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呼吸器外科


特色

当科は1991(平成3)年に開設され、和歌山県全域および泉南・阪南地域における呼吸器疾患の外科治療の中心的役割を担っており、外科治療を必要とするすべての呼吸器疾患に対応しています。また、患者さんの手術による苦痛や障害を軽減するために、低侵襲の胸腔鏡下手術を積極的に導入しており、現在は大部分が鏡視下手術になっています。また、縦隔鏡検査は国内屈指の施行件数となっています。

胸腔鏡手術については、病変摘出に必要な最小限の切開で、一方で手術の質が低下しないよう、安全・確実に目的とする術式を完遂することを常に心がけています。肺がん手術は肺葉切除を標準としていますが、多発肺がんや末梢小型病変に対する区域切除などの縮小手術も積極的に行っています。さらに、ハイブリッド手術室でのCT下マーキングを使用した末梢小型病変に対する縮小手術も積極的に行っています。また、進行肺がんに対する導入療法後の手術や拡大手術の症例も多く、良好な治療成績で合併症も最小限となっています。術後補助化学療法については、最新のエビデンスやガイドラインを踏まえつつ、進行度や副作用、患者さんの状態を考慮して最適なレジメン選択を行っています。緊急性・専門性の高い気道のインターベンションについては、当科は硬性気管支鏡を有しているため、気道狭窄に対する従来のシリコンステントに加え、最新のハイブリッドステントを導入し症例に応じて使い分けています。

肺がん以外にも、気胸・嚢胞性肺疾患、転移性腫瘍、その他の肺腫瘍、感染症(真菌や抗酸菌症、膿胸)、縦隔・胸壁腫瘍、手掌多汗症、漏斗胸、胸部外傷、気道異物、良性気道狭窄など幅広い疾患について数多くの手術を行っています。年間300件超の手術件数は国内でも有数で、経験豊富なスタッフがそろっており、安全性が高く、確実で精度の高い診療を行っています。


スタッフ紹介

医師

石川 将史 (いしかわ まさし)

役職 部長
卒業年 1999(平成11)年
専門分野 呼吸器外科全般
資格
日本外科学会外科専門医・指導医
日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会呼吸器外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(呼吸器外科)
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
その他 医学博士
ロボット(da Vinci)手術資格
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検診を受けて、肺がんを早期発見!2019321日公開)

千葉 直久 (ちば なおひさ)

役職 副部長
卒業年 2008(平成20)年
専門分野 呼吸器外科全般
資格 日本外科学会外科専門医
日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会呼吸器外科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医

池田 政樹 (いけだ まさき)

 
役職 副部長
卒業年 2009(平成21)年
専門分野 呼吸器外科全般 
資格 日本外科学会外科専門医
日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会呼吸器外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本臨床栄養代謝学会認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
その他 日本医師会認定産業医

甲 貴文 (かぶと たかふみ)

役職 医師
卒業年 2017(平成29)年
専門分野 呼吸器外科全般 
資格 日本外科学会外科専門医

外来担当医表

場所

本館2階(2B)

受付時間

新患:8時~11時30分
再来:8時~11時30分

区分
月曜日
火曜日
水曜日
木曜日

金曜日

AB
CD
-
石川
池田
-
石川
CD
-
千葉
-
-

(2023年4月1日~)

※区分

(A:紹介予約 B:当日初診 C:予約再診 D:当日再診)
 

※都合により変更する場合もありますのでご了承ください。

手術日は、月曜日・木曜日・金曜日

※赤字の名前は女性医師です。

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診療実績

2022(令和4)年 呼吸器外科手術実績:329例

疾患別

腫瘍性疾患 肺がん(試験切除含む) 173
転移性腫瘍 18
縦隔腫瘍 7
良性肺・胸膜腫瘍 5

上記以外

気胸・嚢胞性肺疾患 62
炎症・感染性肺疾患 10
胸腔鏡下生検 14
手掌多汗症・漏斗胸 7
気道ステント・硬性気管支鏡 3
縦隔鏡検査 3
局所麻酔手術(生検など) 4
外傷・その他 23

肺がん術式

胸腔鏡下手術 156
開胸手術 17

 


患者さんへ

肺がんの手術を受ける患者さんは症状のない方がほとんどです。検診や他の病気の検査などで胸に影を指摘され、かかりつけの先生などから紹介されて受診される方が大部分を占めています。肺がんは増加している一方、残念ながら治りにくい病気の代表ですが、早期に発見して手術すれば根治も十分に可能ですので、まずは検診を受けることをお勧めします。手術患者さんのほとんどは再発なく元気に普通の生活を送っています。特に、レントゲン検査ではわかりにくかったり隠れてしまったりする部分が多く、CT検査が有効なことがあります。また、最近は喫煙と関連が薄い肺がんも決して珍しくありません。積極的に検診を受けていただき、肺がんに限らず胸部に異常を指摘された方や判別が難しいとされた場合などは遠慮なくご相談ください。現在、進行肺がんで治療を受けられている方も、手術が治療や薬の選択に役立つ場合がありますので、主治医の先生を通じてご相談ください。

気胸は、肺に孔があいて胸が痛くなったり息が苦しくなったりする病気です。若くてやせ型の男性の患者さんが典型的ですが、最近は中高年や女性の方も増えています。もともと肺に病気があると治りにくく手術が必要となるため、専門施設での治療が必要です。また、手掌・腋窩多汗症に悩む方は潜在的に非常に多いと推測されます。手術を受けようと思われる方はそのうちのごく一部と思われますが、手術は保険適用で、腋の下に小さな穴を2ヵ所あけるだけで済み、手術翌日に退院可能です。治療効果は大きく、皆様に満足していただいていますが、代償性発汗といって他の場所の発汗増加にも注意が必要ですので、悩みがあればまずはご相談ください。

胸郭変形の代表である漏斗胸については、低侵襲のNuss法による治療を導入しています。漏斗胸とは胸の前がくぼんで見える疾患で、見た目で悩まれる方が多いですが、胸骨の裏側にチタン製のバーを挿入(2~3年で抜去)して胸郭を持ちあげると、くぼみがなくなり見た目がきれいになります。当科では豊富な胸腔鏡手術の経験を利用して、両側胸腔鏡でより安全にバーの挿入・抜去を行っていますので、治療希望の方はご相談ください。

気道狭窄(きどうきょうさく)は、肺につながる空気の通り道に狭いところが生じて、呼吸が苦しくなる病態です。腫瘍や転移したリンパ節などで狭くなる場合(悪性狭窄)と、それ以外の場合(良性狭窄)がありますが、前者が大部分を占めます。当医療センターでは、全身麻酔下に硬性気管支鏡を用いてバルーン拡張(風船で広げる)やステント留置(筒を留置する)などを行い、呼吸困難を改善する治療を行っています。

それ以外の胸部の疾患についても、手術対象となる可能性がある場合は遠慮なくご相談ください。
救急の場合を除き、当科は手術日を除く火・水・金曜日に外来診療を行っています。受診を希望される方は、かかりつけの先生を通じてご予約いただくか、直接当科外来へ連絡の上でお越しください。


地域の先生方へ

いつも当科の診療にご協力いただき誠にありがとうございます。当科では、近隣の医療機関から直接または呼吸器内科(がんセンター・肺ユニット)を通じてご紹介いただきました患者さんを中心に診療しています。多くは検診で画像や腫瘍マーカーの異常がみつかり、CTなどで胸部の異常陰影を確認された方が、当科へ紹介となります。直接ご紹介いただければ手術適応について判断し、手術または呼吸器内科など他科と協力して診療を行いますし、がんセンター・肺ユニットへご紹介いただければ精査の上で手術適応の方が当科にコンサルトされるシステムです。胸部の異常が疑われる場合は遠盧なくご紹介ください。

進行がんの場合でも、他の治療が奏効し、切除可能であれば手術を検討いたします。院内であればがんセンター・肺ユニットとして呼吸器内科・放射線治療科と密に連携しながら手術のタイミングを決めています。近隣の医療機関の先生方におかれましても、治療中の患者さんで手術の可能性を考えておられましたら早めにご相談ください。また、近年は、薬物療法開始前に、最適な薬物選択のためのバイオマーカーの測定が重要となっています。気管支鏡や局所麻酔下での組織採取が困難であれば、短期入院で縦隔鏡・胸腔鏡検査による組織採取を検討いたしますので、気軽にご相談ください。

その他、転移性腫瘍、気胸・膿胸の治療、胸部外傷、びまん性肺疾患の肺生検、気道のインターベンション(ステント留置など)、肺の炎症性疾患、縦隔/胸壁腫瘍・重症筋無力症、手掌多汗症、漏斗胸の手術など、我々がご協力できる範囲でできる限りのことをさせていただきますので、今後とも患者さんのご紹介よろしくお願い申し上げます。当科はスタッフが充実しており多くの手術が行えるため、比較的早く日程調整し、長期に手術待ちとなることはほとんどありません。
通常の場合は当医療センターの予約センターを通じてご紹介ください。気胸や外傷など救急の場合は当医療センター救命救急センターで随時対応しています。

専門外来について

当科では専門外来は設けていませんが、各曜日で対応いたしますので、お気軽にご紹介ください。


疾患・治療

対象疾患

悪性疾患
肺がん、転移性腫瘍、縦隔・胸壁腫瘍、胸膜中皮腫、気道狭窄など
良性疾患
気胸・嚢胞性肺疾患、感染性肺疾患、良性肺腫瘍、膿胸など
その他
胸部外傷、重症筋無力症、手掌・腋窩多汗症、漏斗胸など

呼吸器外科で扱う主な病気について

肺がん
肺がんは病期Iから病期Ⅳに分類され,数字が大きいほどがんが進行した状態です。I期〜Ⅲ期はさらに細かくIA・IB期、ⅡA・ⅡB期、ⅢA・ⅢB・ⅢC期に分けられ、AよりもB、Cのほうが進行した状態です。Ⅳ期は脳・骨・肝臓など他の臓器に転移している状態です。

肺がんは約20%を占める小細胞肺がんと約80%を占める非小細胞肺がんに分けられ、当科は主に非小細胞肺がんの治療に携わっています。現在、非小細胞肺がんを根治させるには手術により完全切除することが最も有効とされています。手術での完全切除が期待できるのはI期〜Ⅱ期とⅢA期の一部ですが、治療成績はがんの進行度に反比例して不良となります。小細胞肺がんもⅠ~ⅡA期であれば手術+化学療法が有効な治療となります。

進行肺がんの治療には手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせた集学的治療と呼ばれる総合的な治療が必要です。当科では一部の進行肺がんに対しては呼吸器内科および放射線治療科と連携してまず導入療法(induction therapy)として化学療法・放射線治療を行い、がんを縮小させた後に手術を行うようにしています。これによりがんが完全切除できる可能性が高まり、また、肺の全摘が回避できるようになりました。さらに導入治療前には手術不能であるⅢB期やⅣ期の一部の肺がんも切除できる割合が増えてきました。

現在までに4,000件を越える肺がん手術を施行しており、最近は年間150〜170件の手術件数です。年間の手術件数が150件を超える病院は国内で限られた施設しかありません。

肺がんは治りにくいがんの代表ですが、治療成績は近年徐々に向上してきています。当科ではさらに手術成績を向上させる目的で、術後の再発を予防するための術後補助療法を重視しています。患者さんの状態に応じた最適な薬剤選択を柔軟に行っています。

入院期間は、手術後1週間以内を目標としています。
気胸・嚢胞性肺疾患
年間40~60例の手術件数で、ほとんどが胸腔鏡下の手術で行っています。術後3~4日の退院です。最近は、特に高齢者の気胸症例が増えています。
転移性肺腫瘍
肺の転移巣の切除が患者さんの利益になると判断すれば、積極的に手術を行っています。年間20~30例の手術件数です。
重症筋無力症
神経から筋肉への指令を邪魔するたんぱく質(自己抗体)によって、夕方になるとまぶたが重くなったり、ものが二重に見えたり、手足に力が入りにくくなったりする病気です。

重症筋無力症の場合、主に胸腺といわれる臓器で自己抗体が作られます。胸腺は胸骨のすぐ裏側で、左右の肺の間の縦隔と呼ばれる部分に存在します。胸腺を手術で摘出すると、筋無力症の症状が軽くなって、飲むステロイドの量を減らしたり、やめたりすることができるようになります。手術では、胸骨を縦に切って開いて、胸腺と周囲の脂肪組織をひとまとめに摘出します(拡大胸腺摘出術)。手術後1週間程度で退院できます。
手掌・腋窩多汗症
緊張すると手のひら・腋に多量の汗がでてしまい、日常生活に支障をきたす状態です。

手のひら・腋の多汗症に対して、胸腔鏡で脊柱の傍にある交感神経幹(発汗を司る神経)の働きを遮断する手術を行います。手術直後より手のひら・腋の発汗が止まり、ほとんどの患者さんに満足していただいています。代償性発汗が起こるので注意が必要です。手術後1〜2日で退院できます。
漏斗胸
胸郭変形の代表で、前胸部の胸壁を形成する骨(胸骨・肋骨・肋軟骨)が変形し、胸の前面がくぼんで見える疾患です。外見上の訴えで治療を希望される方が多く、10代での手術が望ましいとされていますが、20代以降でも手術は可能です。
手術では全身麻酔で両側の腋窩から胸腔を通じて胸骨の裏側にチタン製のバーを挿入して胸骨を持ちあげます。当医療センターでは両側胸腔鏡を用いてより安全に手術を行っています。術直後より胸のくぼみがなくなりますが、胸郭が固まるまでバーを留置した後、2~3年後に全身麻酔で抜去します。1週間程度の入院で、術後数ヵ月は運動を避ける必要があります。
気道狭窄
進行がんによる悪性狭窄がほとんどですが、良性狭窄症例もあります。気管や気管支の狭窄による呼吸困難があり、狭窄の解除によって症状の改善が見込まれる症例が治療の対象となります。気道用バルーンやエネルギーデバイスによる拡張術、各種ステント留置などで症状緩和を目指します。
その他
炎症性肺疾患、良性肺腫瘍、縦隔・胸壁腫瘍、膿胸、胸部外傷、胸郭変形など種々の疾患に対して手術を行っています。

呼吸器外科の手術について

開胸手術
標準的な方法で、胸を大きく切って開ける手術です。

腋の下から乳房の下をたどるように、15cm~20cm弧状に皮膚を切ります(前方腋窩切開)。肋骨の間の筋肉を切って、専用の器具で間を広げて手術をします。特殊な場合を除いて肋骨は切りません。手術の後には、胸の中に管(胸腔ドレーン)が2本入ります。他にも、心電図モニター、血圧を測るための点滴(Aライン)が1本、普通の点滴が1本、背中に痛み止め薬を注入する細いチューブ(硬膜外麻酔)が1本、尿を出す管(膀胱バルーン)が尿道に1本入った状態になります。手術の翌日にはモニターを外し、術後2日目には歩行可能な状態になります。術後の経過がよければ術後2〜4日で胸腔ドレーンが抜けて、すべての管から開放された状態になります。

右肺は3つ、左肺は2つの袋(肺葉といいます)に分かれています。肺がんの手術では、がんのある袋をまるごと取ってくる方法(肺葉切除)が標準的な方法です。肺を温存する目的で、状況に応じて、区域 (肺葉のなかの区画)を切り取ったりする手術(区域切除)や、区域より小さい大きさの一部分を切り取ったりする手術(部分切除)を行うこともあります。肺を取ったあとの隙間は、周囲の構造物が寄ってきたり、水がたまったりして埋まります。空洞のまま残るわけではありません。片方の肺をすべて取った場合はゆっくりと胸の形が変形しますが、それ以外の場合は胸の形が変形することはありません。
胸腔鏡下手術
当科手術の約8割以上が胸腔鏡下手術です。カメラを入れる穴と、摘出に必要な小切開(ポート)をあけ、カメラで得られた映像を共有して手術を行います。切開部分が小さいため、術後の痛みの軽減や入院期間の短縮を図ることができます。
縦隔鏡検査
全身麻酔が必要ですが、気道周囲のリンパ節が腫れている原因や縦隔腫瘍の診断、肺がんの組織採取や正確な病期診断にきわめて有用な検査です。手術翌日に退院できます。
硬性気管支鏡
全身麻酔をかけて筒状の鏡管を気管から気管支に挿入し、治療を行います。大きな鉗子やレーザーなどのエネルギーデバイスを使って、気道異物摘出、狭窄解除、ステント留置などの各種気道内処置を行うことができます。