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『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。
2026/02/11
緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。
今回は、がん患者さんに対する心理的サポートについて、説明していきます。
当医療センターでは、手術や抗がん剤治療、放射線治療など、がんの治癒を目指して入院する一般病棟と、主に緩和ケアを提供する緩和ケア病棟があり、それぞれで心理的サポートを行っています。
がん治療中の「不安」と言っても、原因はさまざまです。その不安が治療方針についてであれば、認定看護師が伺いますし、初めての抗がん剤治療に関する不安であれば、認定看護師や薬剤師がお伺いします。仕事や経済的な不安であれば、社会福祉士が対応します。不安や抑うつがあったり、気持ちの整理がしたいなどの要望があれば、臨床心理士が相談にのります。

一般病棟では、最後まで治療を受けられるように心理的サポートを行っています。まずは、現状のつらさを吐露できる環境を作ります。患者さんの言葉や思いをそのまま受け止め寄り添うのはもちろんですが、患者さんが自ら話したいという気持ちの強さや心の揺らぎ、周囲のサポート体制などに留意しながらお話を伺っています。つらさを言葉にしたくない患者さんには、無理に聞き出したり、心に踏み込んだりせず、言葉にできた思いに寄り添うようにしています。
ときに、患者さんがされてきたつらさへの対処法を教えてもらったり、趣味や熱中していること、好きなことなどを伺うこともあります。例えば、元々おしゃべりが好きな人であれば、少し雑談したり、運動が好きな人なら、院内の中庭を散歩して気分転換しながら、その人らしさを思い出し、心のエネルギーを補給してもらえるように配慮しています。患者さんとのそうした関わりの中で立ち現れてくる思いや心の痛みを、受け止めて関われるように努めています。臨床心理士が関わるというと、「傾聴(話を聞く)」というケアだけだと思われがちですが、それぞれの患者さんに合った柔軟なケアを心がけています。

人間には、困難な状況になっても、それを乗り越える力が備わっていると言われていて、レジリエンスと呼ばれています。転んで擦りむいてしまい、血が出たとしても、かさぶたができて、しばらくすると治ってきます。心も同様で、つらくて毎日涙がこぼれて、笑うことさえできないときもありますが、また、笑えるようになっていきます。臨床心理士は、そのレジリエンスを高めるお手伝いをしています。
緩和ケアチームの臨床心理士がサポートする対象は、一般病棟や緩和ケア病棟(別名:ひなげし)で入院中のがん患者さんです。がん以外で入院している患者さんは含まれません。しかし、がんの患者さんも、がん以外の患者さんも、退院後、ご希望があれば、心療内科の自費カウンセリングに通うことは可能です。
では、入院中のがん患者さんへの心理サポートについて、具体的に説明していきます。
緩和ケアチームが関わっている患者さんやご家族全員のお話を伺っているわけではなく、ほとんどの場合、病棟や緩和ケアチームの看護師が患者さんの状況を確認し、患者さん自身や周囲が必要だと感じたとき、臨床心理士につないでくれます。入院してすぐの場合もあれば、しばらくしてから患者さんや周囲が必要性を感じて、臨床心理士が面談することもあります。

面談は患者さんによって異なりますが、週に1~2回ほど訪室します。短い場合は10分くらい、長くても60分程度の時間です。当医療センターの平均在院日数は10日なので、1回だけの場合もあれば、複数回お話を伺う場合もあります。
訪室した際、患者さんの体調が思わしくなかったり、話したい気分でないときは、日時を改め、無理しないように、安心して話せることを優先しています。
大部屋の患者さんであれば、病棟にあるカンファレンス室(病状を説明したりする部屋)などの個室で、安心して話せるようにしています。しかし、患者さんによっては、「大部屋でも良い」とおっしゃられることもあるので、そのときは、同室の患者さんの邪魔にならないように、また、面談される患者さんのプライバシーに配慮して、声の大きさに気をつけて、お話を伺うようにしています。
入退院を繰り返す患者さんの中には、「また来てほしい」と継続的なサポートを希望される人も少なくありません。
ご家族が精神的に弱っているようであれば、患者さんに許可をいただき、ご家族のお話を伺うこともあります。患者さんの闘病を支えるご家族の心の負担が少しでも軽くなることを願っています。

一般病棟でお会いしていた患者さんが、緩和ケア病棟に入院する場合も、同じ臨床心理士がサポートを続けます。一般病棟同様に、無理しないように、体調が良いときにお話をうかがったり、屋上庭園への散歩に同伴したりしています。
次回は、ご家族の不安に寄り添う「がん相談支援センター」について、ご紹介します。
倉山 正美(くらやま まさみ)
臨床心理士(公認心理師)。
好きなものは、木漏れ日です。神社などにある楠の大木や、冬が近づいてきたと感じる金木犀の香りも好きです。