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2022/08/11
膵がんは、テレビやインターネットなどを通して知っている方も多いがんだと思います。5年生存率が8.5パーセントとの報告があり、非常に難治性のがんだといえます。今回も、消化器外科の安近部長に、詳しく伺っていきます。
膵がんの大きな問題は、がんが見つかった時点で、約70〜80%の患者さんはすでに手術が適していない状況で見つかり、根治治療が難しい点が挙げられます。また、胃がんや大腸がんと比べると診断件数は少ないですが、全国的に増加傾向で、その原因はまだわかっていません。
見つかる段階がもう少し早ければ…ということが多いため、早期発見に向けて様々な研究も進んでいます。また、治療効果も上がりづらいため、手術、放射線治療、薬物療法という3つの治療法を、単独ではなく組み合わせて治療する集学的治療を行わなければならないがんです。
膵がんの進行と発見
膵臓は、厚さ1~2㎝程度とうすく、様々な臓器や多くの血管、リンパ管、神経に囲まれているため、これらを通じて、がんが全身に広がりやすいです。また、膵臓は胃の後ろ側(背中側)にあるため、通常の超音波検査では見えにくい場所にあります。
見つけづらい上に、がんが少し成長すると周りの臓器に転移を起こしてしまったり、大事な血管にも広がったりしやすいため、手術で取りきることが難しくなります。
膵臓には、大きく2つの働きがあります。1つは消化液である膵液をつくる働きで、もう1つは、血糖値などの体調を整えるホルモン(インスリンなど)を作る働きです。
がんの早期には、こうした働きに影響が出ないため、症状もほぼありません。がんが進行すると、体重が減ったり、糖尿病が悪化したりするほか、周りに神経があるため痛みを感じたり、胆道がんと同じように黄疸が出たりして気づくことがあります。
膵がんの検査
検査はCTやMRIの画像診断が中心となります。膵臓は、胃の後ろにあるため胃の中から超音波を当てれば診断でき、胃から針を刺してがん細胞を取り出せば、確定診断ができます。また、黄疸がある場合には、内視鏡(胃カメラ)を用いて胆汁の流れを確保する管(ステント)を入れることもあります。これらは内科の先生が行う検査・処置のため、診断・治療には、内科と外科の協力が欠かせません。
膵がんの治療
多くの膵がん患者さんは、手術が適さない進行した状態で見つかるため、全身への抗がん剤治療になる場合が多いです。一方、手術ができる状態で見つかった場合、以前は、できる限り早く手術していましたが、今は手術を前提として、まず、抗がん剤治療を受けていただき、目に見えないレベルのがんを抑えてから手術をすることが増えています。手術ができる患者さんでも、まず、抗がん剤治療を受けていただくことで、治療の効果が高まるという研究結果が出たためです。
膵がんは、手術をしても再発する患者さんが非常に多かったのですが、新しい抗がん剤が開発されたり、手術や放射線治療と組み合わせた治療(集学的治療)により、再発を予防し、生存率を高める研究も多くされています。
無事に手術や抗がん剤治療を終えられたとしても、定期的な画像検査で再発の有無をチェックすることは必要です。術後は、膵臓が小さくなったことに対するケアも重要になってきます。例えば、膵臓では血糖値を下げるためのホルモンであるインスリンが作られており、術後はインスリンが少なくなるため、糖尿病の傾向が強まります。場合によっては、インスリン製剤の注射が必要になることもあります。また、消化の力が落ちる(消化不良)のために、下痢になりやすく、整腸剤や下痢止めの服用が必要になる場合もあります。
難治がんであるがゆえに大変な部分もあるものの、研究はどんどん進んでいます。
検査によって少しでも早く発見し、適切な治療法を選択する。そして、術後のケアで膵がんを乗り越えていきましょう。
当医療センター2階にあるがんセンターでは、診療科の垣根を超えたチームが情報共有しながら診断・治療にあたっています。内科、外科、放射線治療などそれぞれの専門医が説明を行い、医師以外にも看護師、管理栄養士、理学療法士などコメディカルと呼ばれるスタッフが、患者さんのサポートを行っています。
2階のがんセンターを受診されるときは、緊張したり不安を感じたりすることなく、安心して受診してくださればと願っています。
安近 健太郎(やすちか けんたろう)
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(肝)、日本肝胆膵外科学会評議員。
趣味は、読書とスポーツ観戦。バスケットボール・バレーボール・駅伝は、学生時代に部活経験があり、特に好きです。
和歌山に赴任して、古座川の一枚岩・串本の橋杭岩などの自然や、熊野本宮大社・神倉神社など古くからの文化を感じられるところなどに、魅力を感じています。
肝胆膵がんの診断と治療① 肝がん(2022年06月09日公開)
肝胆膵がんの診断と治療② 胆道がん(2022年07月14日公開)
肝胆膵がんの診断と治療③ 膵がん(2022年8月11日公開)←今回