がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

日本人の半分はがんに罹る

2018/08/21

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

 

がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

 

がん茶論(第5回):日本人の半分はがんに罹る

 

 

たくさんの病名の中で、いちばんよく聞くであろう、がん。

今回はがんを巡る、日本の現状についてです。

 

がん患者、がんが原因の死は増え続けている

 

がんは誰もが罹りうる日本人の国民病とされ、その克服は1つの病気を超えた国民的な課題です。

 

2006年には「がんに負けない社会をつくろう」と国会で満場一致でがん対策基本法が制定されました。社会を取り巻く問題として、対応が迫られたということですね。

 

実は戦前には少なかったがん患者ですが、1990年に死因の第1位になってから、患者数は増えつづけています。今や、日本人の50%ががんに罹ります。性別によって罹る割合は異なりますが、男性の60%、女性の43%が一生のうちに一度はがんに罹っています。

資料:国立がん研究センター・がん対策情報センター統計資料から引用

 

全体数で言うと、毎年101万人が新たにがんと診断を受けています。

一生涯に2度3度と繰り返してがんに罹る人も珍しくありません。

 

ほかの病気と比べて、死亡率は最も高いと言われ、3人に1人ががんで亡くなっています。

さらに和歌山県のがん死亡率は、1995年以降、全国37位から46位の間を行き来しており、あまりよくない数字となっています。全国有数のがん後進県と言わざるを得ない状況です。

 

がんは全身から、初期は自覚なく発生することが多い

 

全身のいろいろな臓器から発生するがん。初期の自覚症状も少ないため、気づいたときには進行している場合が多いです。

 

種類別では全体数の多い順に、大腸がん、胃がん、肺がん、前立腺がん、乳がんです。年配の方で多いのは、胃がん、子宮がんです。

 

そのうち、前立腺がんは男性にしか発生しませんし、乳がんはほぼ女性のがん(1%弱は男性に発生します!)です。男性の10人に1人が前立腺がん、女性の12人に1人が乳がんに罹っています。

 

近年、食生活の欧米化により、大腸がん、前立腺がん、乳がんの増加が著しく、喫煙の影響で肺がんも増加しています。

 

子宮の入り口に発生する頸部がんは減少していますが、20代後半から40代にかけた若年層の子宮頸がんが増加していることは要注意です。子宮の奥にできる体部がんは、むしろ増加しています。

 

罹る人が多いということは、誰でも罹る可能性があるということです。日常的な備えとして、定期的に検診を受けてください。備えあれば憂いなしです。


 

さて、次回はがんの治癒率についてです。

医療技術が発展した現代では、どれくらいがんが治るようになったのでしょうか?

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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