生まれる、成長する、学ぶ、悩む、暮らす、産む、寄り添う、過ごす、老いる…。 どんなときも 自分らしく、そして 健康に生活するために、産婦人科医から 身体のこと、体調のこと、病気のこと、予防や対策などをお伝えします。

社会全体で考える妊娠

2025/04/22

思春期から老年期まで全ての女性へ向けて、産婦人科医で女性ヘルスケア専門医の山西恵医師に、女性特有のからだの不調や病気のことを伺います。

毎日の生活をもっと元気に、豊かに! 一緒に学んでいきましょう。

 

妊娠や出産というと、当事者である女性個人の問題ととらえられがちですが、実はそれを取り巻く社会やパートナー、職場、家族など、まわりの人々との関係が大きく影響します。

 

たとえば、「今は妊娠を避けたいから」と避妊を意識する女性がいても、パートナーがその重要性を理解していなかったり、相談できる環境が整っていないと、思いがけない妊娠につながることもあります。

 

また、月経に関連する体調不良があり、「体調が悪い」と訴えているのに、周囲の理解が得られず受診のタイミングを逃してしまう…そんな経験をしたことがある人もいるかも知れません。

 

 

女性が安心して妊娠・出産を迎えるには、本人だけでなく、そのまわりにいる人たちが正しい知識を持ち、理解を深めることがとても大切です。

 

 

プレコンセプションケアとは?

「プレコンセプションケア」とは、将来妊娠を望むかどうかにかかわらず、すべての女性やカップルが妊娠前から自分の体と向き合い、健康を整えていくケアのことです。

 

 

たとえば、食生活や生活習慣を見直すこと、持病があれば治療を続けること、必要な検査や予防接種を受けておくことなどが含まれます。こうした準備をしておくことで、妊娠・出産に関連するリスクを減らし、安心して家族が迎えられることにつながります。

 

 

SRHR(性と生殖に関する健康と権利)とは?

SRHRとは、Sexual and Reproductive Health and Rights(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)、直訳すると「性と生殖に関する健康と権利」のことです。

 

女性の健康を考えるとき、大切なのは「妊娠できるかどうか」だけではありません。

自分が望むタイミングで妊娠できるように、また、妊娠を望まないときは避けられるようにできること。そして、月経や更年期、不妊治療など、人生の中で直面する様々な場面で、必要な情報やサポートを受けられる環境を整えること。こうした「性と生き方の選択」を支える健康の考え方が、近年、とても重要視されています。

 

 

このことは、女性一人が頑張るものではなく、パートナーや職場、家族、社会全体が理解し、支えていくことが大切です。具体的には、避妊や不妊、健康管理といった選択の1つひとつに、周囲の理解やサポートが必要となってくるわけです。

 

誰もが自分らしい選択をし、それをまわりが自然に支える。そのような社会が広がっていくことが望まれます。

 

 

次回のテーマは「避妊」です。

 

将来、妊娠を望む人も、望まない人も、自分の体と向き合うきっかけになれば、嬉しく思います。

 

 

山西 (やまにし めぐみ)

日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。

学生時代はバレーボールを楽しみましたが、現在は育児と肩の痛みで鑑賞専門です。健康管理の大切さを身に沁みて実感しているため、いつかバレーボールを思い切りプレーできる日を夢見て、体力づくりをしていきたいです。

悩める患者さんやご家族のご希望に寄り添った診療を心がけています。すこやかな日常が送れるようサポートしていきたいと考えています。気軽にご相談ください。

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