日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

「日赤の画像診断」 No.1 放射線診断科医インタビュー

2021/04/26

日赤和歌山医療センターには、放射線の診断専門医が8人在籍しています。

 

CTやMRIは新しい技術を日々取り入れながら、正確で有用なレポート(画像診断報告書)の作成と画像を利用した治療を行っています。

 

また、医療連携ネットワーク会員の先生であれば、どなたでも当医療センターのCTやMRIの検査を利用できる「オンライン画像検査予約サービス」も行っています。ご自身のクリニック内で検査しているかのような感覚でご利用いただけると好評いただいています。

 

今回は、梅岡成章放射線診断科部長に、当医療センターでの画像診断について、日々の取り組みについて伺いました。

 

 

CTやMRIの装置を使った画像診断は、医療になくてはならないものになりました。当医療センターには、画像診断を専門とする放射線診断科がありますが、患者さんには馴染みが薄いかもしれません。どのような業務をされているのでしょうか?

 

医療用画像を読影し、評価・診断してレポートを書く業務がほとんどです。当医療センターの令和元年度の検査数は、CTが救急を含めて42,876件、MRIが17,146件と非常に多いので、その撮影された画像を診て担当医へ報告することが業務の大半です。

 

各診療科の医師から私たちへ連絡が来ることも多数あります。「早めに画像についての意見を知りたい」など個別のご要望はたくさんあります。患者さんに最善の検査、治療をするために、「どんな検査がよいか」「単純CTでよいのか、造影剤を用いたCT検査の方がよいのか」「今後の治療方針について」などを一緒に考えることも大切な役割だと感じています。私たちは画像診断の専門的な視点から進言し、担当医が診療しやすいようにサポートしていくことを心がけています。

 

 

そのほか、カンファレンスにも参加しています。泌尿器科、外科、婦人科など各診療科でそれぞれの患者さんの病状に即した最善な方法や注意点などを共有しています。例えば、「この患者さんは、手術の際に出血するリスクが高いので注意してください」などです。困難な症例で担当医が悩んでいる場合は、私たちなりの画像解釈を伝えます。各科に常時出入りするので、診療科と診療科の連携役も果たしているのかなと思っています。

 

 

当医療センター放射線診断科の規模は、全国的に見てどうですか?

 

専門医が8人、そのほかに修練医・救急医も在籍しているので、非常に大きい規模だと言えます。これから新しい機器が入る予定なので、今後も増員する方向性で進んでいます。

 

2021年秋、導入予定のPET-CT

 

 

画像診断を専門医が行うことの重要性は?

 

例えば、胃がんで手術をする患者さんがいらっしゃるとして、もちろん胃がん自体の画像も診るわけですが、転移の有無や手術できるかどうかも確認するため、胃以外の臓器などもチェックします。

 

胃がんなら消化器内科や外科の先生から依頼があって画像を撮るわけですが、肺に影があった、骨に病気が見つかった、ということもあります。この場合、依頼された先生方は消化管のプロなので、専門外の臓器等ではときに困られることがあります。そういう場合は、私たち放射線診断医が画像を診て「これは転移の可能性がある」「がんではない違う病気の可能性がある」などの可能性について伝えます。そして、私たちから呼吸器科や整形外科に連絡したり、治療の次の一手を担当医に提案したりと、診療科を横断した対応をする役割があります。

 

 

また、直接、患者さんを診察したり、画像診断レポートをお渡ししたりすることはありませんので、画像だけを客観的に診断しています。画像だけを診ているから、中立の立場で言えることもあるのではないかと思っています。「患者さんはこう話されていた」などの先入観がないので、私たちが画像を診るのは担当医とは違う目線であるはずです。担当医と違う視点で画像を診ることは、最善の治療をする上でとても重要だと思います。

 

 

画像診断で心がけていることはありますか?

 

まず、スピーディーに行うことです。担当医から患者さんに少しでも早く伝えてもらえるように、画像を早く診ることが基本です。

 

ただし、「見逃し」が最も怖く、気をつけるべきことなので、若い医師が読影したあとに上級医が確認するなどダブルチェック体制で確実性を高めています。ダブルチェックは当たり前のことですが、件数が多く、診断領域が幅広くなっても見落とさないようにするよう努力しなければならないと考えています。

 

 

実際に患者さんを治療するのは各診療科の医師なので、患者さんに対して画像の説明が円滑にできるよう配慮しなければ、とも思っています。適切な説明ができるようなレポートを返していくこと、必要十分な内容があり簡潔な日本語を心がけています。

 

もう1つ、実はこれが非常に重要な点なのですが、私たちのレポートを担当医が見落とさない体制づくりです。今すぐ治療しなくてはいけないような重要な箇所は電話で伝えるので漏れることはないですが、今は問題ではないが今後がん化する可能性があるので、しばらく様子を診てほしいといった内容のときに気をつけなければなりません。

 

CT検査をして今後に対する所見が出ているのに、患者さんに「大丈夫ですよ」と説明して帰してしまい、レポートをそのままにしてしまう。それがいちばん問題です。こういった確認不足、見落とし防止のために、当医療センターでは電子カルテに記載したレポートをチェックしたかどうか確認するボタンがあります。確認漏れがないか定期的にシステムから情報が上がってくるので、各診療科の部長がチェックしています。医療安全のために行っています。

 

さまざまな診療で果たす放射線診断専門医の役割や重要性が少し分かってきました。次回は、救急医療での役割や、多くの患者さんが気にされている被曝について、また、地域医療への貢献について、お話を聞いていきます。

 

「日赤の画像診断」 No.2 放射線診断科医インタビュー ( 2021.05.10公開 )

 

梅岡 成章(うめおか しげあき)

日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本医学放射線学会研修指導者。

医学博士。京都大学医学部臨床教授。

好きな戦国武将…武田信繁。主役をしっかりと支える名脇役でありたいものです。

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!