日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

PET-CT① 内容・流れ・注意点

2024/02/08

日赤和歌山医療センターの放射線診断科には、現在、診断専門医7名と専門医を目指す医師4の計11名が在籍し、CTMRI、核医学検査などの医療用画像を使った診断や、画像を利用した治療を行っています。

 

2022年4月にはPET-CT装置を導入し、PET検査とCT検査を組み合わせたPET-CT検査と呼ばれる、がんの進行状態や再発・転移の有無などに対して、より深い診断ができるようになりました。

 

そこで今回は、PET-CT検査の内容、有用な場合について、また、自費で受けられるPET-CTドックなどについて、4回にわたり放射線診断科部副部長の尾谷知亮先生に話を聞きました。

 

 

20224月に導入したPET-CT装置では、PET検査とCT検査を組み合わせた検査ができるようになりました。まず、PET検査を説明すると、放射線薬剤FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖に類似した薬剤を用いたPET検査薬)を患者さんの体内に注射等で投与し、FDGが体内で集まっている部位を映し出して診断する検査です。がん細胞に糖分が多く集まるという特性を利用し、FDGが、がん細胞に集まったところで画像を撮影し、集まり具合を診断します。

 

 

PET-CT検査は、PET検査と合わせてCTでも撮影し、病気がより正確に診断できるように2つの検査の画像を重ねて診断していく検査となります。PETCTが一体となったPET-CT装置を利用すると一度の検査で画像を重ねられるので、短時間でより正確な診断につなげられます。がんなどの悪性腫瘍の診断に有用な検査であり、当医療センターでは1日平均6件の検査が行われています。

 

PET-CT検査については、前院長による「ドクターヒラオカのがん茶論」でも解説されています。併せて、ご一読ください。

 

 

PET-CT検査の流れ 検査前から検査後まで

さて、PET-CT検査を実際に受けるとなれば、検査前に少し知っておいていただきたいことがあります。検査を控えている患者さんにはご説明しますが、今後、検査を受ける際の参考に、ぜひ、最後まで読んでいただければ有難いです。

ここでは、当医療センターでの検査に沿ったお話しをしますが、どの病院でもだいたい同じだと思います。

 

検査前日

激しい運動は控えてください。筋肉を激しく使わない散歩や日常生活での動作は問題ありません。また、糖尿病の薬やインスリンの注射は、一時的に中止となることもあります。主治医や看護師と相談の上で個別にお伝えしています。

 

検査6時間前

糖分を含む飲食は禁止で、絶食となります。これがいちばん重要な点です。

検査の特性上、糖分を摂取すると、体の中でインスリンという糖代謝に作用する物質の働きが活性化するため、体内に投与する薬が、病気の場所とは違うところへ集まってしまい、正しい診断ができなくなります。そのため、もし、飲食をしてしまっていたら、場合によっては、その日の検査はできなくなることがあります。

 

 

検査1時間30分くらい前に病院へ

看護師から、説明や問診があります。血糖・体重も測定します。

 

検査1時間前

検査薬であるFDGを注射し、安静室で検査まで待機となります。

リクライニングシートがあり、ゆったりと快適に過ごしていただけるよう配慮しています。待機中はお喋りや読書も控えていただき、リラックスして、ウトウトしながら過ごしていただくのがいちばん良いです。喋ったり、脳を使ったりすると、薬剤が脳や声帯に集積する可能性があり、病変がわかりづらくなるからです。

 

検査10分前

トイレに行き、排尿していただきます。薬剤を投与して1時間経つと膀胱に自然と薬剤が溜まっていき、膀胱の様子が見えづらくなるためです。

 

検査中

2030分程度の時間がかかります。

閉所恐怖症や腰痛等で安静にすることが難しい場合は、問診時に看護師へお伝えください。閉所恐怖症の人には、慣れるために検査台に乗ってもらったり、横になるのが辛い人には、撮影時間を短くする工夫をしたりしています。

 

(場合により)2回目の撮影

場合によっては、時間をおいてから、2度目の撮影をお願いすることがあります。2つの画像を比較することで、よりよい診断に結びつくことがあるためです。不安に思われたり、面倒に感じるかもしれませんが、ご協力をお願いします。

 

 

検査後

安静室で30分ほど待機いただいた後、帰宅となります。

待機時間があるのは、患者さんに投与した薬剤が体を通して微量の放射線を出すため、近くにいる人を被ばくさせてしまう可能性があるためです。投与から2時間で放射線の対外への放出は半減するといわれていますので、検査後30分の安静で、かなり放射線を出す力が減っている状態で帰っていただきます。尿からも薬が排出されるので、お水をこまめに飲んで、トイレにいく頻度を増やすと、薬の排出を早められます。

 

帰宅後

安静時間を取った後でも、体内に残った薬から周囲の人を被ばくさせてしまう可能性があります。人とは12メートルほど距離を取っていただき、妊婦さんやお子さんには近づかないようにしていただきます。

 

時間がかかり、注意点も多い検査ですが、ご理解いただければ幸いです。

次回は、検査による被ばくの影響についてご説明します。

 

 

尾谷 知亮おたに ともあき)

日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本核医学会核医学専門医、日本インターベンショナルラジオロジー学会IVR専門医。

趣味は将棋です。将棋は9×9マスの小さな盤面で行われますが、指し手の組み合わせは星の数ほどあり、盤面では果てしない世界が広がっています。その中から「これぞ」という一手を選択することが醍醐味だと思っています。

 

 

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PET-CT② 検査による被ばくについて(2024年2月22日公開)
PET-CT③ 必要なケースと保険適用(2024年3月7日公開)
PET-CT④ PET-CT検査を用いた健康診断やPET-CTドック(2024年3月21日公開)

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