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日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。
2024/03/21
日赤和歌山医療センターの放射線診断科には、現在、診断専門医7名と専門医を目指す医師4名の計11名が在籍し、CTやMRI、核医学検査などの医療用画像を使った診断や、画像を利用した治療を行っています。
2022年4月にはPET-CT装置を導入し、PET検査とCT検査を組み合わせたPET-CT検査と呼ばれる、がんの進行状態や再発・転移の有無などに対して、より深い診断ができるようになりました。
放射線診断科部副部長の尾谷 知亮先生に、PET検査を用いた健康診断「PET検診」や医療センターで受けられる「PET-CTドック」について話を聞きました。
日本では1994年からPETを用いたがん検診が始まりました。歴史は浅いですが、全国にPETの検診センターが普及し、一般的にも知られるようになってきています。
人間ドック・健康診断・各種がん検診などは、自治体やお勤め先の企業などが費用の一部を負担することはありますが、もともと全額自己負担で行われるものです。検診でPET検査を受ける場合も全額自己負担、保険の適用外です。地域にもよりますが、約10万円前後の費用負担が必要です。
高額といえる費用ですが、実際にPET検診を受けて早期のがんを発見できた例もあります。
PET検診でどれくらいがんが見つかるか
実は現時点(インタビューは2023年に実施)で、PET検診の有効性、つまり、検診を受けると、どれくらい生存率が伸びるかという効果測定的なデータは、今のところありません。エビデンスがない状態といえるのですが、だからといって検診に意味がないということではありません。
PET検診の歴史はまだ非常に浅く、エビデンスを出すには、まだ十分なデータが蓄積されていません。これから10年、20年と経ったときには、エビデンスができる可能性がありますので、もう少し長い時間軸で考えていただければと思います。
PET検診の主な対象者
日本核医学会の「FDG-PET がん検診ガイドライン」では、検診の積極的な対象者を50歳以上の中高年としています。
これは年齢が若いと、そもそもがんを発症している方が少ないので、PET検査でのがん発見率が低くなるためです。有効性が高い50歳以上の人が検診を受けるというのが、望ましいとされています。
PET検診でのがん発見率
2013年に日本から出された研究報告では、PET検査を受けた1〜2パーセントの人に、がんが発見されたとあります。これは、他の集団健診と比べても低くない値とされています。ただ、PET検査で見つかる病気はがんだけではないですし、PET検査で見つかりづらいがんもあり、全てが見つけられるわけではありません。
PET検査に用いる薬剤FDGは、体内で糖分を使うところに集まるという性質を持っていて、がんが糖分を使うため、がんの部分にFDGが集まることで発見されるという検査です。けれど、がん以外にも、肺炎、腸炎など炎症が起こっている部位にもFDGは集まります。つまり、体のどこかにFDGが集まっている画像を放射線科医が見たときに、「これは、がんだ」と即断することはありません。他の検査データと組み合わせて、さらに詳しい検査をすべきか、経過観察でいいか、がん以外の治療が必要かなどを判断します。
検診で見つけることの限界もありますが、PET検査ががんの早期発見に役立つことは事実です。年齢や金額とのバランスなども考え、各自で検診を受けるかどうか判断してください。
当医療センターでのPET-CTドック
2023年4月から「PET-CTドック」を開始しました。費用は11万円(税込)で、がんの早期発見に有効なPET-CT検査と腫瘍マーカー検査をセットしたコースとなっています。
PET検査は体への負担も少なく、一度に全身をスクリーニングできる大変優れた検査です。費用は少し高額ですが、ぜひ一度、ご検討いただければと思います。
がんが発見されれば、次からは保険が適用されます。
毎年受けることが望ましいかという点についても、現時点でデータが不足しておりエビデンスはありませんが、ガイドラインでは毎年受ける人は25パーセントほどいらっしゃるようです。他のがん検診と組み合わせて、ご自身で検査のスケジュールを考えてみてください。
「PET-CTドック」にご興味を持たれた場合、日赤和歌山医療センターのホームページ「人間ドックのご案内」の中に「PET-CTドック」のページがありますので、ご確認ください。
尾谷 知亮(おたに ともあき)
日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本核医学会核医学専門医、日本インターベンショナルラジオロジー学会IVR専門医。
趣味は将棋です。将棋は9×9マスの小さな盤面で行われますが、指し手の組み合わせは星の数ほどあり、盤面では果てしない世界が広がっています。その中から「これぞ」という一手を選択することが醍醐味だと思っています。
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