日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

人工関節③ 術前検査から入院、退院までの流れ

2024/07/18

日赤和歌山医療センター整形外科は、2023年4月に人工関節手術を行う「人工関節センター」を設立しました。人口の約30%が65歳以上の高齢者となっている日本では、今後も人工関節を必要とする高齢者の増加が予想されています。

人工関節の情報発信の拠点や相談窓口を担い、地域の方々に一貫した治療やより良い環境での人工関節の手術(人工関節置換術)を提供していきます。

 

当連載では、4回にわたり整形外科部副部長の古川 剛先生に人工関節をテーマにお話を聞いています。今回は、人工関節の手術を前提とした検査、入院、退院までの流れについて伺いました。

 

 

当医療センターでは、地域の医療機関から紹介を受けた患者さんの診察を行っています。紹介を受けた患者さん全員を手術するわけではなく、私たちが改めて関節の状態並びに全身を診察し、患者さんと相談の上で手術をするか、もう少しリハビリなどで頑張るかを決めていただけるようにしています。

 

当医療センターでは、地域の医療機関から紹介された患者さんをすべて受け入れるようにしています。前回(人工関節手術のメリット・デメリット)でお伝えしたように、当医療センターを受診した全員が手術となるわけではなく、診察や検査で状態を確認し、患者さんにご希望を伺いながら、手術のタイミングを決定しています。

 

 

人工関節に置き換える手術のことを、膝関節は人工膝関節置換術、股関節は人工股関節置換術といいます。当医療センターでは、どちらの手術もなるべく筋肉を温存するようにし、手術による体の負担を減らすことで、術後のリハビリテーションの促進が図れるようにしています。

 

外来診察では、手術までスムーズに受診いただけるよう心がけており、緊急を要する手術は迅速に行い、一般的な症状で他に健康状態も問題なければ1ヵ月ほどで手術日を迎えられるようにしています。

 

それでは、手術を前提とした初診から検査、退院までの流れについてご説明します。

 

術前検査から入院、退院までの流れ

 

外来受診

診察と検査で治療方針を決めていきます。診察当日に受けていただける検査は行いますが、一部の検査が別日になることもあります。全身の状態を確認するため、採血、心電図、呼吸機能、3D-CT、超音波(エコー)検査とさまざまな検査を行います。歯科も受診していただきます。その中で他の病気が見つかることもあります。

 

全身の検査を行う理由は、人工関節の手術では全身麻酔をするため、健康に心配がない状態で受けてもらいたいからです。当医療センターには多くの診療科があり、専門的な治療が可能ですので、検査結果によっては人工関節の手術の前に糖尿病の治療や心臓カテーテルの治療を行うこともあります。そのため、手術まで1ヵ月程度と予想していたところが、他の治療が入って手術が3ヵ月後になるということもあります。手術に耐える体にし、術後も早く回復するために必要なことですので、ご理解ください。

 

家族説明

必要な検査が終わると、ご家族と一緒に受診いただき、手術と検査結果を説明します。入院中の生活や、入院から退院までの流れについても、看護師から説明を聞き、入院準備を整えていただきます。

 

入院

手術前日に入院します。看護師や薬剤師からの説明や、リハビリテーションの診察があります。

 

 

手術日

手術自体は2時間程度です。朝9時に病棟を出て手術室に向かったとすると、麻酔をかけて手術が始まるのは10時頃です。お昼すぎに手術が終わり、麻酔から覚めて体調を確認した後、病棟へ戻ります。

 

術後退院

術後3日ほどは痛みがあるため、痛み止めの点滴や内服で、痛みを軽減します。手術翌日からリハビリが始まります。まず、車椅子に乗る練習をします。それから、平行棒 歩行器 階段と進めていき、ご家庭での生活が問題なく送れる状態になれば退院です。

 

退院後

もし、脱臼や骨折が起こっても、当医療センターには24時間365日体制で対応する高度救命救急センターがあります。救急外来を受診していただければ、これまでの治療の状況を踏まえた対処ができますので、ご安心ください。

 

 

経過が良ければ、入院から退院まで2週間です。昔よりはかなり短期間になりましたが、手術前の足腰の状態がかなり影響し、だいたい80歳を超えてくると2週間での退院は難しい場合が多いです。リハビリが継続できる病院へ紹介転院いただき、もう少しリハビリをしてから自宅に帰っていただくことになると思います。入院中に、担当者が転院の相談に伺いますので、ご自宅の状況などをお伝えください。

 

 

最終回は「女性に多い膝関節の痛み」をテーマにお話します。

 

 

古川 剛(ふるかわ たけし)

日本整形外科学会整形外科専門医・指導医、日本人工関節学会認定医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医。

 

趣味は、ジムでのトレーニング、ランニング、散歩、食べ歩きなど。

好きな散策スポットは、和歌山城、雑賀崎、和歌浦方面。体力・筋力の維持に散歩をされる方に、おすすめです。

 

 

人工関節① 人工関節の手術(2024年5月16日公開)
人工関節② 人工関節手術のメリット・デメリット(2024年6月20日公開)
人工関節③ 術前検査から入院、退院までの流れ(2024年7月18日公開)←今回
人工関節④ 女性に多い膝関節の痛み(2024年8月15日公開)

詳しくはこちら

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