『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。

食への思いに寄り添って

2025/12/10

緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。

 

今回は、がん治療中、手術後や抗がん剤治療など、様々な要因で食欲不振になり、食事療法が必要な場合の対応をご紹介します。

 

人は、食事などから栄養を摂って、体内の臓器も含めて体を動かしています。植物のように必要な栄養を自分で作ることができないので、外から栄養取ることが必要です。

 

 

ですので、口から食べることは生きることに直結しており、栄養を摂らないと生きられません。生まれたときから、誰もが食べていますが、食生活は一人ひとり異なります。

 

長く培われてきた食環境の中から、食に対する思い出や味、また、おいしいものを食べたときの満足感、食べられたという充実感など、食べることは、身体的に必要なだけでなく、精神的な部分にも少なからず影響があります。

 

栄養状況の改善が体力の維持・向上につながり、治療効果を上げるベースになると考えます。健康なときは、食べることがあまりにも当たり前すぎて見逃されがちですが、がん治療が始まり、思いがけず、想像以上に「食事がとりにくい」「食欲がない」「味覚が変わった」「口内炎ができた」「下痢が続く」などの副作用症状によって食事量が減ってしまうと、「このまま食べられなくなってしまうのではないか」と不安な気持ちになる人もいます。そして、その不安感から、さらに食欲低下につながってしまう場合もあります。

 

 

その上、現在は健康情報があふれています。「この食品を食べると、がんになりやすい」「この食品が身体によい」「この食べ方がよい」など玉石混交の情報を取捨選択できず、どうしたらよいのか不安になることもあるようです。食欲がなくなってくると、家族や周りから「何か食べたいものはない?」と尋ねられても、何が食べたいのかすら思いつかない状況になり、家族も不安になっている場合が多い現状も垣間見えてきます。

 

当医療センターでは、主治医・担当医から「食べること」に関して必要と依頼された場合や、がん治療で入院されていたり、通院で抗がん剤治療を受けている場合に、栄養相談を行っています。管理栄養士は、生活環境や好き嫌い、食習慣等を聞き取り、症状にあわせた食べ方を提案したり、食べづらくなったり、食べられなくなることへの不安に対応し、「食べられた」を増やしていくお手伝いをしています。相談の希望があれば、主治医・担当医に尋ねてみてください。

 

 

ここで、相談の一部を紹介します。

食欲がない場合には、食事時間に縛られず、食べられるときにパクリと口に入れられそうな食品を提案します。冷たくスッキリとした味、酸味のきいたサッパリとした味、のどごしの良いもの、果物のように水分が多くシンプルな味のものを提案したりしています。

 

味覚の変化がある場合には、「どの味がわかりにくいのか」「どの味であればわかるのか」を聞き取り、例えば、醤油が金属のような味に感じる場合は醤油の量を控えて、ごまやレモン、生姜などの香りのよい食品を一緒に食べると、食べやすくなったり、後味もよくなるので、具体的な食品を挙げて提案しています。また、嫌いでなければ、酸味は食欲増進効果があるので、酢などを利用した料理(南蛮漬け・マリネ・酢の物・ピクルスなど)を提案したりしています。

 

 

多くの患者さん・ご家族の相談を受けてきた経験の蓄積から、「思いもつかなかった」「まさかと試したら、食べられた」と言っていただくこともあり、励みになっています。

患者さん一人ひとりに合ったアドバイスができるように努めています。

 

「少し食べられた」が増えることで、食事摂取量の安定・維持につながり、不安な気持ちも和らぎます。そして、摂取量が増えることによって、栄養状態の維持・向上につながり、結果的に、治療の継続にもつながっています。

 

管理栄養士は、『食べること』をはじめ点滴・経鼻経管栄養・胃ろう(胃管栄養)など、それぞれの患者さんに適した栄養管理を一緒に考えていきます。

 

 

次回は、がん告知時のショックの心理とその対応について、ご紹介します。

 

 

山本 陽子(やまもと ようこ)

管理栄養士。がん病態栄養専門管理栄養士。

好きなことは、あまり器用ではないので、手芸に苦手意識があったのですが、旅行先で作り方を見ながらカゴバックを完成させました。ガタガタのところもありますが、お出かけに携えると、ちょっと心が浮き立ちます。

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