日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

PET-CT② 検査による被ばくについて

2024/02/22

日赤和歌山医療センターの放射線診断科には、現在、診断専門医7名と専門医を目指す医師4の計11名が在籍し、CTMRI、核医学検査などの医療用画像を使った診断や、画像を利用した治療を行っています。

 

20224月にはPET-CT装置を導入し、PET検査とCT検査を組み合わせたPET-CT検査と呼ばれる、がんの進行状態や再発・転移の有無などに対して、より深い診断ができるようになりました。

 

 

PET検査は放射線を含む薬剤を用いるほか、CT検査の撮影のため放射線被ばくもあります。今回は、PET-CT検査の被ばくの量や影響について、放射線診断科部副部長の尾谷知亮先生に話を聞きました。

 

 

PET-CT検査を受けることになった患者さんの中には、検査を受けることによりどれくらい被ばくするのか、気にされる患者さんもいらっしゃいます。確かに、放射線は人体に影響があるといわれていますので、その影響が気になるというのは当然です。

 

そこで今回は、PET-CT検査による被ばくについて、お話ししたいと思います。

 

 

患者さんに利益があるから検査が行われる

PET-CT検査を受けた患者さんは被ばくしますが、これは、医療被ばくといって病気の診断や治療につながり、患者さんに利益をもたらすことがはっきりしている被ばくです。患者さんの不利益になるものではありません。

 

私たち放射線診断・治療に携わる医療従事者は、患者さんがやみくもに被ばくしないよう、放射線の検査をするときには、検査の目的を確認して行っています。つまり、患者さんに不必要な検査は行われません。治療・診断のために、患者さんに利益があるから検査をしているということを、まず、ご理解いただければ幸いです。

 

 

PET-CT検査でどれくらい被ばくするか

では、PET-CT検査を1回受けると、どれくらい被ばくするのかといいますと、まず、投与するFDGという薬は体重によって投与量が変わりますから、体重によって放射線の被ばく量が変わります。体重が重い患者さんには多くの薬を投与します。それでも、だいたい10ミリシーベルト程度と言われています。他のCT検査などでも大きく変わりはない値です。

 

この10ミリシーベルトがどれくらいかというと、人は日常生活でも自然界から微量の放射線を受けているのですが、その量がだいたい1年間で2.4ミリシーベルト程度とされています。

 

日常生活を送るだけよりは、検査を受けると被ばくしてしまうと言えますが、環境省のホームページには「100~200ミリシーベルト以上の線量では、がんになるリスクが上昇するという科学的根拠が存在する」とされています。しかし、100ミリシーベルトに遠く及ばない10ミリシーベルト程度のPET-CT検査を受けることで、体に何かの被害が及ぶ可能性は低いと考えて構わないと思います。

 

(参考)環境省「被ばく線量と健康リスクとの関係

 

 

放射線は目に見えないため、怖いイメージがありますが、各施設で放射線の管理はしっかり行っていますし、基本的に、検査での被ばくは人体に影響がないとされていますので、安心して検査をしていただければと思います。

 

さて、次の回では、PET-CT検査が必要なケースや保険適用になる場合について、ご説明します。

 

 

尾谷 知亮(おたに ともあき)

日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本核医学会核医学専門医、日本インターベンショナルラジオロジー学会IVR専門医。

趣味は将棋です。将棋は9×9マスの小さな盤面で行われますが、指し手の組み合わせは星の数ほどあり、盤面では果てしない世界が広がっています。その中から「これぞ」という一手を選択することが醍醐味だと思っています。

 

 

PET-CT① 内容・流れ・注意点(2024年2月8日公開)
PET-CT② 検査による被ばくについて(2024年2月22日公開)←今回
PET-CT③ 必要なケースと保険適用(2024年3月7日公開)
PET-CT④ PET-CT検査を用いた健康診断やPET-CTドック(2024年3月21日公開)

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