日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

認知症を知ろう⑤ 認知症の方に接するとき

2023/07/20

日赤和歌山医療センターの看護部には、県内最多人数にのぼる専門看護師・認定看護師をはじめ、豊富な看護職人材が揃っています。

 

認知症患者さんのケアご家族のサポートを行う認知症看護認定看護師も在籍し、他職種と協働して、患者さんが安全に療養を継続できるよう支援しています。

 

認知症を患っている方に対して、ご家族や近しい人がどのように向き合い、対応すればよいのか、認知症看護認定看護師の米田恭子さんに話を聞きました。

 

 

認知症の初期段階であれば、習慣化された日常生活行動は特に困ることはないのですが、症状が進んでくると、日常生活を一人で送れなくなってきます。そうなったときには周囲のサポートが必要になりますが、ご家族や近しい人もどう接するのがよいか悩まれます。どういうところをサポートしたらよいのか、どんな声かけをするのがよいのかなどを知っておいていただけると、お互いが楽に生活できると思います。

 

 

患者さんは家族より早くから悩んでいることも

認知症の診断を受けると、ご家族や身近な人もこれからの生活を不安に思って悩まれると思うのですが、実は、患者さんも自分が覚えられないこと、忘れてしまうことに気づいていて、誰よりも早くから悩んでいます。認知症と診断される前から、自分は認知症ではないかと不安に思ったり、日々の出来事を忘れてしまって辛いと感じたりしています。

 

 

患者さんも、自分なりに忘れないように努力や工夫をしていることが多いです。周囲の人に何度も聞いたり、前後の話を忘れてしまっていても、分かっているように振る舞おうと辻褄を合わせたりします。とてもエネルギーのいることですし、肩に力を入れて気を張っておられます。そして、覚えていられないことにはっきり気づいたときには、とても不安な気持ちになっているはずです。もちろん、ご家族も少しずつおかしいなと思い、患者さんのことを心配されていると思います。双方が不安な気持ちになりやすいのが認知症の辛い点です。

 

 

患者さんの気持ちも尊重を

例えば、ご家族が患者さんを思う気持ちから何かできないかと考え、患者さんに対してドリルのようなもので頭の体操をするように言われていることがあります。楽しんでできる範囲内ならよいのですが、できないことで自信を失ったり不安が強くなったりしては、元も子もありません。患者さんの性格や様子を見ながら、活用されることをおすすめします。

 

また、診察時に「物忘れがある」「何度も同じことを聞いておかしい」と患者さんの前ではっきり医師に伝えている場面に出会うこともあるのですが、できれば患者さんに聞こえないよう、少し配慮していただくと関係性が悪くならずにすみます。「普段の様子をメモしています」と言って、手渡していただくなども一案です。患者さんも分かって悩んでいるということを忘れずに、お互いに苦痛のない生活を送っていただければと思います。

 

 

薬の管理や治療の相談は積極的に手を差し伸べて

日常生活は少々物忘れがあっても送れるのですが、困ってくるのは、患者さんの体調や薬の管理です。生活習慣病である高血圧や糖尿病の治療があったり、抗がん剤治療をされていたりすると、特に薬が大切です。認知症の患者さんは決まったタイミングで飲むことが難しくなってきます。医師が「薬は飲んでいますか」と聞いたときには「はい」と答えるものの、家の中には古い薬が大量に溜まっていたということも耳にします。

 

 

通院している病院やクリニックには、ご家族も診察に付き添っていただき、これからの治療のこと、薬の説明などを一緒に聞いていただければ安心です。患者さんが一人で診察に来て、新しい病気が見つかったと説明を受けたり、治療方針について家族と相談するようにと言われていたのに、家族に全く言っていなかったということもあります。医療についての内容を覚えたり、体調を整えたりすることはどんどん難しくなっていくので、寄り添う対応を心がけていただければと思います。

 

認知症が進行すると、ご家族も苦労が増えてくると思います。生活の支援や経済的な問題、介護サービスなどについては、地域包括支援センターで相談できます。お住まいの地域の地域包括支援センターへ問い合わせたり、地域包括支援センターがどこにあるのか不明なときは、市役所や役場に問い合わせてみてください。

 

 

しかしながら、ご本人が、介護認定を受けることや介護サービスを拒否されることもあります。人の世話にならないといけないと悲観されて拒絶を示される場合が多いのですが、いろいろなサービスを活用することで、その人らしい生活ができることを伝えていただけると、前向きになってもらえると思います。

 

また、ご家族は将来的な心配もあって、あれもこれもとなってしまいがちですが、1つずつ段階的に、ゆっくりと取り入れていくと良いように思います。言わずもがなですが、様々なサービスは人を介して提供されます。患者さん本人と支援してくれる人との相性や、サービスを受けることに慣れるまで時間がかかったりもします。

 

ご本人もご家族も、無理のない範囲で、手を取り合っていただければと願っています。

 

米田 恭子(よねだ きょうこ

認知症看護認定看護師。

休日は掃除したり、猫と遊んだりしてリフレッシュしています。雑貨屋めぐりなど、ウインドウショッピングを楽しむこともあります。

 

 

認知症を知ろう① 認知症かもと思ったら…(2023年3月23日公開)
認知症を知ろう② 認知症の診察と内容(2023年4月20日公開) 
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認知症を知ろう④ 認知症の予防(2023年6月22日公開)
認知症を知ろう⑤ 認知症の方に接するとき(2023年7月20日公開)→今回

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