がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

再発がんや転移の診断にはPET検査

2019/05/21

これまでに、CTやMRIに関する検査の特徴や有用性についてお伝えしてきました。

今回と次回はPET検査の話題です。

 

さて、皆さんはPET検査をご存知ですか?

同じ発音である動物のペットと混同されてしまうこともありますが、ここでのPETは、「positron emission tomography (ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)」の略。

 

日本語で書くと漢字ばかりになるのですが、「陽電子放射断層撮影」と呼ばれています。

 

がんの有無を検出する検査方法の一つですが、もちろんそれ以外の診断もできます。最近は、パーキンソン病や認知症など脳疾患への展開も期待されています。

 

とはいえ、最も活躍しているのは、やはり、がんの診断です。

 

では、PET検査の仕組みや特徴について説明していきます。

 

PET検査の方法と特徴

 

PET検査は、簡単にいうと特殊な薬剤を体内に入れ、がん細胞に目印をつけていく検査です。その目印を専用の機械で撮影することで、どこにがんがあるかを発見します。

 

もう少し詳しく説明しましょう。

 

体内に投与するのは、放射線を出す物質を含んだ放射性薬剤です。

 

そのPET検査用の薬剤を静脈注射によって体内に投与し、身体のすみずみまで薬剤を行きわたらせると、薬剤に含まれた放射線物質ががんの部分に集まってきます。

 

その後にPET装置で全身を撮影し、分布を画像化し、診断します。

痛みもなく、一度に全身の検査を終わらせられる先端技術です。

 

これによって、機能の異常を診ることができます。

CT検査では形の異常を診ていましたが、PET検査では機能の異常を診ているのです。

 

PET検査の仕組み

 

検査の方法を説明する中で物質が集まってくると書きましたが、なぜ集まってくるのか、とても不思議ですよね。

 

これはがん細胞が、エネルギー源であるブドウ糖を正常な細胞に比べて多く取り込む性質に着眼したことによります。その代謝機能が活発かどうかを見ることによってがんを診断します。

 

PET検査が得意なのは、再発がんや転移の診断!?

一般的には、ブドウ糖代謝が高まっている再発がんの診断で、PET検査の有用性が高いとされています。その一方で、ブドウ糖代謝が低いことが多い早期がんの診断はPET検査の得意とするところではありません。

 

つまり、PET検査は「がん」の転移を含めた「がん病巣の広がり」や「がんの再発」を見るためには大変有効な検査といえます。早期がんの発見が重要である「がん検診」にはあまり向いていません。

 

早期がんに対しては、食道・胃・大腸であれば内視鏡検査。肺ではCT検査が優れていますので、そちらの検査を受けましょう。

 

当センターではPET検査を行っていませんが、必要な場合は主治医が同市内にある2ヵ所の病院へ速やかに検査を依頼し、正確な診断と早期治療を心がけています。

 

さて、次回は実際にPET検査で得られる画像の解説と、PET-CT検査の有用性についてです。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員なども務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

 

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日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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