がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

PET検査とCT検査を合わせると最強 !!

2019/06/18

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

 

 

前回に続き、PET検査の話題をお届けします。

 

 

1回の検査で全身の情報が得られるPET検査

 

前回からの繰り返しとなりますが、PET検査は「がん」の転移を含めた「がん病巣の広がり」や「がんの再発」を見るためには大変有効な検査である一方、早期がんに対しては、食道・胃・大腸であれば内視鏡検査、肺ではCT検査が優れているとお伝えしました。

 

しかしながら、PET検査は薬剤を静脈注射で体内に入れて撮影するため、全身を一度に調べることができます。頭部・胸部・腹部など各部位に絞って行うCT検査とは対照的ですね。

 

1回の検査で全身の情報が得られるのは、放射性薬剤を用いる核医学検査の特徴なのです。痛みもなく全身を調べられるので、PET検査だけでいいのではないか?と思われる方がいらっしゃるのも理解できます。

 

しかし、臓器や箇所によっては薬剤が集まりづらいことがあったり、がんが見えにくかったりする場合もあります。PET検査が万能とはいえないのです。

 

PET検査で得られる、実際の画像をご紹介しましょう。

 

 

PET検査で得られる画像

上のモノクロ画像を見てください。

 

脳・口腔周囲・心 臓・肝臓への生理的集積、そして腎臓・尿管・膀胱への排泄像。

さらに、赤い矢印の両側副腎に腫瘤状の集積が明瞭に認められます。

 

これらは正常な集積で、誰にでも認められるものです。

 

このような細胞の活動状況が撮影された画像の中から、がん細胞の位置や大きさ、進行具合を見つけていきます。

 

 

PET検査とCT検査の組み合わせが強力!

 

ここまでの説明から、形態画像(かたち)に秀でたCT検査と、機能画像(活動)を得意とするPET検査が組み合わされば、強力な画像診断機器になるのでは?と思われる方もおられるでしょう。

 

大正解です!!

 

京都大学医学部附属病院に導入されているPET-CT装置

 

両者が一体化されたPET-CT検査が既に開発されています。

実際に、いくつかの病院で活躍しています。

 

PET検査では判断が困難ながんの診断を、CT画像と重ね合わせることによって、より正確な診断に近づけます。

 

がん診断の精度も、どんどん向上しています。

皆さんの体の状態を診た主治医が、必要に応じて検査の指示を出します。

 

検査がたくさんあって大変と思うかもしれませんが、大切な検査ですので受けてくださいね。

 

当院では、PET検査を行っていませんが、必要な場合は主治医が同市内にある2ヵ所の病院へ速やかに検査を依頼し、正確な診断と早期治療を心がけています。

 

 

さて、次回からは超音波(エコー)検査の話題です。

 

これまでにCT、MRI、PETと、がんの画像診断について解説してきましたが、超音波検査が最後となります。

 

超音波検査は妊娠期などにも使われており、身近に感じられる方も多いでしょう。

当院でも数多くの超音波検査が行われています。

 

次回も、ぜひご一読ください。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員なども務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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