最新の情報などHotなニュースから気持ちが和らぐほっとする話題まで日赤和歌山からお届けします。
いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。
2020/10/15
情報を有効に活用するためには、情報を収集・伝達する「手段」と「内容」を両立させることが重要であることは、以前(Communication その1)お話ししたとおりです。
「手段」はCommunication その2、その3と2回にわたりお話しした「通信手段」のことで、災害に強い複数の通信手段を整備することや使える場所や人の確保が大切です。
今回、お話しする「METHANEレポート」は、「情報の内容」にあたります。
いざ災害が発生すると、被災状況や医療ニーズ、支援チームの状況など様々な種類の膨大な量の情報が飛びかいます。これらの情報の中には、誤ったもの、重複した内容なども含まれるので、選別し、適切に情報処理を行う必要があります。
しかし、災害発生直後の混乱した状況では、衛星電話や無線に多くの機関・チームから様々な情報が途切れなく入ってきます。少なからず情報は錯そうし、発信する側と受け取る側の認識のズレにより、情報が間違って伝わるといったことも起こりがちです。
また、無線の回でもお話ししましたが、情報を長々と伝えることは、回線を占有することになり、通信の渋滞を招き、限られた通信リソースを活用できず、迅速な対応ができなくなります。
ですから、情報を発信する側は、いかに簡潔に情報を伝えるかが非常に重要となり、そのツールとして「METHANEレポート」が活用されています。
「METHANE」とは、My Call sign/Major incident(名乗り、災害の宣言)、Exact location(正確な場所、座標)、Type of incident(災害の種類)、Hazard(活動における危険性の情報)、Access(到達経路、進入経路)、Number of casualities(負傷者数、重症度)、Emergency services(緊急対応機関の現状と今後必要となる機関)の頭文字をとったもので、「メタン」と呼ばれています。
この「METHANE」で情報発信すると、伝える側も受け取る側も、もれなく情報伝達ができます。例をあげて説明します。
① 交通事故の場合
M・・・My call sign/Major incident(名乗り、災害の宣言)
「日赤和歌山の〇〇です。」「自動車事故が発生しています」
E・・・Exact location(正確な場所)
「場所は和歌山市小松原通〇丁目交差点です」
T・・・Type of incident(災害の種類)
「路線バスの横転事故です」
H・・・Hazard(活動における危険情報)
「バスの燃料が漏れており、火災発生の恐れがあります」
A・・・Access(進入経路)
「交差点東側は通行不可、西側より進入可能です」
N・・・Number of casualities(負傷者数、重症度)
「重症者10名、軽症者8名」
E・・・Emergency services(緊急対応機関の現状と今後必要となる機関)
「現在、消防、警察が活動中。救護班2隊の派遣を要請します」
② 病院支援
M・・・My call sign/Major incident(名乗り、災害の宣言)
「日赤和歌山救護班の××です。」「大規模地震が発生しています」
E・・・Exact location(正確な場所)
「現在、和歌山市○○町△丁目、□□病院です」
T・・・Type of incident(災害の種類)
「〇〇病院の支援を行っています」
H・・・Hazard(活動における危険情報)
「停電と断水が発生し、病院機能が低下しています」
A・・・Access(進入経路)
「国道は通行止めのため、南側の市道から進入可能です」
N・・・Number of casualities(負傷者数、重症度)
「重症者1名、軽症者8名を受け入れしています」
E・・・Emergency services(緊急対応機関の現状と今後必要となる機関)
「救護班1隊が支援を行っていますが、応援の救護班が必要です」
といった形で、情報を発信、共有していきます。
このように「METHANE」をうまく活用できれば、簡潔かつ適切に情報発信できるだけではなく、どういった情報を集めればいいのかも明確になり、迅速な情報収集が可能となることで、効果的な災害対応へと繋がっていきます。
≪災害医療救援センター≫
次回は「CSCATTT~Assessment~」をお届けします。