日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

人工関節④ 女性に多い膝関節の痛み

2024/08/15

日赤和歌山医療センター整形外科は、2023年4月に人工関節手術を行う「人工関節センター」を設立しました。人口の約30%が65歳以上の高齢者となっている日本では、今後も人工関節を必要とする高齢者の増加が予想されています。

人工関節の情報発信の拠点や相談窓口を担い、地域の方々に一貫した治療やより良い環境での人工関節の手術(人工関節置換術)を提供していきます。

 

当連載では、4回にわたり整形外科部副部長の古川 剛先生に人工関節をテーマにお話を聞いています。最終回となる今回は、膝関節・股関節の痛みに悩みを持つ女性が多い点について、理由などを伺いました。

 

 

膝関節は「変形性膝関節症」、股関節が痛い人は「変形性股関節症」という病気の場合が多いです。特に、膝に症状が出ている人が多く、変形性膝関節症の状態になっている人は、全国に2,000万人以上いるといわれています。けれど、痛みの程度はさまざまで、全員に手術が必要というわけではありません。

 

 

変形性膝関節症を発症するのは、男性より女性が4倍ほど多いとされています。原因は、関節軟骨の老化によることが多く、肥満、女性ホルモンの影響、遺伝素因も関与しています。

 

 

日本人の生活様式も影響している

膝関節に痛みが出る変形性膝関節症が多い理由の1つに、日本の生活スタイルも影響があると考えられます。最近でこそ洋室・テーブルとイスという住環境も増えましたが、和室で座布団に正座という姿勢で長年過ごされてきたという人も多いと思います。正座は膝に負担がかかるといわれていて、膝が痛くなってきたら正座は避けたほうが良いですね。

 

 

また、日本人は、高齢になるとO脚になる方が多く、内側ばかりに負担をかけてしまい、最終的に骨が変形してしまうことも、発症率の高い理由の1つと考えられます。

 

膝が痛いのを我慢して歩いたり動いたりすると、O脚の程度が進んだり、膝が90度曲がらなくなってしまったり、ほとんど動けない状態になってしまう場合もあります。

 

 

痛みがあって、膝の動きが悪くなってきたと感じたら、医療機関で状態をチェックしてもらい、膝の筋力トレーニングをすることで悪化を防ぐことが大切です。

 

 

我慢しすぎると手術以外の選択肢がなくなる

痛みや症状が軽度な状態であれば、筋力トレーニングや、ヒアルロン酸を膝に注射して動きをスムーズにするなどの治療で緩和できます。地域のかかりつけの先生のところでリハビリを頑張れば、痛みも楽になってきますし、痛み止めをもらったり、サポーターを着用したりすれば、生活しやすくなってきます。

 

変形がひどくなって手術を受けるとなると、手術の時間が長くなったり、手術が難しくなったりします。何事も我慢しすぎるのは良くありません。長く自立した生活をするためには、早めに医療機関を受診して適切な対処を行うことが大切です。

 

 

「みんなも痛いらしいから、自分の痛みも年齢のせい」「痛み止めや湿布薬で我慢できるうちは我慢しよう」と考えず、相談できる整形外科のかかりつけ医を受診し、適切に医療機関と付き合いながら、自分らしい日常生活を長く過ごせるようにしましょう!

 

 

古川 剛(ふるかわ たけし)

日本整形外科学会整形外科専門医・指導医、日本人工関節学会認定医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医。

 

趣味は、ジムでのトレーニング、ランニング、散歩、食べ歩きなど。

好きな散策スポットは、和歌山城、雑賀崎、和歌浦方面。体力・筋力の維持に散歩をされる方に、おすすめです。

 

 

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