日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

認知症を知ろう② 認知症の診察と内容

2023/04/20

日赤和歌山医療センターの脳神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉の病気を内科的専門知識と技術で診療する科です。手術適応のある脳神経疾患は、脳神経外科で治療され、内科的な治療を担当するのが脳神経内科です。認知症やパーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などが代表的な疾患です。

 

今回は、認知症の診察・診断の流れについて、山下 博史 脳神経内科部長に伺います。

 

 

脳の機能が低下することで、次第に物忘れ症状が出てくる認知症は、どこからが病気か線引きが難しいのですが、同じ物忘れといっても原因は様々です。「高齢だから物忘れくらいある」と思っても、コンスタントに物忘れ症状が出たり、気分が塞ぎ込んだりする場合は、一度、受診して、原因を調べてもらうことをお勧めします。場合によっては、脳出血や脳梗塞などの緊急性の高い病気が関わっていることもあります。また、水頭症などの場合は、手術によって物忘れ症状が改善される場合もあります。

 

当科の受診方法

初診の患者さんは、地域のかかりつけ医に紹介状を書いてもらい、予約を取ってもらう形が一般的です。紹介状がなくても、当日の外来に空きがあれば診察できますが、予約優先なので長時間お待ちいただいたり、その日に検査ができず、後日の予約を取り直していただいたりすることがあります。また、紹介状のない患者さんには、診療費の他に、選定療養費という国が200床以上の地域医療支援病院に徴収を義務付けている費用を負担いただいています。

 

 

認知症の患者さんは、症状を的確に説明できないこともあるので、同居されていたり、頻繁に会っていて普段の状況を知っているご家族がいらっしゃれば、一緒に来ていただき、診察のときに状況をご説明いただいたり、検査結果を確認していただくことが望ましいです。

 

稀にですが、初期の段階だと、ご家族が本人に認知症だと伝えないでほしいと希望されることがあります。投薬などで難しさが出てきますが、できるだけ対応するようにしています。

 

当科の診察内容

初診時には、まず、これまでの症状や経過を詳しく聞かせていただきます。日頃からおかしいなと思ったことをメモに控えてくださっている場合は、ぜひお持ちください。整理された記録がなくても、質問に対して分かる範囲で答えていただければ診断できます。

 

患者さんがひとりで来られるのであれば、ご家族が経過を記したメモを持ってきてもらえると、より診断がスムーズにできます。日常の変化を敏感に感じ取っているのは、ご家族だからです。

 

それから、手足の麻痺、しびれ、筋肉の硬さなど体の状態も確認します。体のこわばりがあれば、パーキンソン病が関係する認知症かもしれないなど予測をつけていきます。

 

次に、認知症かどうかを判断するための簡単なテストをします。「長谷川式認知症スケール」などのスクリーニング用テストを用いて行います。510分ほどの簡単なテストです。内容には、野菜や花、動物などの名前を3つ覚えてもらい、しばらくしてから尋ねるといったような短期間の記憶力をチェックする質問も含まれています。全く覚えていなければ、アルツハイマー型認知症の可能性が高いかな?と、おおよその予測がつきます。

 

脳血流を調べるSPECT装置

 

テストの後は、頭部CTMRI、脳血流SPECT、血液検査などを行います。画像検査は予約が必要になるので後日となることもありますが、認知症は脳の病気ですから、脳の画像検査が重要なので必ず受けていただきます。慢性硬膜下血腫など緊急性が高い病気が疑われるときは、当日に頭部CTを行います。

 

次の診察日には、画像や血液検査の結果をみながら、診断結果をお伝えします。投薬が必要であれば、その患者さんの状態に合った処方を行います。その後は、紹介いただいたかかりつけの先生のところで経過観察・継続診療していただけるように、投薬内容を含めた紹介状の返事を書きます。かかりつけ医をお持ちでない場合は、当科と懇意にしている医院をご紹介することもできます。

 

 

認知症が進行したら

病気が進行してきて再度診察が必要なときや、急に症状が悪化して他の原因が考えられるときには、CTなどの検査が必要になりますので、かかりつけ医の紹介状を持って、再度、来院いただければと思います。

 

認知症は進行すると、家の中の生活も一人でできなくなったり、時間の把握が難しくなったりしてきます。入院中などは、退院後の生活を支援するため、看護師から生活面のアドバイスをすることもあります。

 

山下 博史(やました ひろふみ)

日本神経学会神経内科専門医・指導医。京都大学医学部臨床教授。

趣味は、サイクリング、クラッシック音楽の鑑賞、ワインを楽しむことです。好きな音楽家は、ベートーヴェン。

 

 

認知症を知ろう① 認知症かもと思ったら…(2023年3月23日公開)
認知症を知ろう② 認知症の診察と内容(2023年4月20日公開) →今回
認知症を知ろう③ 認知症の治療(2023年5月25日公開)
認知症を知ろう④ 認知症の予防(2023年6月22日公開)
認知症を知ろう⑤ 認知症の方に接するとき(2023年7月20日公開)

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!