『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。

がん告知時のショックに対して

2026/01/14

緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。

今回は、がん告知時の心理とその対応について、説明していきます。

 

がんの診断を受けて、たいていの人はショック・落ちこみ・不安などで気持ちが揺らぎます。

 

「なぜ、自分ががんになったのか」「なぜ、このがんになったのか」「なぜ、今、この年齢でなったのか」「治療はどのように進むのか」「治療に耐えられるのか」「治療によって、仕事や家族関係はどうなるのか」「治療による見た目の変化を受け入れられるのか」「いつまで自分は生きられるのか」など、さまざまな気持ちが湧き上がります。

 

「がん家系だから、いつか自分も…」と予測していた患者さんでも、やはりショックを受けるものです。ましてや、家族・血縁者にがんを患った人がおらず「青天の霹靂だ」という患者さんであれば、その衝撃は強く、大きなダメージを受けることでしょう。

 

 

診察室で、医師の説明の途中から「頭が真っ白になって、どうやって帰ったのか覚えていない」という人もいます。その衝撃は、「金属バットで頭を殴られたような」と例えられることもあるほどです。もし、頭を殴られたら、その直後は、その痛みを堪えることに必死で、周囲で起こっている出来事にまで気が回らないでしょう。心が傷ついたときも全く同じです。病院では、きちんと説明を聞いて「自分は大丈夫」と思っていても、家に帰ってから次第に落ち込んでくることもあります。

 

 

がん告知によるダメージを受けた場合は、本人のつらい気持ちを誰かに受け止めてもらうことが大切です。それは、家族や友人かもしれません。また、職場の人たちの理解かもしれません。

 

病気の話題を必要以上に話したくなかったり、一人でゆっくり考えたいという人もいるでしょう。何かしてあげたいという周囲のペースに巻き込まれて、しんどかったという人もいます。多くの場合、本人の気持ちに寄り添い、そばで見守ってくれる思いやりが力になります。時間の経過とともに自分がどうすれば良いかと考えられるようになり、徐々に本来の姿を取り戻せます。そして、自分の病気を受け入れたり、治療に向き合うことができるようになります。

 

しかし、社会的なサポートが薄い場合は、自分の心の変化に戸惑い、本来の自分を取り戻すことができないまま自分を見失ってしまいます。不眠・不安障害(うつ傾向)などの精神症状が出てきたり、不意に涙がこぼれたりすることもあるでしょう。

 

 

告知されたときの心の痛みは十人十色です。「傷ついた」という場合でも、何が傷ついたのか、どのように傷ついたのか、その傷つきが何に影響するのかは、人それぞれ異なるのです。患者さんがどのような状況で、どのように体験し感じたのか、丁寧に耳を傾け、一緒に考えていくことが、臨床心理士の役どころです。

 

本来の考え方や感じ方、大切にしてきたことなどを伺ったり、病気を抱えながらも送りたい生活を一緒に模索することで、少しずつ気持ちが落ち着いて、病気を受け止められるようになってきます。患者さんが「病人」ではなく、「(病気を抱えた)私」として自分を取り戻していくよう、お手伝いをしています。

 

また、「不安」と言っても、様々な内容があります。不眠や精神症状が強く出る人、治療法で悩む人、仕事や金銭面で不安を抱える人、食事摂取がままならない人、動作時の痛みがあって動くことが不安な人などです。

 

 

患者さんのニーズや状況・不安・心配事の種類によって、心療内科医や臨床心理士、がんの専門看護師・認定看護師、社会福祉士、管理栄養士、理学療法士・作業療法士などからなる緩和ケアチームのメンバーが、それぞれの得意分野でアプローチしていきます。

 

現代の医学で十分に治癒を目指せるがんであっても、手術で傷痕ができたり、治療や副作用で見た目が変わったり、悩んで涙が止まらなくなったり、長期に仕事を休むことなどで、大きなストレスを抱えると、その後のQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。そのため、がんが治るだけでなく、がんによる心理・社会的な苦痛をケアすることが大切です。治癒するがんであっても、がん告知の時点から緩和ケアを受けることで、患者さんのQOLの向上や、前向きに生活していただくための支援を目指しています。

 

次回は、がん患者さんに対する心理的サポートについて、ご紹介します。

 

 

倉山 正美(くらやま まさみ)

臨床心理士(公認心理師)。

好きなものは、木漏れ日です。神社などにある楠の大木や、冬が近づいてきたと感じる金木犀の香りも好きです。

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