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いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。
2020/04/09
2回目を迎えた今回は、大規模事故・災害時の活動に際し、私たちが原則としている「CSCATTT」についてお話していきます。
普段の病院では、それぞれの患者さんの病状や治療方針に沿って、医師や看護師などのスタッフ、医療資器材などを適切に配備し、医薬品なども適正に投与することで、患者さんにとって最良の治療を行うように体制を整えており、言うならば、医療需要に対して充分な医療資源の供給を行うことができます。
しかし、ひとたび災害が発生すると、この需要と供給のバランスが大きく崩れます。
災害時の医療の特徴として、傷病者が一度にたくさん発生し、突発的に医療需要が急増してしまいます。と同時に、被災地では病院自体も被害を受けるので、人員・医療品・医療機器などの医療資源は制約を受けることになります。
昼間でも、夜間でも、災害が発生した時に勤務している医療者が、医薬品の補給が再開するまで在庫の医薬品を使って、停電などの施設設備の制限のある中、医療を提供することになるので、医療需要と医療資源のバランスが逆転します。この需要と資源の不均衡が大きくなると、救える命が救えなくなる可能性が高くなります。
つまり、災害時には、限られた人的・物的資源を有効に活用することで、需要と資源のアンバランスを極力小さくし、一人でも多くの命を救うことが目的になります。
そのためには、効率的な医療活動が求められます。
その効率的な医療活動を行うための基本原則が「CSCATTT(シーエスシーエーティーティーティー)」と呼ばれるものです。
CSCATTTとは、災害発生後にとるべき行動である7つの基本原則
Command and Control (指揮と連携)
Safety (安全確保)
Communication (情報収集伝達)
Assessment (評価)
Triage (トリアージ)
Transport (搬送)
Treatment (治療)
のそれぞれの頭文字をとったものです。
災害医療従事者であれば、誰もが知っておくべき用語で、行動の基盤となる考え方です。
通常、CSCATTTは、CSCA(メディカルマネージメント)とTTT(メディカルサポート)に分割して考えられます。
実際の災害現場での医療活動では、多くの命を救うために、まずトリアージ(Triage)を行って、限られた医療資源を投入するべき傷病者を選別し、治療(Treatment)や搬送(Transport)の順位を決定します。
これらの医療行為(TTT)を効果的なものにするためには、組織的に活動するためにCSCAを確立し、マネージメントしていくことが重要となります。
災害現場では様々な機関や病院から医療チーム等が集まり、普段は顔を合わせていない人たちと共同で活動を行わなければなりません。この際、各自が好き勝手に主張したり、活動したりすると、無駄な活動が増え、医療資源を浪費させることにつながります。医療資源が制限された状況下では、無駄を少なくしなければ「防ぎ得た災害死」を減らすことができません。
つまり、災害現場に集まったはじめて顔を合わせる、名前も知らない人たちが、即時に組織を構築し、同じ方向性を持って活動を行うために共通の考え方を持つ必要があります。その原則がCSCATTTです。
次回からは、CSCATTTの各項目について、詳しくお話していきたいと思います。
第3回は「Command and Control」について解説します。お楽しみに!