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『終末期だけでない緩和ケア!』当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。
2026/05/13
「緩和ケア」で生存期間が延びる?
緩和ケアを知ると、入院治療中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介するこちらの連載。
今回は、患者さんとご家族の不安に寄り添う「がん相談支援センター」について、ご紹介します。
今回(第17回)で、この連載の最後になります。
今回は、緩和ケアを再確認し、緩和ケアに関する医学研究もご紹介します。
健やかなとき、人はほとんど病や死について考えることはないのかもしれません。
病(やまい)や創傷を得て、はじめて人は健康の価値を問うに至るのでしょう。

現在、闘病中や治療中でなくても、死を想うことやどんな最期を迎えたいのかについて思い巡らせることは、そのままわたしたちの今の生をより大切に慈しむことに直結するはずです。
あえて言うなら、緩和ケアは「死」よりも「生」を強く意識しています。
この連載を継続的に読んでくださっている読者のなかにも、緩和ケアは「がんなどによる心身の苦痛を和らげるホスピス、静かに死を迎える場所」との考えからぬけられない人がおられるかもしれません。

緩和ケア病棟デイルーム
緩和ケアは、患者さんの生活の質をできるだけ高め、患者さんがご自分の生を積極的に享受できるよう支援します。ご希望があれば、患者さんのご家族も含めてサポートしています。
「どう死ぬか」ではなく、「どう生き抜くか」「どのように生を全うするか」について、患者さんやご家族と話し合いながら「生」を大切にしようと取り組んでいます。
繰り返しますが、緩和ケアの場は、死ぬ場所ではなく「生を謳歌し、最期まで人生を生き抜く場所」なのです
1つ、興味深い報告をご紹介しましょう。
権威ある医学雑誌「New England Journal of Medicine」に掲載されたジェニファー・テメル氏らによる論文です。これは151人の非小細胞性肺がんと診断された患者さんを「標準ケアのみ」と「標準ケアと緩和ケアの両方」を受けたグループに分け、診断後の経過を観察したものです。

緩和ケアを加えた患者さんの方が、抑うつが少なかったという結果は当然予想されたことですが 生存期間を2.7カ月延ばすことができたという副次的な結果も判明しました。
ちょっとややこしい説明になりますが、生存期間の中央値が統計学的に有意に高いことから、151名のうちの数名の生存期間がたまたま長くなったというより、多くの患者さんの生存期間がおしなべて少しずつ延びたと考えられる報告となっています。
もちろん、緩和ケアが誰に対しても、必ず生存期間を延ばせるわけではありません。しかし、がん治療中の患者さんやご家族と緩和ケアの取り入れ方を検討してみるのは、無駄なことではないというのが、我々医療従事者の考えです。

当緩和ケアセンターでは、さまざまな職種のスタッフが揃っています。
患者さんが自分の人生を自分らしく尊重された命として生き抜くことのお手伝いができるよう準備をしています。
患者さんやご家族からお話を十分に伺い、最もふさわしい道をご一緒に考えられるよう、今後も取り組んでいきます。
今回で最終回となります。
1年以上にわたりお読みくださり、ありがとうございました。
宇山 志朗 (うやま しろう)
日本外科学会外科専門医。
好きなことは、料理、読書、居眠りしながらする古典芸能鑑賞。