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がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。
2019/09/17
平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。
がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。
今回から腫瘍マーカーについて説明していきます。
ここまでCT、MRI、超音波などの画像診断機器を用いた検査によるがん診断のお話しをしてきました。
その話を聞く中で、「もっと簡単な検査はないの?」
「血液検査や尿検査で、がんの診断ができれば良いのに…」
と思いませんでしたか?
その役割を担うのが、腫瘍マーカーです。
聞き慣れない言葉かもしれないので、詳しく説明していきます。
腫瘍マーカーとは
腫瘍マーカーは、がん細胞がつくり出す特殊な物質です。
体内にがんが発生すると、通常ではそれほど変化しないはずの数値が異常値になることがあります。その異常値をチェックすることで、がん診断をするのです。
検査の方法としては、がん細胞から血液あるいは尿中に漏れ出したマーカー量を測定します。とても簡便な検査で、健康診断や人間ドックでオプションで受けられることもあります。
現在では、50を超える多くの腫瘍マーカーが発見され、がん診断に用いられています。
腫瘍マーカーの問題点
ただし、です。
腫瘍マーカーの値だけでがんの診断がつけば申し分ないのですが、実はいくつかの大きな問題点があります。
まず初めに、かなり進行したがんでないと診断できません。
早期のがんでは、血液中に出ていないことが多く、出ていても量が少ないため測定できません。
そして、がんではない良性の病気でも上昇することがあります。
それぞれの腫瘍マーカーには正常値がありますが、それ以上の高い値が出た場合は、画像診断などの検査を行います。
そして、がんが生じているのか精査しなければなりません。
腫瘍マーカーの値がゼロ以上だと、がん?
がんの発見のきっかけになるかもしれない腫瘍マーカーですが、実際のところそれだけでは診断できず、画像診断等を併用することとなります。
良性疾患の細胞からも腫瘍マーカーが産生されるためです。
値が「ゼロだと安心」とか「ゼロ以上だとがん」というのは、いずれも間違いなのです。
例えば、男性がんの上位に躍り出た前立腺がんの診断に有用なPSA は、前立腺肥大症あるいは前立腺炎でも上昇します。
また、すい臓がんの診断に有用なCA19-9は、慢性膵炎、胆管炎などでも上昇します。
医師の判断を仰ぎ、画像診断などと合わせて総合的に診断しなければなりません。
精密検査を受けるようにしてください。
今回は、腫瘍マーカーの結果だけでは、がんかどうかの診断は難しいという話をしました。
では、どういうときに、腫瘍マーカーは役立つのか?
気になりますね。
次回は、腫瘍マーカーが役立つ場面、その有用性についてご説明します。
平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)
日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。
1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。