がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がん治療の最新動向 ① 「低侵襲化」

2019/12/17

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

 

がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

 

 

がんに罹る日本人は年ごとに上昇し、国民病といわれるまでになりました。この連載の第5回でもお伝えした通り、今や日本人の2人に1人ががんに罹っています。

 

それだけでなく、年ごとにがんに罹る確率は高くなっていて、日本人の半数どころかもっとがん患者数は増えるのではないかと予想されています。

 

 

もちろん、皆さん「がんに罹りたくない」と思っているわけですが、「がん=不治の病」ではありませんので必要以上に心配なさらなくても大丈夫です。今や6割以上の患者さんが治っています。

 

検診で早期に発見し、適切な治療を受けることが大切ということは、この連載の中でもお伝えしてきました。

 

多くのがん患者さんたちを治すため、医療技術は日々進歩しています。また、ただ治すだけでなく、どれだけ患者さんの日常生活に影響を与えずに最善の治療できるかといったことも研究されているため、昔に比べてがんの検査法や治療法はずいぶん変わりました。

 

そこで今回は、最近のがん治療の大きな流れである低侵襲化についてお話していきましょう。

 

 

最新動向① がんの検査や治療は患者さんへの負担をできるだけ少なく

 

侵襲(しんしゅう)とは、体に対するダメージのこと。手術で体にメスを入れることだけでなく、針を刺す刺激や薬による副作用なども含みます。

 

低侵襲とは、検査や治療においてその体の負担をより少なくすることです。

 

現在の医療は、低侵襲化を目指して進んでいます。患者さんの体や気持ちに与える影響をできるだけ減らしたいと多くの医師が思っており、さまざまな医療技術を確立させ、進歩してきました。そして、今やかなり侵襲を減らせるようになりました。

 

 

例えば、手術でいえば、昔は胸やお腹を大きく開けて手術をしていました。けれど現在は、お腹に数ヵ所の小さな穴を開けて内視鏡下に行う鏡視下手術、ロボットの力を借りるロボット支援手術が手術の中心になりました。その結果、手術時の傷口が小さくなり、体への侵襲度は明らかに改善しています。

 

放射線治療では、がんになっていない正常組織を避け、がんだけをピンポイントに照射する高精度放射線治療が急速に普及しています。

 

薬物療法についても、副作用が少なく有効性がより高い薬剤が数多く誕生しています。

 

医療も患者さんの思いに寄り添えるように日々進歩していますので、もし、がんに罹ってしまっても、心配せずに治療を受けてください。

 

次回は、最近のがん治療で、もう1つ大きな流れになっている集学的治療について、お話ししていきます。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

 

 

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