、血管拡張物質であるサイクリックGMPを分解する働きがあります。PDE5阻害薬は、肺の血管に多く存在するPDE5の働きを妨げることで血管を拡げます。
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬:
リオシグアト
グアニル酸シクラーゼはサイクリックGMPを産生する酵素です。このお薬はグアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMPの産生を増やして肺の血管を拡げます。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療にも用いられます。
プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬:
セレキシパグ
血管拡張物質であるプロスタサイクリンと違う構造でありながら、プロスタサイクリンと同様の作用で肺の血管を広げる経口のお薬です。段階的に投与量を上げていき、患者さんごとの適量で治療を継続します。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療にも用いられます。
プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤:
イロプロスト
吸入薬で肺に直接届けられます。1日複数回に分けて吸入します。
・薬物療法
・血栓内膜摘除術
・経皮的肺動脈形成術
血栓内膜摘除術(PEA)
肺動脈中枢部に血栓を有する慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対しては、超低体温循環停止下に肺動脈から器質化した血栓および内膜を摘除します。
経皮的肺動脈形成術(BPA:balloon pulmonary angioplasty)
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の肺動脈血栓は器質化し肺動脈壁に固く付着しており血栓溶解療法は無効で、中枢型の器質化血栓には、手術による肺動脈血栓内膜摘除術が適応となります。しかし、非常に細い血管で狭窄・閉塞が起こる末梢型の病変に対しては、肺動脈血栓内膜摘除術は行えず、血管拡張薬での内科的治療も期待されるような予後改善が得られていません。
バルーン肺動脈形成術(BPA)は、器質化血栓により狭小化した肺動脈を、わずかでも拡張すれば肺動脈圧の低下が期待できるという発想のもと開発されました。BPAにて平均肺動脈圧が低下し、運動耐用能が改善することが報告されています。
新専門医制度に対応した循環器内科 専攻医(後期臨床研修医)研修を行っています。当医療センターでは、循環器subspecialtyを中心とした内科プログラムを組んでいます。
循環器内科では、卒後3年目より心臓超音波検査、経食道エコー、心臓カテーテル検査で実際に術者として参加してもらい、PCI、EVT、アブレーションには助手として参加してもらいます。4年目からは、PCIやEVT、ペースメーカー植え込み術にも術者として参加していただき早期の手技取得をめざしています。
また、当医療センターには毎日のように、心不全や急性心筋梗塞、大動脈解離とった緊急症例患者さんがERを通じて入院しており、急性心筋梗塞は年間150例前後搬送されてくるため、5年目終了までには、多数の症例を経験できます。また、最新のハイブリッド手術室を備えており、大動脈ステントグラフトやTAVI、マイトラクリップ等のSHDも経験できます。2024(令和6)年からは左心耳閉鎖も開始予定です。
専攻医の先生方には、外来からの予定入院や緊急入院症例を合わせて、10名前後の患者さんを担当いただいています。それぞれの症例に指導医がつき、各個人に症例数が偏らないよう、担当医を調整しています。
また、学会発表を奨励しており、日本循環器学会や心血管インターベンション治療学会、心エコー図学会、心不全学会などで多数の演題を発表しています。
内科専門医研修では、他施設での研修が義務づけられており、神戸市立医療センター中央市民病院や、兵庫県立尼崎総合医療センター、国立循環器病センター等の連携施設で、外部研修も可能です。
当医療センターでは、専攻医の先生方がお互いに切磋琢磨しながら、日々診療に当たっています。循環器内科では、早期に専門知識・診療技術を獲得できるよう、充実したプログラムと、豊富な症例を準備して、若い先生方をお待ちしています。当科での研修の希望や見学を希望される初期研修医・医学生は、気軽にご連絡ください。
専攻医(後期臨床研修医)(卒後5年目)終了時の到達目標
・循環器疾患の治療方針を立案できる。ICUでの重症患者の管理ができる。
・循環器救急疾患の初期診療ができる。
・慢性心不全の管理を行い、退院時調整ができる。
・弁膜症や大動脈疾患の侵襲的治療の適応が判断できる。
・心エコー検査 経食道エコー検査を独立して施行できる。
・カンファレンスでの発表→学会で筆頭演者として発表する。
・症例報告や臨床研究論文を筆頭著者として執筆する。
・コメディカルとの連携、チームリーダーとして活躍する。
・心臓カテーテル検査(右心カテーテル CAG 心筋生検)を独立して施行できる。
・シンプルなPCIやEVTを指導医の監督のもと主術者として施行できる。
・ComplexなPCI/EVTの助手が滞りなくできる。
・新規ペースメーカー移植術を指導医の監督のもと主術者として施行できる。
・アブレーション、ステントグラフト、TAVIの助手ができる。
実際に当医療センターで専攻医(後期臨床研修医)研修を行った、あるいは現在行っている先輩医師からのメッセージです。
木村 友哉
滋賀医科大学を卒業後、宇治徳洲会病院で初期研修を修了したのち、後期研修から当医療センター循環器内科にお世話になり、現在もスタッフとして勤務しております。なんと言っても、当科の魅力はアットホームな雰囲気と豊富かつ多彩な症例にあると思います。common diseaseから希少な症例まで上級医の先生からのフィードバックを受けながら、日々勉強することができます。虚血性心疾患から弁膜症、不整脈、心不全、大動脈疾患、末梢血管疾患に至るまで、様々な疾患を通して循環器内科医としての総合力が身につけられる環境にあり、もちろん早い段階から手技や治療に携わることが可能です。学会参加や発表にも積極的に取り組んでおり、最新の知識をアップデートする機会も豊富にあります。また、他の診療科も充実していますので、内科専門医の資格取得についてもスムーズに進めることができます。
昨今では避けて通れない”働き方改革”についても、できる限りメリハリをつけた研修・勤務ができるよう科全体で意見を交えて、働きやすい職場づくりに取り組んでいます。
後期研修医時代から切磋琢磨している同期が2人いますが、専攻医が終わってもここで働きたいと、皆が引き続きスタッフとして勤務しているところが、当医療センターの魅力を現していると思います。
循環器内科に興味のある初期研修や学生の先生、循環器の専攻を考えているけれども進路で悩まれている先生は、是非、1度和歌山日赤に見学に来てください。かならず充実した研修ができると思いますよ!お待ちしています。
柴森 裕一郎
2017(平成29)年に近畿大学を卒業後は、市中病院1年・大学病院1年の2年間の初期研修を終了し、日本赤十字社和歌山医療センターで後期研修医として勤務を開始しました。
もともと循環器・救急領域に興味があり、初期研修医時代の2年間で多くの科をローテーションしましたが、最もやりがいが感じられたため、循環器内科を選びました。後期研修先としては、救急応需数も多く、症例が豊富なため、当医療センターを選びました。虚血性心疾患・末梢血管疾患のカテーテルを中心として、心不全や大動脈疾患など、幅広い領域を経験することができています。豊富な症例を経験されたい方は、当医療センターでの研修はいかがでしょうか。みなさんと一緒に働けることを楽しみにしております。
末永 明啓
2019(平成31)年に京都大学を卒業し、初期研修2年間を当医療センターで過ごした後、循環器内科後期研修1年目として1年間研修させていただきました。
もともと急性期の治療で、患者さんの症状が劇的に改善する様子を魅力的に感じて循環器内科に興味を持つようになり、初期研修2年目で当循環器内科を選択期間でローテートした際に、基礎的なことから丁寧に教えていただきました。教育体制もしっかりした上に、救急患者さんなどで幅広く多くの症例を経験できること・様々なカテーテル治療(PCI・EVT・Ablation・TAVI・ステントグラフトなど)を行っていることなどから、ここでの後期研修を選択いたしました。後期研修中に当直も行うようになりましたが、深夜困った時にOnCallの上級医に相談する度、優しく助けていただきました。臨床だけでなく、学会発表などについても手厚い指導をしていただきました。
内科専門医プログラムにより、和歌山から移動することとなりましたが、ここでの研修が非常に実りのあるものだと感じています。積極的に様々なことを経験し学びたいという方には、おすすめな環境だと思います。
根岸 佑典
循環器内科後期研修の1年目を日赤和歌山医療センターで研修させていただきました。私は、もともと学生実習中より循環器内科に興味がありました。時には目の前で患者さんが亡くなってしまう場面、循環器内科の先生が迅速な診断と治療を行っていく様子を目の当たりにし、自分も循環器内科を志すようになりました。
循環器内科医になろうと決めた時に、どの病院で研修しようか悩みました。卒業した大学の医局に入局するか、それとも市中病院で働くか、考えた際に、初期研修でお世話になった日赤和歌山医療センターの循環器内科がまず思い浮かびました。症例が多く、緊急症例を常時受け入れており、かつ幅広い疾患に関する手技ができるという点で私の理想とする病院でありました。実際に後期研修を始め、緊急症例が昼夜を問わず搬送・入院され、予定入院も心不全・虚血性心疾患・不整脈・弁膜症と多岐に渡る疾患を幅広く学ぶことができました。また、指導医の先生方は熱心かつ面倒見の良い先生方ばかりで、困った際には夜間でも相談できる体制が整っていたのは大変助かりました。また、学会発表なども積極的に参加させていただいたり、時には人生相談にも乗っていただいたりと、仕事だけでなくプライベートも大変充実したものとなりました。
医師としても勿論、人としても成長できる、日赤和歌山医療センターで是非働いてみませんか? 自信を持ってお勧めさせていただきます。是非、よろしくお願いします!
吉田 昭典
日赤和歌山医療センターで初期研修を行い、2年次に4ヵ月間、循環器内科を研修させていただきました。その際、上級医が優しく丁寧に指導してくださったことや症例数の多さ等から、後期研修先としてこの病院を選びました。
実際の勤務ですが、緊急から予定入院まで症例を上級医とペアで担当し、治療方針について相談しながら、日々の診療や手技を行います。また、早い段階からカテーテルを実際に触らせていただき、後期研修の2年目からPCIも経験させていただきました。命に関わる状態の患者さんが劇的に改善し、退院されていく姿をみてやりがいを感じています。日赤和歌山医療センターでの研修はとても充実しているので、是非、後期研修先として選んでください。
畑村 美諭
2020(令和2)年に近畿大学を卒業後、初期研修医から日本赤十字社和歌山医療センターで研修し、その後、後期研修医も同院の循環器内科で引き続き研修をさせていただいてます。当医療センターは規模の大きい市中病院であり、虚血性心疾患・心不全を始め、不整脈・弁膜症・心筋症・大動脈疾患等様々な分野の症例を経験することができます。手技に関しても上級医の丁寧な指導の下、後期研修1年目から多くの手技を経験させていただいてます。また、上級医の先生方はみなさんとても優しく、朗らかな先生ばかりで、治療方針で困った際にはいつでも相談できますし、夜間当直中に救急対応等で判断に迷った際にも気軽に相談することができ、非常に恵まれた環境だなと日々実感しています。みなさんと一緒に働ける日を楽しみにしております。
坂本 涼
2020(令和2)年に大学卒業後、京都大学医学部附属病院および当医療センターにて初期研修を修了し、現在当医療センターのプログラムにて後期研修をさせていただいてます。
当医療センターでは冠疾患、心不全・弁膜症・心筋症・大動脈疾患・末梢血管疾患・不整脈・肺高血圧症等の多岐にわたる疾患を経験できます。また、救急診療も盛んに行っているため、多くの救急症例を自分が主となって経験することができます。そのため後期研修では、循環器内科領域全般を幅広く経験できる施設で研修したいと考えていた私にとって、後期研修させていただけて良かったと考えています。また、上級医の先生方も相談しやすい方ばかりで判断に迷った際にも気軽に相談でき、日々助けていただきながら診療にあたることができています。手技に関してもCAGやPCI・アブレーション・ステントグラフト・経カテーテル的弁膜症治療など盛んに行われており、上級医の指導の下、後期研修1年目から手技に触れることができているのも、とても良い経験となっています。
まだまだ未熟で日々勉強に励んでいるところですが、皆さんとともに切磋琢磨し、互いにとって良い刺激になればと思っていますので、ぜひ一緒に働き、一人でも多くの人を助けていきましょう。