いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。

災害に備える③ 災害時の安全確保

2023/08/16

「救うことを、つづける。」では、当医療センターの活動や災害・救護に関する情報を発信しています。「災害に備える」をテーマに据え、避難所生活と健康について、救急科・集中治療部の是枝 大輔副部長にお聞きしています。

 

 

最終回となる第3回目は、「災害時の安全確保」についてです。

 

これまでの避難所は、安全なところに集まって過ごすことだけを前提としており、一定の過密は容認する形で設置されていました。しかし、新型コロナやノロウイルスなど感染症対策の予防という面からすると、分散や分離が必要だという議論が始まっています。

 

災害時の感染対策

一定の過密を保つ現在の避難のスタイルで感染症が流行すると、最悪の場合には、多数の感染者や重症者が出てしまいます。

 

感染のリスクを軽減するために、避難する人たちの空間や時間を分散させることを考えてみましょう。バラバラにするために、避難所の数を闇雲に増やしても解決しません。寒い時期は暖房、暑い時期は冷房の問題が出てきますし、物資を配る点でも苦労があるでしょう。

 

考えるべき点は、本当に今、避難所へ行く必要があるのか、自宅や自宅近くの建物等で耐えられるのかということです。自宅などの建物が大丈夫で、ある程度のライフラインが保たれていれば、必ずしも避難所に行なくても良いかもしれません。各自が避難所に「自宅で避難している」と登録し、物資は受け取りにいくスタイルを取ると避難所の過密は減らせます。

 

 

このような避難方法・避難場所のことを、在宅避難・みなし避難所・施設避難所と呼ぶのですが、大きくは指定外避難所という括りになります。推奨しているわけではありませんが、大規模災害の場合に自衛するなら、このような選択肢を知っておけば、選択できるかもしれません。

 

また、ペットを飼っている人は、ペットと一緒に避難したいですよね。最近は、ペットを同伴できる避難所を指定している市町村もあります。お住いの自治体ホームページをご覧になってみてください。ペット用品なども持ち出し用を準備しておきましょう。

 

 

発災したら、まず3つの安全を確認し、適切な避難を

災害が起こったら、いろいろな心配事が出てきますが、まず、ご自身の周りの安全確認を行います。そのときに『3つの安全(=3S)』を確認してください。

 

 

1.自分自身の安全(Self)

最も優先して確認してほしいのは、自分自身が安全な状況にいるかどうかです。避難をするにしても、周囲の人を助けるにしても、ご自身が無事でなければいけません。まず、ご自身の安全確認、安全確保をしてください。

 

2.周囲の安全(Scene)

次は、自分の周りの安全確認です。建物の状況や避難経路にあたる道路の確認をしてください。指定避難所へ行けるのか、これからどうするのかを安全確認をしながら考えます。

 

3.生存者の安全(Survivor)

それから、自分の身の回りにいる人たちの安全確認です。災害現場では使命感から「多くの人を救いたい」という気持ちが出てきて、救助に行きたくなる人もおられますが、まず、自分の安全を優先する必要があります。ご自身が危険な状況になるなら、救助はその道のプロに任せて、「自分の身は自分で守る」を実践してください。

 

頭文字を取って『3つのS』と呼ばれる安全確認をしっかり行い、どういう行動を取ればよいのか、冷静に判断するようにしてください。

 

被災後も、時間の経過に合わせて生活の見直しを

発災初期は3つの安全確認と、どこに避難するか考えることが最優先です。

 

しかし、長期化してくると、安全の意味合いが変わります。自分は健康的な生活を送れているか、防犯対策はどうするか、二次災害が起きた時はどうするか、子どもをどう遊ばせるかなど、違う角度から安全を考えなければならなくなります。

 

「避難所での健康的な生活」でもお話ししましたが、耐え続けるのではなくて、安全に快適に生活を送るにはどうすればいいかという点から、生活を見直していってください。

 

災害時に、いきなり正しい選択をするのは難しいので、普段から自分たちが安全に幸せに暮らすには、どのようなものが必要で、どうしたらよいのか、関心を持つようにしましょう。

 

 

さらに、地域の人たちとも、日常的に世代を超えて話したり助け合ったりしていれば、被災時にも「どうしようか?」と相談しやすい環境ができるので、よりよい避難生活が送りやすくなります。

 

考えたり、準備したりする一助になれば、幸いです。

 

是枝 大輔(これえだ だいすけ)

2018年入職、救急科・集中治療部副部長。

日本集中治療医学会集中治療専門医、日本DMAT隊員(統括DMAT)・インストラクター、日本災害医学会評議員。

好物は、カレー。中でも、給食にでてくるような甘口のカレーが大好きです。

 

 

災害に備える① 避難所での健康的な生活(2023年06月14日公開)
災害に備える② 避難所での健康問題の解決方法(2023年07月19公開)
災害に備える③ 災害時の安全確保(2023年08月16公開)←今回

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