がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がん治療の最新動向 ②「集学的治療」

2020/01/21

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

 

がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

 

 

がんに罹る日本人は年ごとに上昇し、国民病といわれるまでになり、今や日本人の2人に1人ががんに罹っています。

 

それだけでなく、年ごとにがんに罹る確率は高くなっていて、日本人の半数どころかもっとがん患者数は増えるのではないかと予想されています。

 

もちろん、皆さん「がんに罹りたくない」と思っているわけですが、「がん=不治の病」ではありませんので必要以上に心配なさらなくても大丈夫です。今や6割以上の患者さんが治っています。

 

検診で早期に発見し、適切な治療を受けることが大切ということは、この連載でもお伝えしてきました。

 

 

多くのがん患者さんたちを治すため、医療技術は日々進歩しています。また、ただ治すだけでなく、どれだけ患者さんの日常生活に影響を与えずに最善の治療できるかといったことも研究されているため、昔に比べてがんの検査法や治療法はずいぶん変わりました。

 

前回は、最近のがん治療の大きな流れである低侵襲化について、お話ししました。今回は、集学的治療についてお話していきましょう。

 

 

最新動向② 治療法の掛け合わせで、より高い治療効果を目指す

 

 

がんの治療には、手術だけでなく、放射線治療や薬物療法(抗がん剤等)など、さまざまな治療法があります。

 

医師が患者さんの状態を見極め、治療法を選択します。

 

集学的治療とは、1つの治療法だけではなく、複数の治療を組み合わせるがん治療のことです。それぞれの治療法には良いところもありますが、弱点もあります。治療法の良いところをより引き出すために、治療法を組み合わせます。

 

このように組み合わせると、単独で治療するより高い治療効果を得られるようになります。

 

わかりやすい例を挙げると、手術の前に放射線治療・薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術をする。または逆に、手術の後に放射線治療・薬物療法を行うことによって、手術による根治性を高めることなどがあります。

 

 

そのほか、症例によっては放射線治療によりがんを根絶することも可能となりました。多くの場合、薬物療法を併用することより効果が高まります。

 

当センターではそれぞれの治療法の専門家がいますので、連携して最善の方法を考えています。

 

一人ひとりに合わせた治療法を考えることも最近の医療の流れといえるでしょう。

 

 

最新の医療を、専門家の連携プレーで切れ目なく

 

このように医療は日進月歩です。どんどん変化し、さらに細分化や専門化も進んでいます。

 

当センターでは切れ目のない医療を基本姿勢としており、状態に合わせた最善の医療を提供しています。

 

 

患者さんやご家族の方に寄り添うがん相談や緩和ケアも充実させています。不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!