ONE TEAMで治す心臓の病気⑥　心臓のハイブリッド治療｜日赤和歌山情報局 Hot（ほっと）

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ONE TEAMで治す心臓の病気⑥　心臓のハイブリッド治療

2021/03/12

2019年、日本で開催されて大きな盛り上がりとなったラグビーワールドカップ。日本代表が掲げたスローガン「ONE TEAM」も流行語大賞に選ばれるほど話題になりました。

医療も多職種がチームとなって協議しながら治療方針を決定する連携の形があります。心臓領域では「ハートチーム」と呼ばれ、チーム一丸となって治療にあたっています。

シリーズ最後となる今回は、心臓のハイブリッド治療について心臓血管外科部副部長の平尾慎吾先生に聞きました。

ハイブリッド治療＝外科手術＋カテーテル治療など

ハイブリッド治療とは、心臓手術とカテーテル治療などを組み合わせて行う治療のことです。

代表的な治療としては、心臓の出口にある大動脈弁が狭くなる大動脈弁狭窄症に対して、カテーテルを用いた大動脈弁置換術や、胸にある大動脈瘤、胸部大動脈瘤やお腹の腹部大動脈瘤に対するステンドグラフトの治療、そして、足の動脈が狭くなる動脈硬化症に対するバイパスとバルーン拡張術などがあります。

患者さんにとって、これまでの治療よりも負担が少ないため、以前は、高齢だったり、手術に耐える体力がないなどの理由で、手術ができないとされてきたリスクの高い患者さんに対しても、安全性の高い治療ができるようになってきました。

リスクの高い患者さんには、高齢で、特に、心臓だけでなく肺や脳、腎臓などの合併症を伴っていたり、普段から運動量が低下していたり、低栄養だったりして、虚弱な人が含まれます。

最近では、体力のある高齢の患者さんもおられますし、元気に人生を過ごしたいと考えられる高齢者も増えてきましたから、当医療センターでは、80代で手術を受けられる患者さんも少なくありません。

ハイブリッド手術室のある医療施設で受けることが可能

ハイブリッド治療によって治療の幅は広がるのですが、その治療のために「ハイブリッド手術室」という特別な設備が必要となります。これまでは、手術室と高精度CT撮影室、カテーテル検査室がバラバラに存在していましたが、このハイブリッド手術室はその両方の機能を備えています。

手術室は、非常に高い清潔を保てる建築構造になっていて、空気の中にあるゴミを除去できる空調設備や手術時に明るい視野が保てるよう無影灯という照明が備えられています。一方でカテーテル室は、血管や心臓を透視できるよう、高画質のX線撮影装置がついていて、放射線が外に出ないように鉛入りの壁で囲まれた構造になっています。これらの機能を融合させた設備がハイブリッド手術室です。

当医療センターでは、2020年4月からハイブリッド手術室の運用を始めました。仰向けで治療する循環器内科や心臓血管外科だけでなく、背面から手術を行う整形外科や頭部の脳神経外科、胸部側面からアプローチする呼吸器外科の手術もできます。

このような設備を導入することで患者さんの身体的負担を抑え、これまで手術ができなかった患者さんに対しても治療できるようになりました。

力を結集してONE TEAMに

もちろん、設備があっても、その治療を担うのは人の力です。そもそも、その患者さんにとって、ハイブリッド治療を行うことが望ましいのか、どんな治療をしていくのがよいのかといった判断も、循環器内科医と心臓血管外科医の英知を出し合うことが不可欠です。そして、麻酔科医などの協力も欠かせず、チームとして治療を検討していきます。