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『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。
2025/11/12
緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。
第11回は、自分自身で意思決定できなくなるときのことを見据えて、一緒に考えてみましょう。
「アドバンス・ケア・プランニング」または「ACP」という言葉を、聞いたことがありますか?

がん治療の経過では、気力の低下や痛み、薬の副作用などの影響で、意識がはっきりしなくなる場合もあります。ACPは、そのような将来の変化に備えて、今後受けたい医療やケアを事前に考えておく取り組みのことを言います。日本語では「人生会議」と呼んでいます。
このような考え方が出てきた背景には、「人生の最終段階において、約70%の患者さんが、意思決定ができない病状になっている」という報告や、「本人の望んでいない延命治療が始まってしまった」というケースなどがあります。

また、意外に思われるかもしれませんが、「自身の希望する医療内容を記した書類を準備しておくだけでは、役に立たなかった」という研究報告があります。「書類が見つからなかった」「家族が、記載内容とは異なる医療行為を希望した」というケースがあるのです。つまり、希望する内容を1人で決めておくだけではなく、人生観や価値観も含めて、前もって親しい人や信頼できる人(家族、医療従事者など)と話し合っておく過程そのものが、その人の思いを医療に反映させるために重要なのです。
では、どのように始めていけばいいのでしょうか?
その人自身の心の準備ができていない状況で、周りから話を進めようとし過ぎると、逆に、ご本人が将来への希望や意欲を見失ってしまう心配があることも報告されています。つまり、元気なときから、一人ひとりが「自分で意思決定ができなくなったときに、どうして欲しいか」に思いを寄せてみることが、一番大事なのです。これは、考えてみると当たり前ですよね。
ただ、健康なときに、自身の人生の最終段階における医療を想像することは、医療従事者であっても容易ではありません。また、昨日と今日で、医療への希望が変わるのも、おかしなことではないでしょう。
そう考えると、「こんなことを考えても、意味がないのでは」と感じてしまうかもしれません。そこで、「イザというときに、あなたの代わりにあなたの意思を推定して欲しいと思える人」を選んで、その人にその旨を伝えておいてください。お子さんのいる人であれば、「うちの子は、わざわざ話さなくても分かってくれているはず」とは思わず、機会を作って話してみるとよいでしょう。夫婦間でも、同様です。

まずは、これだけでも十分です。その日から、その人はさりげなく、あなたの思いを汲み取ろうと接してくれるかもしれません。また、お互いに気になりながらも言い出せなかったことが、話しやすくなるかもしれません。
もし、一歩踏み込んで話しておこうと思えたなら、あなたが大切に考えていること(趣味を生き甲斐として続けたい、家族に負担をかけるけど家で過ごしたい、社会的な役割を後任として任せたい人がいる、身の回りのことはできるだけ自分でしたい、経済的な負担をかけさせたくないなど)を、伝えてみてください。
子ども世代から親世代に尋ねる必要があるときは、少しためらうかもしれません。かかりつけ医がいたり、入院中であったりするなら、医師や看護師、社会福祉士などが相談相手になってくれます。介護保険サービスを受けていれば、ケアマネージャーや介護福祉士に相談するのも一案です。また、「終活」「エンディング」などのノートを作成・配布する自治体も増えてきましたので、地域包括支援センターなどに問い合わせてみても、いいかもしれません。

厚生労働省は、11月30日(いい看取り・看取られ)を「人生会議の日」と定めています。皆さんも、少し先のことを大切な人と相談してみませんか?
次回は、がん治療中の食事療法について、ご紹介します。
阿部 哲也(あべ てつや)
日本心身医学会心療内科専門医・研修指導医、公認心理師、産業医。
好きなことは、囲碁と温泉・サウナ巡りです。