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乳腺外科


紀州ピンクリボン乳がん市民公開講座(10月1日~10月31日公開)

動画視聴の際は、インターネットの接続を安定させるため、Wi-Fiや有線LANの接続をご確認ください。

オープニング
00:40~ 「日本の乳がん 最近の動向」
      宮坂 美和子(和歌山県立医科大学 外科学第一講座 )
12:54~ 「乳がんの診断 マンモグラフィ・超音波」
      山中 亜希(日赤和歌山医療センター 乳腺外科部)
25:27~ 「乳がんの診断 MRI、CTなど」
      島 あや(和歌山県立医科大学 外科学第一講座)
32:30~ 「乳がん -診断を治療にどう活かすか-」
      松谷 泰男(日赤和歌山医療センター 乳腺外科部)
エンディング

特色

2009(平成21)年4月、外科部に乳腺疾患を専門に扱う「乳腺外来」として設立。2011(平成23)年4月に、乳がんの診断・治療をより専門的かつ迅速に行うために乳腺外科部として独立しました。

乳がんは年々増加の傾向にあり、現在では女性に発生するがんのトップとなっています。また、社会全体として乳がんへの関心もさまざまな活動を通じて高まっています。 乳がん診療は急速に発展しています。診断技術や治療方法は年々改善され、全体の治療成績も格段によくなりました。

一人ひとりの性格が異なるように、乳がんの性質も一人ひとりで異なります。したがって、乳がんに対して画一的な治療は適切とはいえず、個々の乳がんに適した診断や治療を行わなければなりません。我々は、それぞれの乳がん患者さんに最適な診断ならびに治療を提供することを常に心がけています。


乳腺疾患のトータル・ケアの提供

乳がんは年々増加傾向を示し、今では女性のライフサイクル病と考えられるようになってきています。そのため、当医療センターでは、乳がん検診をはじめ、乳腺症や線維腺腫などの良性疾患、乳がん、乳がんの再発を含めた乳腺疾患のトータル・ケアの提供を行っています。

乳がん検診希望の方や良性疾患で治療を必要としない経過観察のみの方は、健康管理センターの乳がん検診※1でマンモグラフィ検査・乳腺超音波検査を行い、乳がんの早期発見に努めていただきます。検診でのマンモグラフィ読影は、検診マンモグラフィ読影認定医による二重読影を行って診断精度を高く保っています。検診結果より精密検査が必要と判断した場合は、乳腺外科部でより高度な診断・治療を迅速におこなっています。乳腺外科部での再検査で異常がなかった場合や良性疾患で経過観察のみなどの場合は健康管理センターで引き続き乳がんの早期発見のため乳がん検診を定期的に行っていただきます。また、日赤和歌山医療連携ネットワークに参加していただいている地域の乳がん検診連携施設※2とも密に連携をしています。

このような体制で乳がんの早期発見から早期治療を目指しています。

  • ※1 健康管理センターでの乳がん検診をご希望の方は、電話でご予約ください。
    TEL:0120-991-376(平日 午前9時~午後5時)
  • ※2 和歌山市の日赤和歌山医療連携ネットワークの地域乳がん検診連携施設です。

一人ひとりに最適な医療の提供(個別化医療)

一人ひとりの性格が異なるように、乳がんの性質も一人ひとりで異なります。その一人ひとりに最適な医療の提供を心がけています。

針生検やマンモトーム生検などで病理組織を採取し乳がんかどうかを診断するだけでなく、乳がんであればどのような性質なのかを当医療センターの病理診断専門医が詳細に調べてます。その結果に基づいて一人ひとりに最適な治療戦略を立てます。手術を先に行うこともあれば、薬物療法を先に行うこともあります。薬物療法の中で化学療法を行う場合や内分泌療法を行う場合などさまざまです。下に図示したような当医療センターでの治療アルゴリズムを参考に、個々に適した治療を行うことを心掛けています。

複数の専門家による診断・治療・看護(集学的医療・チーム医療)

「乳腺疾患のトータル・ケアの提供」、「負担の少ない医療の提供」、「一人ひとりに最適な医療の提供」を実施するには、乳腺外科部のみで行うことは十分と言えません。そのため一人の患者さんを複数の専門の医療従事者で診断・治療・看護を行うシステム(カンファレンスシステム)を構築しています。乳腺外科部はその窓口とお考えください。乳腺外科部の中でも患者さんの情報は共有していますので、どの担当医になっても治療方針は同じです。

地域とともに歩む医療の提供

近年、日本国内の急速な高齢化により求められる医療の内容が変わってきています。平均寿命が60歳代の社会で主に青壮年期の患者を対象とした医療は延命、治癒、早期の社会復帰を前提とした「病院完結型」医療でした。平均寿命が延長した現在では、老齢期の患者さんが中心となる時代の医療は病気と共存しながらQOL(生活の質)の維持・向上を目指す、住み慣れた地域や自宅での生活のための医療を地域全体で支える「地域完結型」医療に変わりつつあります。

がん診療においても、かかりつけの先生と当医療センターの医療連携を通じて地域全体で支える医療を目指しています。乳腺外科部では、和歌山ならび近郊の約690人もの日赤和歌山医療連携ネットワーク会員の先生方を通じて地域医療施設と密に連携をしています。

地域医療施設(かかりつけ医)の役割
●生活習慣病を含めた病気の予防・日常の健康管理を行います

●風邪などの病気やちょっとした心配事などを気軽に相談できます

●専門的治療や病院への受診の必要性を判断します


日赤和歌山医療センター乳腺外科の役割

●定期的な乳がんの診療をかかりつけ医と情報交換しながら行います

●乳がんの専門的な検査・診察・手術を行います

●乳がん治療において緊急を要する場合、必要な対応を行います


市民講座の取り組み

当科の取り組みや最新の治療情報などを発信する市民講座を不定期に開催しています。開催時はホームページでご案内いたしますので、ぜひご参加ください。


スタッフ紹介

医師

松谷 泰男 (まつたに やすお)

役職 部長
卒業年 1988(昭和63)年
専門分野 乳がん診断・治療、臨床栄養
資格
日本乳癌学会乳腺専門医・指導医
日本外科学会外科専門医・指導医
日本臨床栄養代謝学会認定医・NST指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
その他 京都大学医学博士
日本臨床栄養代謝学会代議員

鳥井 雅恵 (とりい まさえ)

役職 副部長
卒業年 2001(平成13)年
専門分野 乳がん診断・治療
資格 日本乳癌学会乳腺専門医
日本外科学会外科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医
その他 京都大学医学博士
京都大学医学部臨床教授

松本 純明 (まつもと よしあき)

 
役職 副部長
卒業年 2006(平成18)年
専門分野 乳がん診断・治療
資格 日本乳癌学会乳腺専門医
日本外科学会外科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
検診マンモグラフィ読影認定医
その他 京都大学医学博士
乳がん検診超音波検査実施・判定医師
関連するページ 日赤和歌山情報局Hot"すこやかな毎日のために”
乳がん③乳がんの治療(2024年10月17日公開予定)
乳がん④乳がん以外の乳腺の病気(2024年10月31日公開予定)

中木村 朋美 (なかきむら ともみ)

役職 医長
卒業年 2012(平成24)年
専門分野 乳がん診断・治療
資格 日本乳癌学会乳腺専門医
日本外科学会外科専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医

鳴神 江莉 (なるかみ えり)

役職 医師
卒業年 2019(平成31)年
専門分野  
資格  

山中 亜希 (やまなか あき)

役職 医師
卒業年 2021(令和3)年
専門分野  
資格  

石井 慧 (いしい けい)

役職 嘱託
卒業年 2015(平成27)年
専門分野 乳がん診断・治療、再生医療基礎研究
資格 日本外科学会外科専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
その他 京都大学医学博士
乳がん検診超音波検査実施・判定医師

外来担当医表

場所

本館2階(2B)

受付時間

新患:月曜日、水曜日、木曜日、金曜日の8時~11時30分
   ※ 他院または院内からの紹介状が必要です。
   ※ 予約が優先となります。

再来:予約時間どおり

2016(平成28)年7月1日 から、乳腺外科の受診(初診)には院内または他医療機関からの紹介状が必要となります。

2016(平成28)年4月1日から厚生労働省における定額負担の義務化に伴い、最終受診日から1年以上経過すると初診料に加え別途7,700円(税込)が追加、6ヵ月以上1年未満の場合は再診料に加え別途3,300円(税込)が追加になります。

「乳がん高度診断・治療外来」「乳腺診断・術後経過外来」のご予約をされている方で、受診日や時間の変更をご希望の方は15時〜17時の間に下記にご連絡ください。
ただし、3ヵ月以降のご予約はできかねますのでご了承ください。
尚、緊急を要する場合は、乳腺外科外来まで電話(平日9時〜17時30分まで)いただければ、乳腺外科スタッフが対応いたします。

区分
月曜日
火曜日
水曜日
木曜日

金曜日

A
鳥井
松本
-
松谷
鳥井
松本
松谷
松谷  - 鳴神 鳴神
(午前)
中木村
(午後)
鳥井
交替制 - 交替制 交替制 石井
(午前)
鳴神
(午後)

(2024年8月1日~)

※区分

(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。
※赤字の名前は女性医師です。


専門外来

 
乳がん高度診断・治療外来
   
乳線診断・術後経過外来
(午前)
 
 
 
 
石灰化外来
(午前)
 ○    ○
 ○
地域連携パス外来
(午前)
 
乳がん遺伝相談外来
 
(★)
     

(2024年1月1日~)

※完全予約制

※学会・出張・臨時手術などにより休診となることがありますのでご了承ください。
 

 (★)費用
初めてのカウンセリングを受けられる方
1回 11,000円(税込)

カウンセリング2回目以降の方
1回   5,500円(税込)
(※当科で乳がん治療を継続中の方は初回より1回 5,500円(税込)となります)

予約方法:看護師にお申し出いただくか、平日15時~17時の間にお電話ください。
    (Tel 073-422-4171㈹ 乳腺外科)

担当者:認定遺伝カウンセラー・看護師


診療実績

院内がん登録とは病院で診断されたり、治療された全ての患者さんの情報をもとに医療機関ごとで作成されています。この登録はがんの専門的な医療を行う全ての病院が行っているため、病院ごとのがん診療の特徴がよくわかります(平成25年法律第111号がん登録等の推進に関する法律(平成28年1月1日施行)および院内がん登録の実施に係る指針(厚生労働省告示第470号))。

院内がん登録 2023(令和5)年 乳がん

当医療センターで初回治療を行った乳がん

356
年齢分布 25~29 0
30~34 2
35~39 7
40~44 26
45~49 37
50~54 52
55~59 41
60~64 31
65~69 35
70~74 49
75~79 35
80~84 25
85~89 11
90~94 4
95~99 1
乳がんの臨床病期別
 
0期 50
Ⅰ期 129
Ⅱ期 96
Ⅲ期 32
Ⅳ期 26
不明 23
乳がんの発見経緯 がん検診・健康診断等 104
 他疾患の経過観察中 60
自覚症状による受診 178
不明 14
来院経路 自主的受診 7
他施設紹介 308
他疾患経過観察中 39
その他 2
手術  施  行 266
 施行なし 90
放射線治療  施  行 139
 施行なし 217
化学療法  施  行 144
 施行なし 212

患者さんへ

受診までの流れ

気になる症状がおありの方
・しこりのある方
・異常な乳汁分泌のある方
・乳房の皮膚が赤い方
・乳頭の皮膚がただれている方
・わきの下にしこりがある方

いずれの症状も直ちに乳がんというわけではありませんが、このような症状をお持ちの方は、かかりつけの先生や乳腺疾患の診察をしている医院へご相談ください。当医療センターは和歌山市内の多くの医療機関と連携しており、当科へご紹介いただける体制を整えています。
乳がん検診で異常を指摘された方
検査結果をお持ちの場合は、予約センターで予約いただき、受診ください。
乳がんと診断され、当医療センターでの治療を希望される方
診断された医療機関を通して受診の予約をお取りください。診断された医療機関が遠方等の理由で医療機関からの予約が難しい場合は、紹介状をお持ちの方に限り、患者さんからのご連絡で予約センターにて予約できます。

診断までの流れ

問診と視触診、画像検査、病理組織検査を必要に応じて組み合わせ、乳がんかどうか診断しています。
画像検査には、マンモグラフィ、乳腺超音波検査、造影MRIがあります。
マンモグラフィは、乳房を挟み込んでしこりや石灰化などがないかを調べるX線検査です。乳腺超音波検査は、乳房にゼリーを塗り、超音波深触子を用いて検査します。両検査で乳がんの可能性が否定できないと考えられる場合、造影MRI検査を行うこともあります。

しこりがみつかると、良悪性を判断するために病理検査を行います。
病理検査には、外来で関便に行える細胞診や、局所麻酔をして組織というかたまりを採取する針生検やハンディマンモトーム生検、さらに手術室で行う切開生検があります。それぞれ、長所・短所があります。後者ほど採取できる量が多いので診断がより確実になりますが、乳房に傷が残ることがあります。逆に前者ほど簡便で、乳房に傷が残ることはほとんどありませんが、採取量が少ないので、診断が困難なことがあります。当科では、画像診断と予測される病理診断をもとに病変を採取する方法を検討しています。

異常なし、あるいは良性病変と診断された方

乳房に乳がんを疑わせるしこりや異常がない場合、あるいは乳腺症や線維腺腫など、良性病変と診された場合、当科で短期間の経過観察を行うこともありますが、問題がなければ乳がん検診をご案内します。

地域の乳がん検診医療施設や当医療センターの健康管理センターと綿密な連携をとっています。無症状あるいは明らかな良性疾患のみを認めている場合は、そちらで検査を行い、乳がんの早期発見に努めています。検診にて、精密検査が必要と判断された場合は直ちに乳腺外科部でより高度な診断を行います。診断の結果、異常が認められなければ、再び地域の乳がん検診医療施設や健康管理センターで1~2年毎の定期検査を受けていただくようお願いしています。


健康管理センター TEL 0120-991-376(平日 午前9時~午後5時)
 

下図にあげたような乳がん検診サイクルで、乳がんの早期発見を目指しています。

乳がんと診断された方、転移再発と診断された方


地域の先生方へ

いつも大変お世話になっております。
当科が設立されてから、常に地域の先生方と連携いただきながら乳がんの診療にあたってきました。今後もこの方針は変わらず、乳がんを和歌山ならびに近郊の地域全体で診療に当たりたいと考えていますので、ぜひご協力くださいますようお願い申し上げます。

【 ご紹介いただく対象 】
乳がんをはじめ、乳房の要精密検査を必要と思われる場合、どなたでも結構です。

【 当日の診察内容 】
初診の診察日は(月)(水)(金)です。
お手数をおかけいたしますが『予約センター』までFAX(0120-937-510)もしくは電話(0120-936-385)(平日の9時~19時迄・土曜日9時~13時迄)で予約ください。

ご紹介いただいた場合、病変が指摘可能な場合は特別な理由のない限り当日にマンモグラフィ検査・乳腺超音波検査・病理検査(針生検、マンモトームエリート)を施行いたします。
後日必要があれば乳腺MRI(予約制のため当日不可)を行い、全例キャンサーボードで検討し、「画像結果=病理結果」をもって最終診断としています。
乳房MRIの混み具合にもよりますが、最短3日で最終診断が可能です。

石灰化のみの症例は腹臥位ステレオガイド下マンモトーム生検(毎週木曜日・予約制のため当日不可)を施行していますので、木曜日に診察している『石灰化外来』までご予約お願いします。

良性の診断がついた後は、紹介していただいた先生での経過観察も可能です。
経過観察が困難な場合は、いつでも紹介状にその旨を記載していただきましたら当科もしくは当医療センター健康管理センター、連携している医療機関で経過観察させていただきます。

紹介患者さんならびに先生方の不安を少しでも軽減するために迅速に診察・検査いたします。


疾患・治療(専門外来)

乳がんの動向・分類

日本人の乳がんは増加している
図1に部位別がん罹患率(がんの発生率)の推移を示しました。乳がんの罹患率や死亡率は年々増加の傾向にあり、特に乳がん罹患率に関しては30年前と比べると約2.5倍に増加し(図2)、2000(平成12)年頃からは女性に発生するがんのトップになりました。また、毎年約9万人弱の方が乳がんにかかり、約1.5万人の方が亡くなっています。胃がん、大腸がんや肺がんは高齢になるにつれて増加しますが、乳がんは40歳代半ばに1番多いという特徴があります。この年代の女性は仕事や家事・育児も非常に重要な位置を占めているので、乳がんになってしまうと社会的損失は非常に大きいと考えられています。

乳がんの分類
乳がんの分類法はたくさんありますが、その中で重要なものに病期分類があります。0期からⅣ期までの5段階があり、その内0期(非浸潤がん)からⅡ期を早期がんと呼んでいます。非浸潤がんは乳がんが発生する乳管や小葉内にとどまっており、周囲の間質といわれる血管やリンパ管が豊富な場所までは進んでいません。よって基本的には転移を起こさない、局所だけの病気と考えられます。通常、自覚症状はなく、マンモグラフィ検診のおかげで徐々に発見される頻度が増加しています。一方、浸潤がんは周囲の間質まで進んでおり、転移を起こす可能性があります。よって全身の病気となります。

乳がんの治療法

乳がんの治療は手術療法、薬物療法、放射線療法などを組み合わせて行います。

手術療法には、乳房をすべて切除する乳房切除術と乳房の形を残す乳房温存術があり、乳房温存術の適応がある場合、残された乳房に放射線治療を追加することで、乳房切除術と再発率は同等になります。早期乳がんで乳房切除術が適応となる患者さんでは、形成外科医を含むチームで乳房再建も行っています。また、乳がんは腋窩リンパ節という脇のリンパ節に転移を起こしやすいのですが、診断時の検査で腋窩リンパ節への転移が疑わしくない場合、がん細胞がはじめに転移すると考えられるリンパ節(センチネルリンパ節)生検を用いて、数個のリンパ節を術中に検査し、転移がなければ残る腋窩リンパ節を温存することができます。こうすることにより、上肢のしびれや浮腫などの合併症は少なくなります。

薬物療法はホルモン療法(内分泌療法ともいいます)、抗がん剤を用いた化学療法とハーセプチンをはじめとした分子標的治療があります。乳がんはエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンに反応して大きくなるタイプがあります。その女性ホルモンの効果を減少させるのがホルモン療法です。抗がん剤は文字通りがん細胞に作用する薬剤ですが、がん細胞だけでなく正常細胞にも同様に作用します。そのため、副作用も多い治療です。昨今では、その副作用を和らげるような治療が進歩したため、外来治療が可能となりました。乳がんは遺伝子解析を用いた診療も進んでいます。例えばHER2に作用する薬(ハーセプチンなど)が開発され、非常に予後が改善しました。こういった薬剤はHER2を発現しているがん細胞に作用するため効果も高く、抗がん剤ほど副作用は多くありません。このように乳がんに対する薬物療法には様々な種類があり、個々の乳がんの性質にあわせた最適な治療をご提案します。

なお、手術後に用いる薬物療法を手術前に用いることも多くなりました。乳房温存術を行えない大きながんに対し、薬物療法を手術前に行うことによりがんを縮小させ、乳房温存術が可能となる場合があります。また、薬物療法の効果は個々の乳がんにより効果が異なるため、その効果を確認しながら最適な治療法を選択しています。

乳がんの治療において、手術や放射線治療、薬物療法以外の補完代替医療(民間療法など)において乳がんの進行を抑えたり再発を予防したりする効果が明らかとなっているものはありません。また、薬物療法の効果は個々の乳がんにより効果が異なるため、その効果を確認しながら最適な治療法を選択していきます。

乳がんの転移形式・形式別治療法

乳がんの転移形式
乳がんの転移・再発は、乳房や乳房の皮膚、腋窩リンパ節などの局所再発と脳、肺、肝、骨や遠隔リンパ節などの遠隔転移の2つがあります。
局所再発の場合で遠隔転移を伴っていなければ、治療により根治を望むことが可能です。
遠隔再発の場合は、ほとんどの場合で治癒を望むのが困難とされています。治療の目的は「生活の質の低下を最小限にして、乳がんによる症状を緩和する」ことです。
転移形式別の治療法
局所再発の場合は手術を主体とした治療を考慮します。そして、必要に応じて放射線治療や薬物療法を追加します。
遠隔転移の場合は、その転移場所により治療法が異なり、全身治療としての薬物療法が主体となります。必要により、放射線治療を追加します。可能であれば転移部位の病理組織を採取し、がんの性質に基づいて薬物療法の内容を検討します。
乳がんの転移・再発で当医療センターでの治療を希望される場合は、今までの臨床経過、画像検査と現在の転移部位の評価ならびに病理組織をご持参ください。今までの経過がわかることで迅速に対応できます。
  • ※1 健康管理センターでの乳がん検診をご希望の方は電話でご予約ください。
       詳しくは下記にご連絡ください
       健康管理センター 電話:0120-991-376(受付時間:平日 午前9時~午後5時)
  • ※2 和歌山市の日赤和歌山医療連携ネットワークの地域乳がん検診連携施設です。

チーム医療のご紹介

当医療センターで行っている乳腺疾患に関わるカンファレンスをご紹介します。

日赤和歌山乳腺診断カンファレンス
今まで乳がんは「硬いしこり」での発見されることが多かったのですが、近年マンモグラフィを含めた診断機器の発達により、「硬いしこり」をつくる前の段階での発見が可能となってきています。乳がんは、画像検査(マンモグラフィや超音波、乳腺MRIなど)と病理検査(細胞診、針生検やマンモトーム生検など)により総合的に診断が行われるため、乳腺専門医、放射線画像診断専門医、病理診断専門医らによるカンファレンスでいろいろな角度から、より正確な診断を行っています。


日赤和歌山乳がん診断カンファレンス
「日赤和歌山乳腺診断カンファレンス」で診断が確定し、治療が必要な場合に乳腺専門医、放射線画像診断専門医、病理診断専門医に加え、放射線治療専門医も参加してカンファレンスを行っています。乳がんの治療は、集学的治療といって、手術だけでなく化学療法や内分泌療法、放射線治療などを個々に応じて組み合わせながら治療を行い、成績の向上を目指します。



日赤和歌山乳がん外来化学療法カンファレンス
近年、がんの化学療法は、嘔気・嘔吐や骨髄抑制などの化学療法に伴う副作用を軽減できる支持療法の進歩が大きく「外来」に移行しつつあります。乳がんも同じで外来化学療法が中心ですが、抗がん剤の副作用に注意して投与し、期待する効果を得るため、既定量を決められた期間に投与できるよう患者さんの状態を十分把握しておく必要があります。また、他科のいろいろな薬を内服している場合、それらの薬と抗がん剤との相性にも注意しなくてはいけません。そのため、当院は外来通院治療センターの看護師と専門の薬剤師が治療・ケア・使用薬剤などを一緒に検討するカンファレンスを行っています。化学療法の導入は入院で行っていますので、入院中に薬剤師が使用している抗がん剤の説明や薬に関する相談に乗ります。患者さんが相談され改善が必要な場合は、再度カンファレンスで検討し、より快適に化学療法を継続できるように心がけています。


日赤和歌山乳がんケアカンファレンス
乳がん患者さんが入院する病棟の看護師長・看護師らとカンファレンスを行っています。医師からは治療内容や治療目標、入院中の注意点などについて、看護師からは患者さんのケアについて話し合い、患者さんがスムーズに手術や化学療法などの治療やケアが受けられるように情報共有に努めています。



日赤和歌山乳がんリハビリカンファレンス
乳がん診断・治療の進歩により、格段に治療成績もよくなってきた反面、治療に伴う副作用と長く共存していくことも少なくはありません。乳がん術後の副作用の1つである患肢の拘縮とリンパ浮腫の予防に対して取り組んでいます。入院中に患肢の拘縮の評価から運動方法について理学療法士が指導し、リンパ浮腫の予防はいろいろな講習会で知識を深めてきた看護師が指導しています。

専門外来

乳腺外科では、各病態に応じて専門外来での診療を行っています。

(乳がん高度診断・治療外来、乳線診断・術後経過外来、石灰化外来、地域連携パス外来、乳がん遺伝相談外来)

それぞれの日程については、
こちらからご確認ください。

乳がんの遺伝相談については、「乳がん遺伝相談外来」がありますので、ご相談ください


臨床試験・治験

日本赤十字社和歌山医療センター乳腺外科では、京都大学大学院医学研究科との共同研究で「乳がん微小環境形成に関わる分子生物学的機序の生体試料を用いた探索研究」を行っています。
詳細はこちらをご覧ください。

京都大学医学部附属病院乳腺外科 臨床試験・治験について

http://www.brca.jp/consult/clinicaltrial/index.html


乳腺専門医を目指す医師へ

日赤和歌山医療センター外科専門医プログラム

プログラム内容

当医療センターの外科専門医プログラムは、基幹病院として全国でも数少ない2施設(岸和田市民病院)のみとの研修プログラムとしています。そのため短期間で移動することはなく、じっくりと腰を据えて外科研修が可能です。
 乳腺外科部は京都大学乳腺外科教室の関連施設の1つで、約60関連施設の中でも豊富な乳癌手術症例数を誇っており、最短で外科専門医並びに乳腺専門医の取得が可能です。
指導は乳腺外科専門医、病理診断専門医、放射線診断専門医、放射線治療専門医など各方面のスペシャリストからカンファレンスを利用して受けられます。さらにメディカルスタッフとのカンファレンスもあり、理想の乳腺外科専門医になるべく多様な指導が受けられるのが特徴です。
また、従来の一人主治医制から複数主治医制をいち早く導入し、男性にも女性にも働きやすい環境作りを目指しています。
乳腺専門医育成システムは下図のとおりで、初期研修後の3年間の外科専門医研修を乳腺専門医初期研修と位置づけ、その後2年間を乳腺専門医後期研修としています。その間に検診マンモグラフィ読影認定医、乳腺超音波認定医をはじめ、乳癌専門医の資格を最短で取得してもらいます。このシステムを終了することでほぼ全ての診療が一人で可能となり、その後は各先生の目標に向かってサポートします。

乳腺外科専門医研修スケジュール

 

8:45
入院カンファ
入院カンファ
8:30 乳腺カンファ
入院カンファ
入院カンファ

当番制
 

当番制
 
9:00 初診・再診外来 手 術 初診外来 薬物療法外来 初診・再診外来
10:00
11:00
12:00
13:00 手 術  乳腺カンファ  ケアカンファ
14:00 再診外来
15:00 マンモトーム生検
16:00  
17:00   17:30
ゲノムカンファレンス
乳腺超音波診断カンファ
17:30 化学療法カンファ
   
18:00 乳癌診断・治療カンファ