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外科・消化管外科・肝胆膵外科


大腸がん

今や日本人の2人に1人は「がん」にかかる時代です。その中でも大腸がんは男女ともに増加傾向にあり、主な原因は高齢者数の増加、動物性高タンパク質・高脂肪などの食生活の欧米化など環境の変化であると考えられています。
2018年のがん統計予測では最も罹患数が多くなり、がん死亡数予測でも肺がんに次いで2番目に死亡数が多くなるとされています。2017年の調査では、男性では肺がん、胃がんに次いで3番目、女性では1番目に位置しています。こう書かれると、大腸がんを治すことは難しいのではないかと感じる方が多いと思いますが、決してそのようなことはありません。数ある「がん」の中で、手術、抗がん剤ともに治療方法が最も進歩し、様々な治療法が選択できるようになったものの1つです。

大腸とは

 大腸は、小腸とつながる盲腸から始まる消化管で、おなかの右下から頭側に走行する上行結腸、横に走行する横行結腸、下に走行する下行結腸、S字に曲がるS状結腸、肛門へつながる直腸からなります。大腸の主な働きは便から水分を吸収して固めることです。直腸は便を貯留し、便意を伝える働きを持っています。


病状

大腸がんは、がんができる場所によって症状が異なります。盲腸、上行結腸、横行結腸では、まだ便が固まっておらず、がんができて大腸が細くなったとしても症状が出る時期が遅くなりがちです。貧血、おなかのしこりで気づくことが多いとされています。便が固まってくる下行結腸、S状結腸、直腸のがんは狭窄による腹痛、下血が主な自覚症状です。

早期がんであれば症状はほとんどありませんが、検診で行われる便潜血検査(便に目に見えない血液が混じっているか調べる検査)が陽性になって診断されるケースが多く見受けられます。

検査

注腸検査
肛門からチューブを入れてバリウムなどの造影剤を大腸に注入する検査で、現在は省略されることもあります。
下部消化管内視鏡検査
いわゆる大腸カメラです。 肛門から内視鏡を盲腸まで挿入して大腸を観察します。がんが疑われる病変があれば、組織を採取して顕微鏡での病理診断を行います。大腸がんの患者さんにはほぼ必須の検査となります。
CT検査
大腸がんのある部位、他の臓器への影響、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無を調べる検査です。施設によってはPETーCTを行う場合もあります。

進行

検査結果から病気の進行度、治療の方法を決定します。現在は、進行度に応じて推奨される治療が「大腸がん治療ガイ ドライン」に示されており、日本中どこでも均質な治療が受けられるようになっています。

ステージの分類
ステージ0 がんが粘膜内に留っている
ステージ1 大腸の筋肉まで到達している
ステージ2 大腸の筋肉を超えている
ステージ3 リンパ節に転移がある
ステージ4 肝臓、肺などの他臓器に転移している

治療前の検査である程度予測可能ですが、最終的な進行度を決定するには、大腸カメラや手術で疑われる部分を切り取ったものを病理学的に診断することが必要です。大腸がんの治療進行度に応じた治療がガイドラインで定められていますが、病変を取り除く治療が基本になります。

ステージ0であれば大腸カメラで切り取る内視鏡的切除、ステージ1以上であれば外科的切除、つまり手術を行います。ステージ3以上であればがんが大腸の外に出ているということですから、大腸に留まっている場合より再発する可能性が高いことになります。

大腸がんでは、そのような患者さんの再発を予防するために術後補助化学療法を行っています。再発予防のための抗がん治療です。基本的には飲み薬ですが、点滴で投与することも可能です。術後、1〜2ヵ月経ってから半年間抗がん剤治療を行います。


治療法

手術

 内視鏡的切除でステージ0と診断されれば、おなかに傷をつけることなく大腸癌を切除することができます。ステージ1以上では外科的切除が必要になりますが、現在では腹腔鏡下手術が進歩し、約 90%の患者さんに傷の小さな手術でがんを取り除くことができます。お臍を切って腹腔内を観察するカメラを入れるポートを留置します。二酸化炭素でおなかを膨らませた後4つ穴を開けて手術操作を行います。最終的にはお臍の下に4〜5センチメートルの傷穴を開けてがんを取り出します。開腹手術に比べて傷が小さいため術後の回復が早く、経過に問題がなければ手術翌日から飲水開始、術後3日間目から食事を再開し、1週間で退院していただくことが可能です。


腹腔鏡下手術は、開腹手術に比べて難しいのではないかとの印象をお持ちかもしれませんが、大腸がんの手術、特に直腸がんの手術は、腹腔鏡下手術の利点である拡大視効果(術野を拡大するカメラを使用することで、より正確に見ることができること)が最大限に発揮されます。十分な訓練、経験を持つ施設においては、腹腔鏡下手術の方がより安全で確実性の高い手術と言えます。

化学療法

ある程度進行した大腸がんに対しては、手術で綺麗に取り切れたとしても、半年間の抗癌剤治療を標準治療としてお勧めすることがあります。手術で切除できなかった場合や再発した場合は、より強力な化学療法が標準治療となります。点滴での投与が必須であり、前胸部や上腕に抗がん剤投与用の中心静脈ポート(何度も点滴を入れるため、その針と管が一体となったもの)を留置することが多いです。化学療法の効果があってきれいに取り切れると判断した場合は、再度手術することもあります。

放射線治療

遠隔転移のない肛門に近い部位の直腸がんに対して肛門温存率を上げ、局所再発率を下げるために術前放射線+化学療法(内服の抗がん剤)を行っています。5週間平日のみ通院で治療を行い、その後6~8週間後に根治的な手術を予定します。一時的な人工門を造設しますが、再発がなく、肛門機能が保たれてることを確認してから、もう一度手術を行って人工肛門を閉鎖します。

ロボット支援下手術

2018年4月から直腸がんに対するロボット支援下手術が保険適用となりました。当センターでもda Vinci Surgical Systemを用いたロボット支援下直腸がん手術を積極的に行っています。通常の腹腔鏡の手術器具(鉗子)と異なり、da Vinciの鉗子は多関節を持つため人間の手よりも可動性があります。手ぶれ防止機能、モーションスケーリング機能(大きな動きを細かい動きに変換する機能)を備え、通常の腹腔鏡手術よりも繊細な手術を行うことができる可能性があります。