いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。

災害時の記録「クロノロジー」

2021/02/18

今回は、災害時における記録についてお話したいと思います。

 

日常的に、会議の議事録や日記、日常的なメモ、音声や映像の録画など、様々な場面で記録は行われています。みなさんも、電話を受けたときや、テレビなどで参考にしたいことなど、メモをとった経験があると思います。

 

 

なぜ、メモ(記録)をとるかというと、聞いた内容を正確に伝えたり、得た情報を忘れないようにしておくために行っています。つまり、メモ(記録)は、得た情報、発信する情報を管理し、有効に活用するために行うものです。

 

災害対応においても、この情報の管理が非常に重要です。

災害対応の際には、医療ニーズや医療資源、危険情報など様々な種類の膨大な情報が本部などに報告されたり、また発信したりする状況になります。

これらの情報を適切に処理することができなければ、大きな混乱が生じます。

 

では、混乱とはどういった状況をいうのでしょうか?

混乱とは、秩序なく入り乱れること(三省堂国語辞典)を意味します。災害対応における混乱は、例えば、本部に入る情報、出て行く情報の処理が上手くできずに、本部の情報処理能力が限界に達し、本部長からの指示が伝わらない(情報の断絶)、指示が間違って伝わる(情報の誤認)、適切でない指示が伝わる(本部の混乱)など指揮命令系統が崩壊してしまうことで、各チームや医療機関など個々の活動が孤立してしまう状態を指します。

CSCATTTの回でも、指揮命令系統の重要性をお話ししましたが、指揮命令系統が崩壊した状態では、その組織は単なる「烏合の衆」となってしまい、組織的な活動ができなくなってしまいます。これでは、効果的な活動を行えず、「防ぎ得た災害死」を減らすことはできません。

 

このような混乱を防ぐため、災害対応時には情報を管理する手法として「クロノロジー」と呼ばれる経時活動記録を作成します。

 

熊本県芦水保健医療調整本部でのクロノロ作成(令和2年7月豪雨)

 

「クロノロジー」は、略して「クロノロ」と呼ばれ、本部や各チームなどが起こった出来事、収集した情報、発信した情報について「誰が発信し」「誰が受け」「どのような内容であったか」を時系列に記録していくものです。

 

クロノロの特徴としては、

① 汎用性のある記録ツールである

② 本部を通り過ぎていく情報を時刻とともに記載する

③ 本部に入った情報および指示事項を記載

④ 発信元、発信先を明記する

⑤ 専属の記録員を置いて、本部長、リーダーが書くことを指示する

⑥ 定期的に本部要員で共有、見直し、方針を明示する

⑦ 予定については、予定が立った時刻を記載し、その横に予定事項、予定時刻を記載する

⑧ 速やかに電子化する(記録として、ホワイトボードが いっぱいにならないため)

があげられます。

 

クロノロを作成することで、その本部ではどのようなことが起きていて、どのような方針で、どのような活動を行っているのか、どのような問題がおきているのかを全員が共有することができ、情報の断絶や誤認、本部の混乱を防ぐことができます。つまり、クロノロは情報管理(情報の整理整頓)を行うための基盤であるといえます。

 

熊本県南阿蘇中学校避難所で作成されたクロノロ(熊本地震)

 

では、実際にクロノロはどのように活用されているのかについて説明します。

本部活動において、本部のメンバーが共有しておくべき情報が多々あります。

本部で共有すべき情報としては、

① クロノロ

② 問題・解決リスト(todoリスト)

③ 活動方針

④ 指揮系統図と活動チーム・人員と現在の活動状況

⑤ 主要連絡先(コンタクトリスト)

⑥ 患者一覧表

⑦ 被災状況・現場状況(地図)

などがあります。

 

これらの情報をすべて一旦クロノロに記載し、情報ごとに取りまとめるといった手法で、情報管理が行われます。

 

 

例をあげると、図のように、クロノロから、必要な情報をピックアップし、患者一覧やチームの活動状況などの情報を集約し、リスト化、地図上に被災状況、活動チームの状況を落とし込み、可視化していくというのが災害対応時の情報管理の流れとなります。

 

また、Assessmentの回で、災害対応の基本はPDCAサイクルに基づいて行われるとお話ししました。クロノロはPDCAサイクルを円滑に回すためにも重要ツールとなります。

 

 

上の図のように、本部で記載されたクロノロの情報を分析し、ミーティングで活動方針を決定。各チーム・本部要員に方針を伝達し、活動方針に従って活動を行います。活動内容や、活動中に生じた問題をクロノロに記載し、再度ミーティングで方針を決定するといった流れを繰り返し、PDCAサイクルを円滑に回していきます。

 

このように、クロノロは議事録のように事後のための記録ではなく、アクティブな記録手法であり、災害対応時の情報管理の根幹をなすものです。

 

災害時に、正確にクロノロが記載し、情報管理を万全にできるよう、当センターではクロノロ記載のトレーニングを定期的に行い、有事に備えています。

 

 

≪災害医療救援センター≫

詳しくはこちら

日赤和歌山医療センターHP

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