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腎臓内科


特色

腎機能障害は、短期間で生じた腎機能低下である「急性腎障害」と慢性的に腎臓が悪い状態・蛋白尿が出続ける「慢性腎臓病」、さらには腎機能低下が著しく低下し“腎代替療法(腎移植・透析)”を要する「末期腎不全」の3つに大別されます。加齢とともに腎機能は低下するため、日本では約1,480万人の「慢性腎臓病」の患者さんがいると推計され、「慢性腎臓病」は国民病と捉えられています。

当医療センターは、それぞれのステージに応じて適切な診断・治療を行う機能を有し、切れ目なく包括的な腎機能障害の診療を行います。腎機能障害は、期間・障害の程度に応じて3種類に大別されますが、原因は多岐にわたります。腎炎・ネフローゼ症候群をはじめとする腎疾患、糖尿病・高血圧を原因とする生活習慣病や薬剤・他の疾患などの腎疾患以外が原因となる二次性のものがあります。原因・疾患によって治療方法が全く異なるため、症例に応じて腎生検で診断を確定し、適切な腎機能障害の治療を行うよう努めています。

残念ながら「急性腎障害」の治療後に腎機能障害が残存してしまうこともあり、その場合も「慢性腎臓病」として腎機能障害を抱えたまま生活していくことになります。「慢性腎臓病」の場合、外来での内科的治療に加えて栄養指導によって患者さんご自身で食事療法などを実施していただくことで、腎臓の寿命を延ばすこと、可能であれば、腎代替療法(腎移植・透析)の回避を目指しています。

これらの治療でも腎機能障害が進行し“腎代替療法(腎移植・透析)”が必要な「末期腎不全」に至る場合、血液透析・腹膜透析・腎移植の中で最も患者さんにあった治療法を選択していただけるよう、療法選択外来で患者さんやそのご家族、医師・看護師などで話し合いながらサポートいたします。当医療センターでは“腎代替療法”すべての導入・維持を行います(当科では腎移植の内科的管理を行います)ので、患者さんにとって最大限の選択肢を提示できます。「末期腎不全」では、選択した“腎代替療法”によって今後の生活スタイルが全く異なるため、すべての腎代替療法に習熟したスタッフと相談しながら、より良い治療法を選んでいただいています。

維持透析患者さんのシャントトラブルの治療や、腎臓内科以外の診療科で入院中の患者さんの入院透析管理なども、当科で施行しています。

なお「急性腎障害」や「末期腎不全」で行う緊急血液透析の以外にも、症例によっては血漿交換療法・顆粒球吸着療法・末梢血幹細胞採取・腹水濾過濃縮再静注療法などの特殊体外循環療法も当科で行っています。

現状

日本腎臓学会認定研修施設
日本透析医学会専門医制度認定施設

血液浄化センターは、南館の4階にあり、窓が多く明るい透析室です。
また、特別療養環境室(個室)が3室あります。ご利用を希望される方は1回2,200円(税込)でご用意できますので、スタッフまでお問い合わせください。

沿革

1978(昭和53)年7月

血液透析開始。 
この間血液透析以外にも既に血漿交換療法も施行していた。

1980(昭和55)年2月 腎不全外来を他科とは独立して開始。
1985(昭和60)年4月 CAPD療法開始。
2006(平成18)年9月 腎臓内科部と名称変更。 現在に至る。

診療内容

腎臓内科
腎移植外来
現在患者数 約70名
CAPD外来
現在患者数 約40名(ハイブリッド含む)
療法選択外来
各種血液浄化(ベッド数32床)
HD 外来維持透析 患者数 約70名
午前・午後の2クール
LDL吸着  
PP(PA) 血漿吸着
PE 血漿交換
DFPP 二重濾過血漿交換
DHP 直接血液灌流
CART 腹水濾過濃縮再静注
PBSCH(末梢血幹細胞採取)
療養生活の支援
慢性腎不全の病態、食事療法、薬物療法、日常生活の送り方 、血液透析などの説明を医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、管理栄養士が行っています。

現在、血液浄化療法と共に、蛋白尿から腎移植まで腎疾患に対する一貫した治療を施行しています。 また、患者さんが快適に透析を行える環境づくりを心がけています。 安全な透析を行うために、感染対策、透析技術、透析看護、透析液清浄化、機械の保守管理を推進しています。

スタッフ紹介

医師

中 大輔 (なか だいすけ)

役職 副院長 部長(兼)
卒業年 1989(平成元)年
専門分野 脳卒中、頭部外傷、災害医療
資格 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
日本脳卒中学会脳卒中専門医
日本脳神経外傷学会専門医・指導医
日本社会医学会指導医
その他 医学博士
日本DMAT隊員(統括DMAT)
和歌山県統括災害医療コーディネーター
日本赤十字社災害医療コーディネーター
関連するページ  「公開講座(赤十字県民大学)」令和5年度動画

杉谷 盛太 (すぎたに せいた)

役職 副部長
卒業年 2007(平成19)年
専門分野 腎臓一般
資格 日本腎臓学会腎臓専門医
日本透析医学会透析専門医
日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本移植学会移植認定医
日本抗加齢医学会専門医

小緑 翔太 (こみどり しょうた)

役職 副部長
卒業年 2012(平成24)年
専門分野 腎臓一般
資格 日本内科学会認定内科医 
日本腎臓学会腎臓専門医

嘉藤 光歩 (かとう みつほ)

役職 医長
卒業年 2013(平成25)年
専門分野 腎臓一般
資格 日本内科学会認定内科医 
日本透析医学会透析専門医

大森 翔平 (おおもり しょうへい)

役職 医師
卒業年 2016(平成28)年
専門分野 腎臓一般
資格 日本専門医機構内科専門医
日本透析医学会透析専門医・VA血管内治療認定医
日本透析アクセス医学会VA血管内治療認定医
透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会VAIVT血管内治療医
日本腎代替療法医療専門職推進協会認定腎代替療法専門指導士

児玉 健志 (こだま けんじ)

役職 医師
卒業年 2018(平成30)年
専門分野 腎臓一般
資格 日本専門医機構内科専門医

山崎 瑞歩 (やまざき みずほ)

 
役職 医師
卒業年 2018(平成30)年
専門分野 腎臓一般
資格  

宮澤 秋馬 (みやざわ しゅうま)

役職 医師
卒業年 2021(令和3)
専門分野 腎臓一般
資格  

玉置 栞名 (たまき かんな)

役職 医師
卒業年 2022(令和4)
専門分野 腎臓一般
資格  

東 義人 (ひがし よしひと)

役職 嘱託
卒業年 1988(昭和63)年
専門分野 慢性糸球体腎炎
ネフローゼ症候群
透析導入
腎病理
資格 日本内科学会指導医
日本腎臓学会腎臓専門医
日本透析医学会透析専門医・指導医
日本移植学会移植認定医
日本人間ドック学会認定医・専門医
その他 日本医師会認定産業医
関連するページ 日赤和歌山情報局Hot "すこやかな毎日のために"
多様な診療の選択と継続をバックアップ(2020年6月25日公開) 
「公開講座(赤十字県民大学)」令和5年度動画
健診結果を受け取ったら 
 

前沢 浩司 (まえざわ こうじ)

役職 嘱託
卒業年 1998(平成10)年
専門分野  
資格 日本外科学会外科専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本透析医学会透析専門医
日本プライマリ・ケア連合学会認定医
日本移植学会移植認定医

その他

看護師・看護助手

13名

臨床工学技士

7名


外来担当医表

場所

本館3階(3A)

受付時間

新患:8時〜11時30分
再来:8時〜11時30分

区分 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
AB
CD
嘉藤 嘉藤 杉谷 前沢 杉谷
宮澤 児玉 小緑 小緑 大森
山崎 - - 玉置 -
C - - - -

(2024年11月1日~)

 

※区分
(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。
※赤字の名前は女性医師です

外来担当医表(専門外来)

専門外来 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
CAPD外来
(完全予約制)
担当医 担当医 担当医 担当医 担当医
腎移植外来
(予約制)
- - - 前沢
療法選択外来
(完全予約制)
担当医 担当医 担当医 担当医 担当医
シャント外来
(予約制)
担当医  担当医 担当医  担当医  担当医 

(2024年4月1日~)

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診療実績

令和5年度(2023.4~2024.3)

常勤医師数 6
専属レジデント数 2
1日平均外来患者数 57.7
 腎生検 83
シャントPTA  294
内シャント設置術 93
腹膜透析カテーテル留置術および関連手術 17
腎移植 7
血液透析導入 113
腹膜透析導入 9

患者さんへ

当科ではかかりつけ医の先生方からご紹介いただいた方を中心に「ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、腎不全」などの内科的腎疾患を扱っています。
学校や会社の検診で蛋白尿や血尿などの異常尿所見が指摘された場合は、まず、かかりつけ医の先生にご相談ください。かかりつけ医の先生により詳しい検査が必要と判断された場合は、紹介状をお持ちの上、当科におこしください。

腎臓という臓器は大部分の機能を失わない限り、自覚症状を呈することが少なく、吐き気やだるさ、足のむくみなどの症状がでたときは、腎臓の障害が進んでいることが多いです。現在の医療では腎臓病がある程度進行した場合、失った腎臓の働き(腎機能)をもとのように回復させることはできません。そのため、早期発見が重要な臓器の1つであり、早期の治療によって腎機能低下の進行速度を可能な限りゆるやかにすることが1つの治療目標となります。なお、腎機能障害の早期発見のヒントとして最も重要なのは尿検査の異常であり、学校や職場での検診で見つかれば手がかりとなります。

また、腎機能を客観的に評価する1つの指標として血液の「クレアチニン」と「推定糸球体濾過量(eGFR)」が目安となります。
尿の異常に加えて血液検査で腎機能の顕著な低下を認める場合は、原因が腎臓本体にあるのかどうか、精密検査を行います。
 
将来的に「腎代替療法(血液・腹膜透析や腎移植)」を必要とするような腎臓の病気が疑われる場合、「腎生検」という腎臓の組織評価をお勧めします(腎生検には2~3日の入院を要します)。腎生検で病気の診断が早期に行えれば、原因によっては治療で腎機能低下の進行を抑えることも可能です。

腎疾患は多岐にわたります。少しでも長く腎機能を保持し腎代替療法を回避できるよう、食事指導・薬物療法などを用いて多面的に治療を行います。
腎機能障害が進行し、腎代替療法が必要となった場合もスムーズに移行できるようサポートします。

多様な診療の選択と継続をバックアップ


地域の先生方へ

地域医療との関連においては平成27(2015)年度から、CKD連携パスを開始することで、慢性腎臓病患者の疾病管理を相互にシームレスにて行い、腎不全進行の緩徐化、透析導入での緊急性の阻止を目指しています。
① 尿蛋白/Cr>0.50g/gCrまたは2+以上 
② 蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)
③ GFR50ml/min/1.73m2未満
  40歳未満の若者でGFR60ml/min/1.73m2 腎機能の安定した70歳以上ではGFR<40ml/min/1.73m2
でご紹介いただけますと幸甚です。
原因精査を行った上で地域連携クリニカルパスを通し、2人の主治医として、患者さんの治療に当たらせていただきます。慢性腎臓病はステージが進むにつれて脳血管・心血管系などの血管系の合併症などが多くなります。合併症が見られた際は、透析の有無にかかわらず他科と連携し治療を行います。また、血液内科からの末梢血幹細胞採取や血漿交換、救急部からの緊急透析の依頼にも対応しています。
また、泌尿器科との連携では腎移植を推進しており、腎移植外来も担当しています。


対象疾患

  • 慢性腎炎
  • ネフローゼ症候群
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 電解質異常
  • 遺伝性腎疾患(ADPKDなど)

主な検査・治療・手術

  • 末期腎不全に対する腎代替療法
    ・ 血液透析
    (内シャント造設、シャント狭窄・閉塞時の経皮的血管拡張術)、長期留置用カテーテル挿入術
    ・持続携行式腹膜透析増設(CAPD)
    (CAPDカテーテル挿入術)、抜去術、出口部変更術など
    ・生体腎移植および献腎移植
  • 特殊血液浄化療法
    ・血漿交換
    ・持続的血液透析
    ・持続的血液ろ過透析
    ・二重濾過血漿交換
    ・LDLアフェレーシス
    ・幹細胞採取など
  • 腎生検

疾患・治療

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)

当科では、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の診断・治療を行っています。この疾患は、遺伝子がかかわる病気であり家族歴も重要ですが、検診や人間ドックの画像検査(腹部CTや腹部エコー)等で偶然に見つかるケースも多いです。気になる方は、かかりつけ医の先生と相談し、当科を受診ください。

病態について

両側の腎臓に嚢胞ができ、年齢とともに増えて大きくなっていく遺伝性の病気です。嚢胞が増えて大きくなると、腎機能が低下していきます。 また、合併症として腎臓以外の臓器にも嚢胞が生じます。

進行すると…

ADPKDは、生まれたときから少しずつ腎臓に嚢胞を作っていきますが、30〜40歳代まではほとんど症状がないといわれています。
腎臓は背中側の腰のあたりに左右1個ずつあり、通常の大きさは握りこぶし大ほど(約150g)です。嚢胞が増えて大きくなると、腎臓の大きさは数倍になり、正常な腎臓の組織が圧迫され、腎機能が低下していきます。

ADPKD患者さんの約半数が、60歳までに腎代替療法として透析療法が必要な末期腎不全になります。ただし、腎機能低下のスピードは個人差が大きく、中には生涯、腎機能が保たれる患者さんもいます。

また、腎臓の他に肝臓にも嚢胞(肝嚢胞)ができることがあり、嚢胞の感染や疼痛、腹部膨満などの一因となります。
嚢胞以外にも、高血圧、心臓弁膜症、脳動脈瘤などの合併症が見られることもあります。

治療

腎機能を悪化させないことが何よりも重要です。腎機能の悪化を防ぐには血圧を低下させる降圧療法が有効です。飲水や食事管理も進行の抑制に役立ちます。生活習慣を改善しても、血圧がコントロールできない場合は、降圧剤を処方することもあります。

また、病気の進行抑制のための薬物療法も行っています。
以前は、高血圧や腎不全に対する対症療法しかありませんでしたが、2014(平成26)年3月に心不全や肝硬変に対して使用されていたV2-受容体拮抗剤が、腎臓の嚢胞の増大や腎機能の低下を抑える効果があることがわかり、ADPKDに対しても処方可能となりました。ただし、ADPKD患者さんの全例に使用できるわけではなく、治療開始時には入院治療が必要となります。

※ADPKDに対してどの医療機関でもV2-受容体拮抗剤を処方できる訳ではありません。疾患についても薬についても十分な知識った登録医のみが処方することができます(当科には複数名の登録医がいます)。