血液のがんである急性白血病の患者数は増加傾向にあり、患者さんの高齢化も進んでいます。その一方で化学療法や移植などの治療法が確立し、長期生存者も増え、「不治の病」はかつてのものとなりました。治療方針や設備について、岡 智子血液内科副部長に聞きました。

 

 

血液内科には、現在、血液専門医が3人在籍し、リンパ腫や骨髄異形成症候群の患者さんなど常時30人前後の入院患者さんを受け入れています。2013年4月には、無菌病棟の10床すべてを特別な空調設備のある完全無菌室に改装し、県下最大級の規模となりました。多彩な移植法も積極的に導入し、患者さんに最適な移植療法を選択できます。

 

抗がん剤治療や移植で治癒を目指す

抗がん剤の開発が進み、白血病やリンパ腫に比較的よく効くため、多くの患者さんを治せるようになりました。また、化学療法のみでは治癒困難な場合は、骨髄移植などの造血幹細胞移植により、治癒を目指すことができます。

 

 

近年、治療薬だけでなく、副作用を抑える薬も進化し、激しい嘔吐で苦しむことも少なくなりました。副作用が出る前に予め症状を抑える薬を飲むなどの先回りした対応をしたり、複数の薬から選べるようになったりしたことで、昔と比べて、闘病中もかなり楽に過ごしていただけるようになりました。

 

血液の病気の中には、体への負担が大きいハードな治療を受けなければならない病気もありますが、それぞれの患者さんの年齢や体力に合わせ、きめ細やかに治療法を選択しています。一人ひとりに最適な治療を選択できるよう、新しい治療、多彩な治療に対して積極的に取り組んでいます。

 

京都大学とも連携しているので、同水準の検査や治療を和歌山県内で受けることができます。自宅のある地域で移植や長期入院ができると、家族のサポートも受けやすく、安心して治療ができます。

 

県下最大規模の無菌室

疾患や治療に伴って白血球の数が減り、免疫抑制状態になる患者さんのために、完全無菌室を用意しています。免疫力が落ちると感染症を引き起こす可能性が高くなるため、通常より空気がきれいな部屋で過ごしていただくことが大切です。

 

 

 

無菌室には空気中のばい菌を除去するためのファンが回っていて、部屋の中は常にきれいな空気が流れています。それ以外は普通の個室と同じで、冷蔵庫やテレビが備え付けられており、Wi-Fiも使うことができます。お手洗いのある部屋もあります。

 

長期入院のケアも

白血病であれば最低1ヵ月は入院となり、他の疾患と比べると、入院がかなり長期間にわたります。また、複数回の入院を繰り返さなければならないこともあります。期間は長いですが、今は病室からご家族とテレビ通話でお話したり、お風呂に入ったり、エアロバイクで筋力が落ちないよう軽い運動したりと、比較的自由に、日常に近い過ごし方ができます。

 

 

患者さんだけでなくご家族へもサポートし、治療期間を支えていきます。元の生活にすんなりと戻れるところまでを視野に入れていますので、安心して入院いただきたいです。

 

造血幹細胞移植後フォローアップ外来の開設

2015年より、移植後の患者さんのQOL向上のため、退院後の暮らしや療養の中で不安なことを相談できる専門外来を開設しています。この専門外来では、主に看護師が対応し、感染予防や社会復帰、症状のことなど、気軽に相談していただける場です。生活の中で気になることを解決し、生活の質を維持できるよう、一緒に考えていきましょう。

 

血液の病気も早期発見し、迅速に治療を開始することが重要です。治療開始が早ければ治癒率も高いのですが、遅れるとそれだけ悪い細胞が増えてしまい、副作用が強く出てしまったり、回復する可能性も低くなります。病気を疑う症状があったり、検査数値が良くない場合は、できるだけ早く専門の医師の診察を受けてください。

 

岡　智子（おか さとこ）

日本血液学会評議員・血液専門医・指導医。日本輸血・細胞治療学会評議員。日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医。医学博士。

趣味は、利き酒。学会で訪れた各地で好みの地酒を見つけたり、スーパーなどで新しい銘柄を見かけるとテンションが上がります。

 

 

血液の病気① ～意外と多い血液の病気～（2022年12月15日公開）

血液の病気② ～日赤に紹介されたら～（2023年1月19日公開）

血液の病気③ ～日赤での治療～（2023年2月16日公開）←今回