日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

血液の病気① ~意外と多い血液の病気~

2022/12/15

日赤和歌山医療センターの血液内科部では、血液疾患全般を対象に診療を行っています。血液内科は貧血などの身近なものから骨髄移植などの高度な治療が必要な病気まで幅広く扱い、設備も必要なため、大規模な医療機関にしかありません。

 

当医療センターには、現在、血液専門医が3名在籍し、県下でも充実した設備で治療を行っています。3回にわたり、岡 智子 血液内科副部長に、血液の病気と治療について伺います。

 

 

当医療センターの血液内科は、悪性リンパ腫の治療実績が多いほか、骨髄移植や末梢血幹細胞移植などの高度専門治療も行っています。また、地域の先生方と連携して、外来での検査や診察、救急患者さんの受け入れまで、多くの血液疾患患者さんを診療しています。

 

血液の病気は広くは知られていませんが、数多くの疾患があり、症状や治療法もさまざまです。血液検査からは血液の病気はもちろん、それ以外の体の状態の把握にもつながりますので、定期的に受けていただきたいです。

 

病気の種類と代表的な疾患

血液の細胞成分には白血球・赤血球・血小板があり、血液の病気も大きく3つの種類に分けられます。例えば、白血球に関わる病気でよく知られているのは白血病です。白血球は菌やウイルス、カビなど体の中へ侵入してくるものを攻撃して私たちの体を守ってくれていますが、白血球が異常に増えたり減ったりしているのは、病気のサインだと思われます。一般的に、白血球の値が上がるのが白血病ですが、実は下がってくるタイプの白血病もあります。治療も抗がん剤だけでなく移植が必要なこともあります。経験豊富な医師による正確な診断が大切です。

 

 

白血病は、一昔前テレビドラマなどで題材になったこともあり、怖い病気というイメージがあると思いますが、治療の進歩によって急性白血病でも中には長期生存率が上昇し、治癒が可能なタイプもあります。検査方法も日々発達してきていますから、現在では白血病の前段階でも見つけられるほどになっています。

 

複数の種類の貧血

皆さんにとって身近にある血液の病気といえば、貧血ではないでしょうか?

貧血は、体の組織に供給される酸素量が減少することによって頭痛やめまい・疲労感などの症状が出る病気です。スポーツをしている人は酸素をたくさん消費するので、需要量に比べて供給量が追いつかないために貧血症状が出ることがあります。年齢が若いと、成長過程で通常より多くの鉄が必要になり、症状が出てくる人が多いです。

 

 

ただ、貧血にも複数の病気があり、赤血球に含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する鉄欠乏性貧血のほかにも、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する再生不良性貧血など悪性度の高い貧血もあります。種類によって治療も異なり、鉄剤を飲む、ビタミンを補う、ステロイドを入れる、免疫抑制剤を使うなどさまざまです。

 

悪性リンパ腫の治療

当医療センターでは、悪性リンパ腫の診療が圧倒的に多いです。白血球の中のリンパ球という細胞ががん化する病気で、特定のウイルスが原因のものもありますが、大部分は、はっきりとした原因が解明されておらず、誰でもかかる可能性があります。

 

患者さんは、地域のかかりつけ医の先生が腫れや発熱などの症状から病気を疑い紹介されて来られたり、消化器内科や整形外科など他科の検査や診察で見つかって院内紹介されたりして診察するケースが多いです。医療の進歩によって、悪性リンパ腫も約半数が治癒の可能性があると考えられるまでになってきたので、できるだけ早い段階で病気を見つけることが大切です。

 

血液の病気と生活習慣病

血液の病気でリスクが高いのは、他の疾患と同じく糖尿病の患者さんです。糖尿病の患者さんは血管がもろくなっているため、すぐに薬が使えなかったり、血糖コントロールが不安定で感染症を引き起こしやすかったりして、治療効果が出にくいです。糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病は、血液・血管によくないことが多いので、健康診断などで指摘されたら、食事を見直したり、適切な治療を受けたりして、悪化しないよう気をつけていただきたいです。

 

 

早期発見が大切

血液の病気も、早期発見・早期診断が回復への近道です。治療が遅れると血液中に悪い細胞が増えるため、使用する抗がん剤の量を増やしたり、強度を上げたりする必要があり、それに伴って副作用も多くなってしまいます。また、少しでも若く体力のあるうちに治療に入ることができれば、治療が楽に感じられることでしょう。

 

ただ、血液の病気があったとしても、痛みなどのわかりやすい自覚症状がないことがほとんどで、「年齢のせいで、疲れやすかったり、だるいと感じるのかも?」「貧血くらいなら、大丈夫」と考えてしまう人も多いのが現実です。しこりやむくみがあっても、マッサージなどで解消できるものと考えて、受診が遅れる人もいます。

 

 

血液検査の結果が思わしくなかったり、疲れが取れない、微熱が続くなど、体のどこかに違和感が出てきたりしたら、放っておかず、かかりつけ医の先生に相談して定期的に検査を受けてください。鉄分補給のサプリメントなども、自己流で飲みすぎると体に負担がかかり、体に良くない作用がでることもあります。医療機関を受診し、相談してください

 

かかりつけ医の先生に診察してもらったり、健康診断の結果が連続して悪い場合は、紹介状をもらって、専門的な設備のある病院で検査や診断を受けることをおすすめします。

 

岡 智子(おか さとこ

日本血液学会評議員・血液専門医・指導医。日本輸血・細胞治療学会評議員。日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医。医学博士。

趣味は、利き酒。学会で訪れた各地で好みの地酒を見つけたり、スーパーなどで新しい銘柄を見かけるとテンションが上がります。

 

 

血液の病気① ~意外と多い血液の病気~(2022年12月15日公開)←今回

血液の病気② ~日赤に紹介されたら~(2023年1月19日公開)

血液の病気③ ~日赤での治療~(2023年2月16日公開)

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!