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日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。
2024/09/19
日赤和歌山医療センターでは、2009年、乳腺疾患を専門に扱う「乳腺外来」が設立し、2年後の2011年4月、乳がんの診断・治療をより専門的かつ迅速に行うために乳腺外科部が開設しました。
乳がんは年々増加傾向で、日本の女性がかかるがんの第1位となっています。当医療センター乳腺外科部には6名の医師がおり、地域の先生方と連携して、乳がん検診から乳腺症、線維腺腫などの良性疾患、乳がん、乳がんの再発を含め、乳腺疾患のトータル・ケアを提供しています。
今回から4回にわたり、乳がんが増えている理由や診断方法、予防、乳がん以外の乳房の疾患などについて、乳腺外科部副部長の松本 純明先生に話を伺っていきます。
乳がんの罹患率は、以前は欧米より少ないと言われていましたが、年々上昇していて、女性が罹患するがんの第1位になりました。男性も罹患しますが、ほとんどが女性です。2017年の国立がん研究センター情報サービス「がん登録・統計」によると、生涯で9人に1人が乳がんに罹患するとされています。
欧米に比べると死亡率は低いのですが、欧米は90年代以降減少傾向にあるのに対し、日本は増加傾向にあり、欧米の死亡率に近づいています。日本の特徴として40代から罹患数が急増し、閉経後の60代で再び罹患数が増える傾向がみられます。
働き盛りにがんが見つかったり、定年退職や子どもの巣立ちなどを迎えて「さぁ、楽しく暮らそう」としているときに発覚したり、女性の社会活動に大きく影響するがんだと言えます。
日本では、40歳から2年に1度の乳がん検診が実施されています。タイミングによっては、健診で見つからないこともありますが、職場での受検機会がない場合でも、例えば、和歌山市であれば封書が届き、地域のクリニックで乳がん検診が受けられます。
この連載では幅広い世代の人に向けて、乳がんにならないためにできることや、乳がんになってしまったときのために、早期発見するための知識、治療方法などをお伝えしていきますので、ぜひ、最終回まで読んでいただければ幸いです。
乳がんのリスクを高める行動を避ける
予防のためには、まず、何が乳がんリスクを高めてしまうのか知っておくことが大切です。乳がんだけでなく、がん全般に言えるものは、以下の2つです。
● 飲酒
● 喫煙
お酒を飲む、タバコを喫うというのは確実なリスク因子と言われています。可能であれば、この2つを避けた生活をしましょう。
予防には「運動」「規則正しい生活」が効果的
乳がんの予防には、まず、運動が大切だと思っています。短時間でもいいので、毎日ウォーキングなどの運動習慣をつけていただきたいです。仕事がデスクワーク中心だと歩く時間を確保するのも大変だと思いますが、「自分は大丈夫」「時間がなくてできない」と考えず、少しでもいいので運動をはじめ、続けることが大切です。他の病気の予防にもなりますので、患者さんにも「歩いていますか?」とよく尋ねています。
もう1つ、朝それなりの時間に起きて、3食きっちり食べてという昔ながらの規則正しい生活を続けられると、予防につながると思います。仕事によって夜勤などがある人もいたり、食事を抜きがちだったり、夜更かしする習慣があったり、規則正しい生活は思いのほか難しいかもしれませんが、ホルモンバランスが崩れてしまう生活を続けることは、乳がんのリスクを高めることにつながると考えています。
とはいえ、遺伝的な要因で発生する乳がんもあり、「健康的な生活を送っているから、乳がんは予防できている」と言い切れないですが、現代は、普通と思っている生活の中にリスクがたくさんある時代と考えて、少しでも予防しようとの気持ちを持って、日常生活を送っていただきたいです。
次回は、乳がんの発見や診断についてお話します。
松本 純明(まつもと よしあき)
日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会外科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、検診マンモグラフィ読影認定医、乳がん検診超音波検査実施・判定医師。
趣味は、ガーデニング。好きな食べ物は、鶏モモ肉と大根の炊いたの。
乳がん①予防のためにできること(2024年9月19日公開)←今回
乳がん②乳がんの発見と診断(2024年10月3日公開)
乳がん③乳がんの治療(2024年10月17日公開予定)
乳がん④乳がん以外の乳腺の病気(2024年10月31日公開予定)