日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

認知症を知ろう④ 認知症の予防

2023/06/22

日赤和歌山医療センターの脳神経内科は、脳、脊髄、神経、筋肉の病気をみる内科です。外来、入院などで毎日多くの患者さんを診療しています。地域のかかりつけ医からの紹介も積極的に受けています。

 

高齢化に伴い増加傾向にある疾患に、認知症とパーキンソン病があります。アルツハイマー型の認知症は、有病率が今後もますます増えいくと予想されています。

 

認知症の進行を遅らせる予防について、山下 博史 脳神経内科部長に伺います。

 

 

認知症の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、60歳から5歳ごとに有病率が2倍ずつ増えています。発症すると、進行性の病気のため年月の経過とともに様々な症状が出現し、現時点では、残念ながら治癒することはありません。そのため、できる限り予防に努め、症状を悪化させないことが大切です。

 

生活の中で予防を

アルツハイマー型認知症には、症状を緩和する投薬治療もありますが、日々の生活の中で症状を悪化させないように気をつけたり、工夫したりするのも大切で有効な方法です。

 

例えば、家にひとりでいる時間が長く、誰とも話もせずに頭を使わずに過ごすと、認知症は進行しやすいです。頭を働かせるような工夫をしてみましょう。脳を活性化させるための内容は何でも構いません。趣味を楽しむ、部屋を片づけたり家事を工夫したりして生活を整える、自治会活動やボランティアなどで地域に関わる、ペットの世話をするなど、好きなことや続けられることを取り入れてみてください。また、脳へのインプットを増やすと脳が活性化するため、難聴がある人は補聴器をつけ、しっかり音を聞くようにしてください。

 

 

頭を働かせることが認知症予防になるのは、脳内のシナプスという神経細胞の結合・交信を活性化することで、脳の機能低下を防ぐことが考えられます。

 

また、身体的な刺激も脳の刺激につながるので、運動することは非常に効果があると思います。私自身も自転車に乗ったり、水泳をしたり、継続して運動するよう心がけています。

 

生活を改善することで、認知症が完全に治ったり、症状が元に戻ったりする訳ではありませんが、現状維持や進行をゆるやかにすることはできると思います。

 

 

生活習慣が深く関わっている

認知症の予防は、WHO(世界保健機関)からガイドラインが出ており、リスクを減らす提案がなされています。そこには、不健康な食事や過度の飲酒、喫煙などの生活習慣、うつ病、糖尿病、高血圧などの疾患が深く関わっていると書かれています。食生活や慢性疾患を管理することは、認知症予防だけでなく、がんなど他の疾患の予防にもつながります。

 

認知症が進行してしまうと、自分で薬の管理ができなくなったり、自身の体調の変化を感じ取ることが難しくなってきます。ご家族には、症状の重症度を気にしていただき、必要に応じて介護認定を受けるなどの対応をしていただければと思います。

 

 

まだ、認知症を患っていない人も、日々の生活習慣を見直すことで発症リスクを軽減できます。できるところから生活に取り入れて、健康的な生活が送れるよう心がけてください。

 

山下 博史(やました ひろふみ)

日本神経学会神経内科専門医・指導医。京都大学医学部臨床教授。

趣味は、サイクリング、クラッシック音楽の鑑賞、ワインを楽しむことです。好きな音楽家は、ベートーヴェン。

 

 

認知症を知ろう① 認知症かもと思ったら…(2023年3月23日公開)
認知症を知ろう② 認知症の診察と内容(2023年4月20日公開) 
認知症を知ろう③ 認知症の治療(2023年5月25日公開)
認知症を知ろう④ 認知症の予防(2023年6月22日公開) →今回
認知症を知ろう⑤ 認知症の方に接するとき(2023年7月20日公開)

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