がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

放射線科医としてがん治療に関わり、京都大学で過ごした約40年

2018/05/15

このコーナーではがんの最新情報をわかりやすくお伝えします。お届けしてくださるのは、日本赤十字社和歌山医療センターの院長であるドクターヒラオカこと平岡眞寛先生です。

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

 

コーナーの初回企画は平岡先生のインタビューです。平岡先生の人となりや、医師を志した理由、放射線科を選んだきっかけ、京都大学在籍中の研究実績、この和歌山医療センターで実践していきたいことなどを盛りだくさんで伺っています。4回にわたってお届けします。

 

――平岡先生はどうして医師になろうと思ったのですか

 

学生時代から何か社会に貢献できる仕事に就きたいと考えていました。地元(愛媛県)の愛光高校へ進学した頃は、研究者になるのもいいなと思っていたんですよ。未だ解明されていない何かを探求するような。でも同級生には医学部志望者が多く、彼らが「医療は大きな社会貢献だ」と言っていて。確かにそうだなと。それで私も医療を学ぼうと決めて、京都大学医学部へ進学しました。

――国家試験合格後、専門は放射線科を選ばれていますが、これには何か訳があったのですか。

 

がんに関わる研究や診療をしたかったからです。がんといえば外科や内科など各診療科で診るのが一般的で、放射線治療を専門にしようとする人は少ないですが、私は放射線治療をしたかったのでこの科を選びました。いろいろな部位にできるがんを一貫して診られるのは放射線科だけですしね。

 

京都大学は放射線医学について歴史があり、先進的な環境でした。よい環境でキャリアを積ませてもらったと感謝しています。放射線を使ったがん治療の研究もたくさんできましたし、最終的にはがんの専門医を集めて高度な医療をする「がんセンター」も設立し、初代センター長として診療科の垣根をなくした医療ができる基盤を作ることができました。

――私たちが放射線科で診てもらえる内容というのは、具体的にはどんなものがあるのでしょう。

 

放射線科はCTなどを使って行う画像診断と、PETなどで検査をする核医学、そして放射線を用いた治療の3つからなっています。皆さんにいちばん馴染みがあるのは画像診断でしょうか。画像診断をすることで体を切らなくても病気の状況や、どこにその病気があるかがわかります。

 

がんの治療といえば手術が思い浮かぶでしょう。放射線を使った診断や検査、治療は、手術のようにはっきりと目に見えるものではないため、とっつきにくいかもしれません。

 

しかし、放射線科医が画像を駆使して他科の先生にしっかりした体の現状の説明ができれば、手術する前に「どのくらい進行しているか」がわかります。それで「どういう手術をするか」が決められます。つまり、放射線科医ががんばるほど、他科の先生も手術に特化して、よりよい医療が提供できるのです。

 

――なるほど。放射線科の大切さがよくわかりました。次回(vol.2)は先生の研究業績を振り返りながら、最新の放射線治療について教えてください。

 

(第2回へ続く)

 

 

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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