日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

肝胆膵がんの診断と治療② 胆道がん

2022/07/14

今回は、多くの人にとってあまり馴染みがないかもしれない胆道がんについて、消化器外科の安近部長に伺います。

 

 

胆道とは、肝臓でつくられた胆汁(食事の脂肪分を分解する)が流れる道筋です。含まれるのは、いわゆる胆管(胆汁が流れる管)と胆のうです。胆管の出口は十二指腸にあり、その場所は十二指腸乳頭と呼ばれます。胆管・胆のう・十二指腸乳頭などにできたがんを、総称して胆道がんと呼びます。

 

 

肝がんと同じく、全国統計で比較すると、和歌山県は胆道がんを発症する方が多い地域の1です。現状では、この病気になる原因ははっきりと解明されていませんが、膵・胆管合流異常症や、一部の有機溶剤が危険因子とされています。

 

 

胆道がんの発見と検査

胆道にがんができると、胆汁の流れが滞ることが多く、いわゆる黄疸という症状が出ます。唯一の自覚症状と言ってよく、その症状をきっかけにがんが見つかることが多いです。黄疸が出ると、白目のところや皮膚の色が黄色くなったり、尿が非常に濃い紅茶のような色になったり、体がかゆくなったりするため、ご自身で気づかれることが多いです。

 

 

がんが小さいうちは、できていても黄疸の症状が出ないこともあります。黄疸が出ていないから大丈夫ではなく、気づかないうちにがんができている可能性があることを知ってください。黄疸の数値は血液検査でわかりますので、検査が重要です。

 

黄疸があると診断されれば精密検査に回り、ほとんどの場合、まずCTMRIによる画像診断を行います。また、内視鏡胃カメラ)を用いて、胆管の中に細いチューブを入れ、その全体を画像(胆管造影)で映し出したり、組織を採取(生検)して診断したり、胆汁の流れをよくする管(ステント)を入れたりするなどの治療を行います。

 

 

胆道は、肝臓から膵臓を通過して十二指腸までつながっているため、胆道のどの部分にがんができているかにより、治療は大きく変わります。そこで、胆汁の流れが滞っている場所と原因を明らかにする、数々の検査には非常に大きな意味があります。

 

 

胆道がんの治療

胆道がんも、ほかの場所にできるがんと同じく、手術・抗がん剤・放射線治療という3大治療を行います。それぞれの患者さんの状態に合わせて、最適な治療法を選択しています。

 

胆道がんの手術は、時として、肝臓や膵臓など重要な働きを担う臓器にメスを入れることになるため、大きな手術になりやすいです。万一、黄疸など気になる症状がでてきたら、早期に受診し、検査を受けてください。

 

安近 健太郎(やすちか けんたろう)

日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(肝)、日本肝胆膵外科学会評議員。

趣味は、読書とスポーツ観戦。バスケットボール・バレーボール・駅伝は、学生時代に部活経験があり、特に好きです。

和歌山に赴任して、古座川の一枚岩・串本の橋杭岩などの自然や、熊野本宮大社・神倉神社など古くからの文化を感じられるところなどに、魅力を感じています。

 

 

 

肝胆膵がんの診断と治療① 肝がん(2022年06月09日公開)

肝胆膵がんの診断と治療② 胆道がん(2022年07月14日公開)←今回

肝胆膵がんの診断と治療③ 膵がん(2022年8月11日公開)

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