がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

MRI検査のメリット・デメリット

2019/04/16

前回は、MRI検査の画像を得る仕組みや、診断に有用な部位についてお伝えしました。

( 放射線を使わないMRI検査の仕組みと有用性 2019/03/12公開)

引き続いて、今回もMRIの話題です。

 

前記事からの繰り返しになりますが、MRIは放射線を使わないため、被ばくせず、子どもや妊娠中の方も安心して受けられる検査です。

 

そのほかにも、このMRIの特長(メリット)がありますので、ぜひ知っていただきたいと思っています。

 

 

MRIならではの大きなメリットと特長

 

CT検査とMRI検査はどちらも体の断面画像を得るためのものですが、画像を得る方法が違います。CTが放射線、MRIが磁気ですね。

 

MRIのほうが縦・横・斜め方向など、自由に3次元画像を作りだすことができます。

自由度という意味では、MRIのほうが優れているんですね。

 

 

もう一つの大きな利点は、MRI検査でのみ撮影できる特殊な画像があることです。

撮影方法を変えることにより、病気の細胞の状態、質が分かる画像が撮れます。

 

特に、がんの診断で有用とされているのが、細胞の水分子の拡散運動の画像です。MRIでしか撮れないこの画像があることで、がん細胞がどこにあるのか分かります。

 

また、造影剤を使わずに、大きな血管や胆管、膵管を撮影できるのも特長の1つです。動脈瘤や動脈硬化など脳内の血管の異常を見るMRA検査(MR血管造影)や、胆道・膵臓の異常を調べるMRCP(MR胆管膵管撮影)検査に利用されています。

 

MRI検査時のデメリット2つ

 

MRI検査の欠点ですが、まず1つ目は、撮影時間がかかることです。

最先端のCT検査はほぼ15分以内に終了しますが、MR検査では30~60分程度かかります。

 

しかも、狭い空間で大きな音も聞こえるため、「耐え難い」と訴える方もいます。

閉所、長時間の不自由、大きな音…苦手な方も多いのですが、検査中はそれをどうしても我慢していただかなければなりません。

 

当センターでは、大きな音を軽減し、リラックスして検査をうけていただけるように、ヘッドホンを装着して、ゆったりさせる効果のある音楽を聞きながら検査を受けていただくなどの工夫をしています。

 

デメリットの2つ目は、磁気を使って画像を得るため、心臓や脳の血管を広げるステント(金属製の管)を留置していたり、人工内耳や一部のペースメーカーを植え込んでいたりなど、体の中に金属がある場合は検査できないことが挙げられます。

 

また、磁気の影響を受ける金属(時計やアクセサリー、クレジットカードなど)を撮影前に体から外す必要もあります。

 

もちろん、これらについては検査の前に必ず説明があり、確認もしています。

 

安心して受けていただき、早期治療に役立てていただきたいと思います。

 

さて、次回も画像診断の話題が続きます。PET検査についてです。

 

「日赤の画像診断」No.1 放射線診断医インタビュー 2021.04.26公開

「日赤の画像診断」No.2 放射線診断医インタビュー 2021.05.10公開

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!