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『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。
2025/10/08
緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。
今回は、がん治療中のリハビリや、痛みの緩和にもなるリハビリについて、ご紹介します。
がんと診断された直後は、「なぜ、がんになったのか」「このがんになったのが、なぜ自分なのか」「つらい治療や痛みをしなければならないのか」「余命は、どのくらいなのか」など思い悩み、気分も落ち込みやすくなります。
がんの治療がはじまると、通院後、手術が終わった後、退院後などは、どうしても疲れやすくなったり、食事量が低下したりしやすいです。手術の傷口や痛みをかばって動いたり、抗がん剤治療で倦怠感などがあって体が動きにくくなれば、それまでと同じ生活がしにくくなります。
動きにくさを予防したり、回復を促すための手段に、リハビリテーションがあります。

具体的にどういったことがリハビリで行われているのかというと、体力が落ちていればストレッチなどの運動をしたり、呼吸困難感があれば、呼吸時のつらさを和らげ、楽に呼吸するための呼吸法を指導したり、一緒に練習したりします。これらを専門的に呼吸リハビリテーションと言います。
また、飲み込む力が落ちているときには、飲食物を飲み込む機能を鍛えるために、口腔体操や嚥下筋トレーニングをしたり、飲み込み方を指導したり、発声が困難な場合は発声トレーニングも行います。こちらは、嚥下リハビリテーションと言います。

当医療センターには、厚生労働省が認定している“がんによる障害への運動療法や生活機能低下への予防・改善等を図る目的で促進している『がんのリハビリテーション研修』”を修了した理学療法士や作業療法士が25名以上おり、がん患者さんのQOL維持に取り組んでいます。
主治医・担当医・病棟スタッフから、がんで入院中の患者さんに「がんのリハビリ」の依頼が緩和ケアチームにあった場合は、筋力や移動能力の維持を目的に、日常生活動作練習(理学療法・作業療法)を行います。また、日常生活動作を行いやすいような方法(動き)、補助具の提案もしています。

がん自体やがん治療により痛みがある場合、第1選択は薬物療法(薬による緩和)となりますが、温熱などの物理療法やリラクゼーション、簡単な運動でも、気分が和らぎ、痛みが少し緩和されることもあるので、提案することがあります。
緩和ケア病棟「ひなげし」の患者さんのところに出向くこともあります。看護師と一緒にリラクゼーションを行ったり、呼吸リハビリを行うことが多いですが、最後までトイレに自分で行きたいという患者さんには、歩行や座位を保つための運動を行ったり、ご家族と介助の方法を考えたりしています。
緩和ケアチームでは、「少しでも多く患者さんとコミュニケーションを取ること」「患者さんの気持ちを確認しながら取り組むこと」をモットーにしています。
緩和ケアチームのメンバーが訪れた際には、気軽にお尋ねいただき、相談したり、話をしてみてください。
次回は、「人生会議(ACP)」の重要性について、ご紹介します。
高根 良輔(たかね りょうすけ)
理学療法士。がんのリハビリテーション研修修了者、認定理学療法士(運動器)。
好きなことは、数年前からはじめたサーフィンです。下手ですが、自然の中で身体を動かすことで癒されています。