いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。

CSCATTT トリートメント(治療)

2021/05/20

今回は、CSCATTTの2つ目のT、トリートメント(治療)についてお話します。

 

トリアージでもお話ししましたが、災害時には、多数の傷病者に対応するため、トリアージして傷病者のふるい分けをし、治療の優先順位を決定します。

 

当然ですが、傷病者の優先順位を決定した後には、治療を施さなければなりません。

 

しかし、災害時の治療は、医療資源と医療ニーズのバランスが崩れた状況で行うため、日常の治療と比べて、大きく制限を受けます。

 

では、日常と災害時で、治療はどのように違うでしょうか?

 

まず、現有する人員、医薬品、医療資機材をそれぞれの患者にすべてつぎ込むことができる(それぞれの患者にとって最良の結果を求める)のが、日常の治療です。

 

一方で、現有する人員、医薬品、医療資機材で、最大多数の傷病者の救命・良好な予後を求める(個々の治療は制限を受ける)のが災害時の治療です。

 

限られた医療資源で、多数の傷病者に対応しなければならない災害時の治療では、状況に応じて臨機応変に治療レベルを変更することが求められます。

 

具体的に、災害時の治療は、どのように行われるのかをお話しします。

 

災害時の治療は大きく分けて、「安定化治療」と「根本治療」に区分されます。

 

安定化治療は、災害現場をはじめ、あらゆる場面で行われます。

 

災害が発生した際には、救急車などの搬送車両などが足りず、搬送能力の低下が発生し、傷病者が災害現場に停滞してしまうため、救護所が設置されます。

 

救護所での治療(2019大規模津波防災総合訓練)

 

 

救護所で、重症度・緊急度の高い傷病者から優先的に治療し、医療機関に搬送することで「防ぎ得た災害死」を減らすことができます。

 

その際に、現場から医療機関へ到着するまで、間断なく医療が提供される必要があります。

 

つまり、安定化治療は、限られた医療資源を有効に使い、傷病者の状態を速やかに安定させ、最大多数の傷病者を医療機関での根本治療に繋げることが目的です。

 

救護所(銀色のケースは医療資機材)

 

安定化治療の手法として、ABCDEアプローチと呼ばれるものがあります。

 

ABCDEは、

Airway(気道)

Breathing(呼吸)

Circulation(循環)

Dysfunction of CNS(中枢神経の異常)

Exposure and Environment(脱衣と体温管理)

の頭文字をとったもので、災害時の治療では、これらの異常に対し、手持ちの医療資機材と傷病者数、重症度・緊急度を照らし合わせて、どのレベルの治療を行うか?を考慮していきます。

 

一方で、根本治療は、手術による止血など、救命のために行われる根本的な治療のことで、災害拠点病院や救命救急センターで行われます。

 

しかし、大規模な災害の際には、災害拠点病院等も甚大な被害を受ける可能性があるため、被災地域内のみで根本治療が困難な症例もあります。

 

DMAT養成研修資料より抜粋

 

その場合は、可能な限りの治療、処置を行った上で、安全な被災地外の災害拠点病院等に搬送し、根本治療を行います。

 

災害時の治療は、被災地内の医療機関だけで完結させることは困難です。

 

現在の災害医療では、被災地内の医療資源を超える傷病者は航空機やヘリなどで域外に搬送し、治療を行うことがスタンダードになっています。

 

国や都道府県は、SCUと呼ばれる医療搬送拠点の整備や搬送計画の策定などを行い、災害時の医療搬送がスムーズにできるように備えています。

 

詳しくは、次回お話しします。

 

 

≪災害医療救援センター≫

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