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『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。
2025/07/09
緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。
今回は、「緩和ケア」で行われる疼痛緩和について、ご紹介します。
緩和ケアとは、身体的もしくは精神的な苦痛を緩和させ・・・と聞くけれど、身体的な痛みって、本当に軽減できるんでしょうか? どんな方法があるんでしょうか?
痛みを軽減させる方法には、主に「痛み止め薬」「医療用麻薬」「神経ブロック」「緩和的放射線治療(緩和照射)」などの方法があり、痛みの程度、がんの進行度、痛みのある部位、生活スタイル、副作用などを考えて選択します。

「痛みをとる=痛み止め薬を飲む」というのは、イメージしやすいですね。コマーシャルやパッケージに「頭痛・歯痛には〇〇」「胃腸に優しく、早く効く」などと表示され、効果も知られています。がんの場合も、まずは「痛み止め薬」が用いられます。
がん患者さんの約70%が痛みを感じられ、痛みによるストレスは、とても大きいものだと言われています。痛みによるストレスが長引けば、そのストレスによってQOL(生活の質)を下げたり、最近の研究で、余命を短くする可能性があることも分かってきました。
痛みがあると、睡眠不足・食欲不振・気分の落ち込み・やる気の低下・生活活動の低下などにつながっていきます。そして、がんの進行に従って、痛みは次第に強くなり、痛み止め薬が効かなくなっていきます。だからと言って、なすすべがない訳ではありません。

痛み止め薬の次に、医師は医療用麻薬を提案します。
麻薬と聞くと、「中毒や依存症になるのでは?」「寿命が縮まりそう」「意味不明なことを口走るかも」などの怖いイメージが浸透し、避けられるなら医療用麻薬を使いたくないという声も聞きます。しかし、適切な用量をきちんと用いると、中毒・依存になることはありません。
むしろ、痛み止め薬を長期に飲み続けると、胃腸障害、肝臓・腎臓の機能低下などの副作用が出てきます。その副作用に比べると、医療用麻薬は臓器への影響がほとんどなく、痛みを取り除く効果も高いです。ですので、最近は、痛みの出はじめた早期から、医療用麻薬を使用することが多くなってきました。
そして、ほとんどの患者さんが「本当に痛くなくなった」「1日1回なので楽だ(2回の場合もあります)」「仕事中も、痛みが気にならない」「(痛みで)ずっと横になっていたけど、家事ができるようになった」「家族に笑顔で応対できるようになった」など、効果を実感されています。
医療用麻薬にも、作用の強いものと弱いものがあり、弱いものから少なめの量で開始します。痛み止めは、痛みのあるときだけ服用するのに対し、医療用麻薬は、痛くても痛くなくても24時間ずっと効いている状態を保つものです。
ですので、医療用麻薬で飲み薬の場合は、錠剤やカプセルを1日1~2回決まった時間に服用し、貼り薬は1日1回貼りかえるものが多いです。貼り薬のメリットは飲み忘れがないことです。しかし、いつも飲む薬がある場合は、一緒に服用することで飲み忘れを防げます。貼り薬も、皮膚のかぶれなどが出てくると、飲み薬に変更します。

また、同じ薬を続けると耐性が出てきて、効果が弱くなったように感じるため、定期的に医療用麻薬の種類をローテーションさせたりもします。入院中は、医療用麻薬を点滴することもあります。中には、吐き気や便秘などの副作用が出る人もいます。副作用が出ないように、医療用麻薬の量を加減したり、種類を変えたりして調整します。
痛みの感じ方は、人それぞれです。主治医から「体調いかがですか?痛みはありませんか?」と尋ねられたときに、いつから、どんなときに、どのくらいの痛みがあるのか、率直に伝えていただけると、適切な薬を処方してもらえます。
依存症などを不安に感じ、医療用麻薬の開始を遅らせようとする人もいますが、用量・用法をきちんと守って服用される真面目な人がほとんどなので、あまり心配いただかなくて大丈夫だと思います。開始時も、薬剤師から詳しい説明があり、開始してからも定期的に効果・副作用・管理状況などの確認があるので、安心して使用いただけます。
その後、医療用麻薬でも効かない強い痛みが出てきたら、医師は神経ブロックという注射を提案します。がん患者さんの約70%が痛みを感じ、そのうちの10%程度が神経ブロックを受けていると言われています。
神経ブロックは、痛みを感じる神経細胞自体を壊して、痛みを感じさせないようにする方法です。麻酔科医による施術となるため、県内でも実施している病院が少ないです。他院で治療されている場合や、在宅医療を受けている場合、当医療センターの緩和ケア内科や麻酔科にご紹介いただくこともあります。

この記事を通して、がんの痛みが強くなっても、取り除く方法があることを知っていただければ幸いです。そして、少しでも安楽に過ごしていただけることを願っています。
次回は、「緩和照射」についてご紹介します。
吉村 聖子(よしむら せいこ)
麻酔科部副部長。
日本麻酔科学会麻酔科指導医、日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医、日本緩和医療学会緩和医療認定医。
好きなキャラクターはスヌーピー。自宅には、身長2mの巨大な彼がソファに鎮座しています。