日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

放射線治療の副作用

2022/10/13

日赤和歌山医療センターには放射線治療の専門医が3名在籍しており、各診療科と密に連携し、質の高いがん診療の提供を行っています。

 

自宅から通いで治療でき、仕事も続けながら受けられる放射線治療。とはいえ、心配になるのが副作用です。詳しい話を根來慶春 放射線治療科部長に伺っていきます

 

 

放射線治療は100年以上の歴史があります。その長い歴史の中で機器が非常に発達し、現在はがんの細胞にはたくさんの放射線を当て、がん以外の健康な組織には放射線をできる限り、当てないような治療が可能になりました。そのため、高い治療効果が期待でき、副作用は軽減できるようになってきています。

 

 

放射線治療で副作用が起こる仕組み

 

放射線治療による副作用は、がん細胞以外の健康な部分に放射線が当たることによって引き起こされます。放射線が当たったがん細胞は痛めつけられて体の中で消滅していくのですが、どうしても放射線はがん周辺の健康な組織にも当たります。

 

健康な箇所に放射線があたってしまうと、日焼けと同じようになり、炎症が起こります。例えば、喉の周りのがんを治療したときは、風邪で喉が赤く腫れたときのような症状がでます。お腹に広く当てたときには下痢になることもあります。

 

 

放射線治療の装置も検査の機器も年々進歩して、健康なところに当たる放射線が減り、昔と比べて副作用は減っています。総合的に考えると、放射線治療は体への負担が少なく、持病のある患者さんや体力が低下した高齢の患者さんでも行える治療法です。当センターでも積極的に利用しています。

 

 

実際に起こる副作用

 

とはいえ、副作用が全くなくなったわけではありません。疾患や当てる範囲によりますが、体全体が疲れた感じになるなど、倦怠感が出ます。これはスポーツの後の疲労感や風邪の引き始めの体の重さなどに似ています。具体的に表現すると、寝起きにシャキッとしない状態であるとか、朝から活動して次第に疲れてきた感じであったり、何となく食事が進まないといったような感覚です。

 

また、さきほども申した通り、喉に当たって腫れたような感じになったり、お腹に当てたことで下痢になったりして食欲が落ちたりすることもあります。

 

皆さんのイメージでは、もしかしたら(頭に放射線を当てなくても)髪の毛が全部抜ける、一日中激しく嘔吐する、寝込んでしまって動けないといったものがあるかもしれません。しかし、そのようなひどい副作用を私は見たことがありません。元気な患者さんが放射線治療を受けた初日に、いきなり元気がなくなることはありません。10回、20回と繰り返して放射線治療を受けていく上で、副作用が少しずつ出てきます。

 

そもそも人間は放射線を感じる力を持っていません。当たったときに「当たっている」と感じることはないので、すぐ痛みが出ることもありませんし、元気がなくなることもありません。放射線治療だけで治療できるがんなら、普段通りの生活をしながら治療を終えられる患者さんも珍しくありません。

 

 

きちんと放射線が当たっているか分からないのでは?と心配されるかもしれません。ただ、今の機器はそれをチェックする非常に高性能なシステムが備わっています。放射線を当てたいところに、当てたい量の放射線を当てられる、間違えないシステムになっているので安心していただきたいです。

 

がん治療は放射線治療だけで完結することは少なく、手術や抗がん剤を併用することがほとんどです。そのため、手術・薬物療法の副作用も、それぞれで起こります。放射線治療だけでひどい副作用を起こすことは稀です。副作用をつらく感じたり、体調の変化が出てきたら、遠慮なく放射線治療医に相談してください。きちんと対応します。

 

 

「放射線治療は、副作用があるから怖い」と思われている患者さんもまだまだ多いのですが、「放射線の副作用が大変つらくて怖い」というよりは「どんなことが起こるか想像できなくて怖い」のだと思います。

 

医療の進歩により、副作用は随分と軽減されていますので、放射線治療があなたに最適な治療法となれば、怖がらずに治療を受けていただきたいと思います。

 

 

根來 慶春(ねごろ よしはる)

日本医学放射線学会放射線治療専門医。医学博士。

趣味は、パソコンをいじること。好きなラーメンは、お箸が立って倒れないような濃厚ラーメンです。

 

 

放射線治療① 日赤和歌山の放射線治療(2022年09月08日公開)

放射線治療② 放射線治療の副作用(2022年10月13日公開)←今回

放射線治療③ 放射線治療中の生活(2022年11月10日公開)

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