日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

ONE TEAMで治す心臓の病気⑤ 自宅でできる心臓ケアや食事療法

2021/03/02

2019年、日本で開催されて大きな盛り上がりとなったラグビーワールドカップ。日本代表が掲げたスローガン「ONE TEAM」も流行語大賞に選ばれるほど話題になりました。

 

医療も多職種がチームとなって協議しながら治療方針を決定する連携の形があります。心臓領域では「ハートチーム」と呼ばれ、チーム一丸となって治療にあたっています。

 

これまで、心臓リハビリテーションの重要性やその効果についてお伝えしてきました。今回は、自宅でできるケアや生活の注意点について、心臓血管外科部副部長の平尾慎吾先生に聞きました。

 

 

自宅でできる心臓のケア…体や精神状態のチェック

 

病院で受ける心臓リハビリのほか、ご自身で行うケアも重要です。ケアをする、しないで、体の状態への影響が考えられます。

 

特に、ご自分で自分の心臓の状態を確認する習慣を持つことは非常に重要です。これは、手術を受けた後でなく、心臓に疾患がわかった段階で意識するように努めてください。このようなご自身によるチェック習慣は、手術後の回復や再発防止につながります。

 

 

方法の1つは、体重のチェックです。毎日決まった時間に、同じ服装・条件で体重を測って記録しておきます。そうすると、「体重が急に増えたら、心不全のサインだ」などの変化がわかってきます。

 

他にも、血圧や脈拍の測定があります。血圧が大幅に変動した時、血圧が高くなる時には、心不全を起こす可能性があります。

 

 

そして、もう1つが、足のむくみです。ちょうどスネのところを5秒間ほど押さえて離した時に、指の跡がくぼんで跡が残る状態をむくみといいます。これも心臓病が悪くなっているサインの1つですので、注意したり、確認してもらえるとよいですね。

 

最後に、心臓だけではなく、精神的なケアも重要です。実は、心臓病を起こす人は抑うつ傾向であるか、自分に否定的な考えを持っている人、あるいは否定的な感情を表現できない人が多いと言われています。

 

専門家によるカウンセリングや投薬などで楽になれる方が多いです。もし、気分の落ち込みや否定的な感情をうまくコントロールできないと自覚されたら、ご自身で心配なさらずに、医師に相談してみてください。

 

 

自宅でできる心臓のケア・・・食事

心臓リハビリにも組み込まれている栄養指導ですが、手術前から栄養指導をどれだけ受けて、どれくらいご自身で気をつけているかというのも非常に重要です。

 

 

手術後だけでなく、手術前から心臓や血管、合併する疾患を考慮した栄養量や栄養素について学習することで、実際に入院中に食べる病院食の理解や興味を深められますし、退院後に、日々の食事に役立たせることができます。

 

また、術前から栄養状態が悪い方は、合併症を起こす確率が高くなると言われています。できるだけご家族のサポートしてもらいながらケアを行い、可能な限り良い栄養状態で手術を迎えられることが大切です。

 

栄養指導では、ご自身の食生活に合わせて塩分を減らす工夫や味付けのコツ、低脂肪でも満足感のある献立などの説明を受けたり、相談したりできます。

 

心臓リハビリは、専門のチームが患者さんのためにプログラムを組んで実施しますが、それ以外にも自宅でできるケアがあることを認識いただけたでしょうか?

 

手術前からご自身でのケアも実施できると、早期の回復が見込めます。ぜひ、ご家族の協力も得ながら、継続して実践してください。

 

 

次回で、この心臓リハビリに関するシリーズは最後となります。

最終回は、心臓のハイブリッド治療についてです。

 

 

ONE TEAMで治す心臓の病気① ハートチームの活動  ( 2021.1.22公開 )

 

ONE TEAMで治す心臓の病気② 心臓リハビリの内容とチーム体制 ( 2021.2.2公開 )

 

ONE TEAMで治す心臓の病気③ 心臓リハビリの実施時期と期間  ( 2021.2.12公開 )

 

ONE TEAMで治す心臓の病気④ 心臓リハビリテーションの効果 ( 2021.2.22公開 )

 

ONE TEAMで治す心臓の病気⑤ 自宅でできる心臓ケアや食事療法 ( 2021.3.2公開 )←今回

 

ONE TEAMで治す心臓の病気⑥ 心臓のハイブリッド治療 ( 2021.3.12公開 )

 

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