2019年、日本で開催されて大きな盛り上がりとなったラグビーワールドカップ。日本代表が掲げたスローガン「ONE TEAM」も流行語大賞に選ばれるほど話題になりました。

 

医療も多職種がチームとなって協議しながら治療方針を決定する連携の形があります。心臓領域では「ハートチーム」と呼ばれ、チーム一丸となって治療にあたっています。

 

前回は、ハートチームの活動の1つである心臓リハビリテーションの内容について詳しくお伝えしました。今回は、心臓リハビリテーションの実施時期やその期間について、心臓血管外科部副部長の平尾慎吾先生に聞きました。

 

 

心臓リハビリテーションの実施時期

さて、リハビリというと手術後の回復を目的として実施するイメージがあります。しかし、心臓リハビリは手術後だけでなく、手術前から行うものもあります。手術前に、息切れや胸の痛みなどの症状が見られない範囲で、体を動かすことで運動能力の低下を抑え、手術後の回復を促してくれるからです。

 

手術後は、翌日から実施します。最初はベッドサイドで立ったり歩いたりといった運動からです。心臓の手術後の患者さんはICUに入って2、3日滞在することがありますので、ICUの中でもリハビリが行われます。これは、ICUリハビリテーションと呼ばれるもので、当医療センターでは2017年から開始しましたが、ICUに入室されるような重症な患者さんでも早期の歩行が可能となってきています。

 

実際、ICU入院中に介助してもらいながら50～400メートルの歩行を行い、その後、4、5日目には一般病棟の中を自由に歩けるようになります。驚かれかもしれませんが、全国の病院では、平均4.3日で皆さん元通り歩けるようになるとの報告があります。

 

病棟内で歩ける距離が伸びてくれば、集団でのリハビリです。心拍数などをモニタリングしながら自転車をこぐなど、苦痛とならない範囲での運動を続けて、筋力の増強や心肺の能力を高め、体力の強化を促します。

 

もちろん、不整脈や血圧、痛み、心不全の症状など十分に気をつけながらスタッフが見守る中で実施します。実施した内容は、医師、看護師、理学療法士などで日々情報を共有し、状態を見極め、付き添いながら心臓リハビリを進めていきます。

 

手術の後はベッドで安静にしたい…と言われる患者さんも多いのですが、むしろ安静にすることで肺炎や心不全などの合併症が起こる確率は高まります。この手術前から始まる一連のリハビリによって体に非常に良い影響がありますし、（次回に詳しくお伝えしますが）数値として効果も出ています。ぜひ、頑張っていただきたいです。

 

 

心臓リハビリテーションの期間

通常、保険の適用はリハビリ開始から150日間です。例外としてですが、医者が必要と認めた場合には、さらに150日以上の保険が適用される場合もあります。

 

もちろん、リハビリは入院している間だけではありません。希望される方には外来でも継続して行っています。また、退院前には看護師から生活の仕方、理学療法士から運動の方法や量、薬剤師から薬の知識や注意点などの指導があります。退院後のよりよい生活、再発防止のために、自宅でも、ご自身でできるリハビリを継続することが望ましいです。

 

外来でのリハビリは、保険適用の150日間は、継続して受けていただければと思います。通いやすいリハビリ実施施設を紹介することもできますので、できれば一生涯続けていただければ、より効果が高いです。また、外来でのリハビリは、週に1〜2回、集団で行うプログラムもありますので、患者さん同士のコミュニケーションが活発になり、医師以外に病気や不安なことの相談できる機会にもなります。

 

リハビリは薬や手術のような治療と比較すると、ご自身で進んで行う必要があるため根気のいる治療方法ではありますが、病気によっては薬や手術以上に有効な治療だとの報告もあります。続ける価値は非常に高いので、ぜひ、退院後も頑張っていただきたいですね。

 

 

次回は、心臓リハビリテーションの効果について詳しくお話しします。

 

ONE TEAMで治す心臓の病気①　ハートチームの活動  ( 2021.1.22公開 ）

 

ONE TEAMで治す心臓の病気②　心臓リハビリの内容とチーム体制 ( 2021.2.2公開 ）

 

ONE TEAMで治す心臓の病気③　心臓リハビリの実施時期と期間  ( 2021.2.12公開 ）

 

ONE TEAMで治す心臓の病気④　心臓リハビリテーションの効果 ( 2021.2.22公開 ）

 

ONE TEAMで治す心臓の病気⑤　自宅でできる心臓ケアや食事療法 ( 2021.3.2公開 ）

 

ONE TEAMで治す心臓の病気⑥　心臓のハイブリッド治療 ( 2021.3.12公開 ）

 

「Medeical Information すこやかな毎日のために」では、健康に生活するために、お役に立てそうな情報を、随時　発信していきます。お楽しみに！