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いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。
2021/06/17
今回は、CSCATTTの最後のT、トランスポート(搬送)についてお話しします。
災害時には、傷病者を医療機関へ搬送するため、医療搬送が行われます。
医療搬送とは、医療の管理下で行われる搬送のことで、医療の継続が必要な傷病者に対して、安定化治療を行いながら搬送します。
特に、重症者に対しては、被災地から被災地外の医療機関まで間断なく医療を継続しなければなりません。適切な医療サポートが施されなければ、多数の防ぎ得た災害死を発生させることになります。
医療搬送には、広域医療搬送と地域医療搬送と呼ばれるものがあります。
まず、広域医療搬送は、国(政府)が実施する患者搬送のことで、自衛隊機(CH47、C-1,C-130)で行われます。
一方で、地域医療搬送は、病院、市町村、都道府県が実施する患者搬送のことで、救急車やドクターヘリ、その他のヘリ(消防、自衛隊、海上保安庁)で行われます。
通常、災害などで多数の傷病者が発生した場合、まず、トリアージでふるい分けがなされ、緊急度、重症度の優先順位が決定されます。
そして、安定化のためのトリートメント(治療)が行われ、根本治療ができる医療機関にトランスポート(搬送)されるという流れになります。
このTTT活動で、もっともボトルネック(目的を達成する際に障害や問題となる部分)となりやすいのがトランスポートです。
その理由として、一般的に、トリアージは2分以内、トリートメントは10分~20分程度で行われるのに対し、トランスポートは往復で60分以上の時間を要します。
また、災害時の消防活動は、消火や救助が優先されます。また、救急車は119番通報に応じて出動を行うため、医療搬送に割り当てられる搬送資源は少なくなります。
このように、搬送は時間を要する上に、災害時には搬送ニーズに比べて、救急車や救命救急士などの搬送資源が不足するという状況になるため、ボトルネックとなってしまいます。
では、この課題を解消するためには、どうすればよいのでしょうか?
解消のためには、適切な搬送調整が必要となります。
搬送調整は、日常的に、病院間の搬送や救急出動などでも行われています。
平常時の搬送調整は、それぞれの患者さんの最良な救命・予後を求めることを目的に行われます。
一方で、災害時の搬送調整は、最大多数の患者さんの救命・良好な予後を目的に行われます。
災害時の搬送調整のポイントとしては、
① 搬送ニーズの整理・把握
② 搬送手段の確保
③ 搬送先情報の整理・把握
④ 搬送の判断(どの患者さんを、どのような手段で、どこへ)
があげられます。
搬送調整は、本部・指揮所、災害医療の現場で担う役割が異なります。
本部や指揮所は、搬送の枠組み(搬送フロー)の提示、搬送資源(搬送手段、受入先)量の確保などを担います。
一方で、災害医療の現場では、搬送の判断(搬送手段の選択、搬送先と患者のマッチングを行います。
つまり、本部が搬送の計画と全体としての搬送資源の確保を行い、災害医療の現場は、その計画に基づき、誰を、どのような手段で、どこに搬送するかを決定し、搬送していくという流れになります。
搬送調整がスムーズに行われれば、搬送資源と搬送先のミスマッチという問題を解消でき、防ぎ得た災害死を減らすことが可能となります。
≪災害医療救援センター≫