がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

放射線を使わないMRI検査の仕組みと有用性

2019/03/12

まだまだ、画像診断の話題は続きます。

今回はMRI検査について、その技術や有用性を知っていただきたいと思っています。

 

MRIという名前は聞いたことがあるけれど、それが何か詳しく説明して!といわれると、戸惑ってしまう人が多いのではないでしょうか。

 

MRIの技術は、2003年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。

CT検査は40年ほど前の技術でしたので、それに比べると20年ほど新しい技術なのです。

 

放射線を用いず、断面像を撮る仕組みとは

 

MRIとは、Magnetic Resonance Imagingの頭文字をとった略称です。日本語では、 磁気共鳴画像(じききょうめいがぞう)といいます。

 

この言葉の中にある通り、MRI検査とは放射線ではなく強い磁石と電磁波を使います。

そのため、放射線による被爆はありません。子どもや妊娠中の方も安心して検査を受けていただけます。

 

磁石で体の中の画像が撮れるなんて驚きですよね!

でもどこに磁石が…?と不思議に思われるでしょう。

MRIの機器は、わたしたちが想像するより大きな磁石を使っているんですよ。

 

MRI検査時に丸いトンネルのような筒の中を通りますよね。あの丸い筒の中に磁石があるのです。

 

磁石のトンネルを通り抜けている間に、わたしたちの体からは電波が発せられており、機械がその電波を拾って処理し、画像にしているのです。

 

MRIの機器が最新のものになるほど、画像情報が多くなり、診断能力が高くなります。

 

当センターには高画像撮影ができる「3テスラMRI」があります。

このテスラというのは、磁力の単位を表す言葉で、3テスラは診断で使用できるいちばん強力な磁力です。

 

皆さんの検査に大活躍してくれている装置なのですよ。

 

 

脳、脊椎、四肢、乳房や子宮など骨盤内の臓器の検査に

 

MRI検査が有用な部位は、脳、脊椎、四肢、乳房、そのほか子宮・卵巣・前立腺といった骨盤内の臓器です。

 

 

これらの臓器に発生したがんの診断では、MRI検査がCT検査を圧倒しています。

乳がん、子宮がん、卵巣がんの早期診断は、MRI検査の登場無くしてあり得なかったと言えるほどです。

 

脳と脊椎では、がんを含めMRI検査が画像診断の中核となっています。

頭蓋骨に囲まれた部分であっても、その影響を受けずに画像が撮れることが、MRIの特長ですね。

 

さて、次回はMRI検査のメリット・デメリットについてです。

 

CT検査の課題であった放射線を受けずに済むMRIですが、もちろん良いことばかりではありません。

 

メリットもあればデメリットもありますので、しっかり次の記事も合わせて読んでくださいね。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員なども務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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