日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

10月はピンクリボン月間

2018/09/24

毎年10月は「ピンクリボン月間」と呼ばれ、乳がんに関する正しい知識の普及、乳がん検診の受診を通じた早期発見・早期治療の啓発を目的として様々なキャンペーンが全世界的に展開されます。

 

女性にとって「乳がん」は、がんの部位別罹患数(部位・臓器ごとに新たにがんと診断されるがんの数)でも罹患率(人口10万人当たり何例新たに診断されるか)でもトップであるため、乳がんで悲しむ人をひとりでも減らしていくために、乳がん検診の大切さをアピールするイベントやシンポジウム・セミナーなども開催されるほか、ピンク色にライトアップされた高層建築物や歴史的建造物などを目にした人も多いでしょう。

 

国立がん研究センターなどによると、乳がんの発生は30代から増加をはじめ、40代後半から50代でピークを迎えるとされています。

 

最近は、著名人が乳がん罹患を公表したり、乳がんの闘病をテーマにしたテレビや映画なども目にする機会が増え、乳がん検診の重要性が広く認知されるようになってきました。

 

しかしながら、「自分は大丈夫のはず」と思い、検診の重要性は分かっているけれど、受診したことがないという人もまだまだ多いのが実情です。

 

乳がんが見つかったらどんな治療をしていくのか? 具体的なことを、乳腺外科部長の芳林浩史先生にお聞きします。

患者さんの多くが、定期的な検診を受けておられず、まさか!?と思って受診したら見つかったという場合が意外に多いです。

 

典型的なモデルケースとして、夫と小中学生の子供のいる50代のフルタイム主婦のA子さん。今まで仕事と子育てが忙しく、乳がんに対する関心は低かった。また、マンモグラフィ検査は痛いと聞いていたため、乳がん検診を一度も受けていなかったという人を例に話しましょう。

 

最近、職場でA子さんの同僚の友達が乳がんになりました。その話を聞いてから、じわじわと不安が大きくなり、決心して近くのクリニックでマンモグラフィ検査を受けたところ、そこで乳房内に良悪の鑑別が必要な石灰化病変を認められました。さらに詳しい検査を…と当センターへ紹介され、精密検査の結果、乳がんと診断されました。早期発見かつ小さかったために乳房を残すことができました。多くのがんが術後生存率を5年で計りますが、乳がんは好発年齢が低いこともあり、当科では10年間経過観察をしています。普段はかかりつけの先生方に診ていただき、6ヵ月に1回当科を受診するスタイルで診察しています。先日、A子さんも術後10年の経過観察が終了し、当外来を卒業されました。マンモグラフィ検診は思ったより痛くなく、「受けてよかったです」と笑顔でおっしゃったのが印象に残っています。

 

日本における乳がんは一般に45〜50歳の女性に多く、この年代は家庭や仕事で多忙な時期であるため、乳がんになり治療が長引くと、社会的な損失も大きいです。また、乳がんは痛みで発見されることは少なく、平成28年度の当センター院内がん登録を分析すると、検診(35%)、しこり・乳頭分泌(47%)で発見されることが多いということが分かっています。

 

視触診のみの乳がん検診は不十分で、マンモグラフィ検査をしないと効果はないことも明らかになってきました。さらに、マンモグラフィは乳がんの早期である石灰化病変を見つけるのに大変有用ですので、セットで受けていただきたいと考えています。

 

一方、乳腺量が多い高濃度乳房だと病変が隠れてしまいマンモグラフィ検査で指摘しづらい場合もあります。その場合は、乳腺超音波検査(エコー検査)の併用により、乳がん発見率が1.5倍向上することが分かっています。そのため、一度、マンモグラフィとエコーの両方がセットになった検診を受け、自身の乳腺量は知っておくと良いでしょう。

 

入浴時などに自分で乳房を細かく触る自己検診をした時、しこりが触れ、それが石のように硬く、ゴツゴツしている場合は乳がんの可能性が高いです。また、乳頭分泌が茶褐色の場合は要注意です。いずれにしても、乳房に異常や心配事があれば迷わず「かかりつけ医に相談」もしくは「日本乳がん検診精度管理中央機構に認定された施設での検査」を受けていただきたいです。

 

次に、乳がんを疑われた場合は、がんを専門に診療している当センターのようながん診療連携拠点病院へ紹介されます。そこで、精密検査として乳腺MRIや病理検査を行います。その結果を多職種の専門家が集まって検討し、乳がんかどうかを診断します。今回のA子さんの場合は、乳房部分切除術と術後に放射線治療を行う乳房温存療法が選択されました。

 

このように早期で発見されると、手術と放射線治療による局所治療のみで治癒が見込めます。一方、進行している場合はそれらの治療に加えて微小転移を制御し、がんの再発を予防するための薬物療法による全身治療を行っていきます。

 

国立がんセンターのデータによると乳がんの5年生存率は全体で93%と、胃がん74%、大腸がん76%、肺がん44%と比較しても良好ですので、ためらわずに検診を受けるようにしましょう。

 

最後に、毎年10月のピンクリボン月間に合わせて市民公開講座を行っていますので、ぜひご参加いただき、一緒に知識を深めていただければ幸いです。

 

 

 

 

Medeical Information すこやかな毎日のために」では、健康に生活するために、お役に立てそうな情報を、随時 発信していきます。お楽しみに!

 

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!